上 下
676 / 968

どちら目線?

しおりを挟む
SIDE メリル、シュラ

「三年間、お疲れ様!!!!!」

「「「「「「「「お疲れ~っ!!!!!」」」」」」」」

学生たち主人たちとは別の場所で執事、メイドたちはバカ騒ぎを始めた。

宴会に教師たちはおらず、完全に従者たちの空間。
今この場に……気を使わなければならない相手はいない。
色んな意味で縛りである存在がいないため、彼ら彼女たちはかなりはっちゃけていた。

「二人は卒業後、ラガス様たちとハンターになるのよね」

「そうね」

「屋敷に戻ってのんびりしたい、とか思わないの?」

一人のメイドが、ずっと気になっていたことを尋ねた。

メリルほど優秀なメイドであれば、雇っている家も家で重宝したいはず。
実際にメリルは家事スキルだけではなく、戦闘スキルも一級品であり、望むことなら侯爵家や公爵家が優秀な人材として引き抜きたいと考えるほど、斬大敵にレベルが高い。

「……そういった思いよりも、ラガス坊ちゃまへの心配が上だから、そういった思いは消えるというか消えてしまうというか……望んだところで、といった話ね」

若干ツンデレな部分がある言い方だが、どちらにしろラガスへの心配がどの思いよりも勝るのは事実だった。

「あぁ~~、確か……卒業後は、強いモンスターに挑む旅、だっけ」

「その通り。どう? 正気の沙汰とは思えないでしょ」

「失礼な言葉だとは解ってるけど、正気の沙汰とは思えないわね」

戦地、死地に毎度身を放り込む。
ラガスのことは深く知らない人物からすれば、本当にただの死にたがりとしか思えない。

「そうか? 俺はあれだけ強ければ、そういう相手との戦闘を求めるのは割とおかしくないと思うぞ」

シュラと話していた執事の一人が二人の会話に割り込む。

「いや、だってラガス様が求めてる強い相手って、BランクとAランクモンスターでしょ。どう考えても殺される可能性がある相手じゃない」

Aランクモンスターは戦闘者から見ても、災害が形を成した存在。

メイドの言葉はどう考えても間違っていない。
間違っていないが、ラガスの今までの経歴見れば解る通り、普通ではないのだ。

「バカか。ラガス様は一年生の頃から三年生になってから、ずっと学生のトップに立ち続けてきたんだぞ。三年生で初めて行われた国際大会でも全てのトーナメントでトップに立った。俺たちの常識で計れる人物じゃないんだ」

「ん~~~、そういう考えも解るには解るけども、付き合わされるメリルの身になってみなよ」

「ふむ…………いや、それでもラガス様が並大抵の強いモンスターに負けるとは思えない」

執事はバッサリとメイドの言葉を切り捨て、それを聞いていたシュラはうんうんと頷き、同意。

「まだ十三歳という歳で、推定Aランクの三つ角のオーガジェネラルを倒したのだろう。であれば……いや、さすがに厳しいか。しかし、従魔とシュラ質の力があれば、Sランクのモンスターを倒すのも不可能ではない、と俺は思う」

「良いこと言うじゃねぇかよ」

学友の言葉に、修羅のテンションは一段階上昇し、グラスに入っている酒を一気の飲み干す。

「まっ、まだ実際にSランクモンスターってのと会ったことないから断言は出来ねぇが、心が震えるのは間違いねぇな」

そのまさかのシチュエーションを思い浮かべ、つい凶悪な笑みをこぼすシュラ。

「はは、さすがシュラだな。個人的な意見ではあるが、メリルは少々従者というよりも親という目線からラガス様を見ている気がする」

「っ!!!???」

学友からの言葉に決して小さくない衝撃を受け、思わずグラスを落としそうになるが、寸でのところで堪える。

「学生になってからじゃなくて、それより前から努力努力実戦実戦な人なんだろ。今までそれを見てきたはずなのに心配が勝るってことは、主人を見る目が従者じゃなく親じゃなきゃあり得ないというか…………シュラ、お前はどう思う」

「俺、今お前の言葉に凄い納得してる」

友人からの問いに、シュラは物凄く納得がいった表情を浮かべた。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...