668 / 962
よそ見厳禁
しおりを挟む
「……なぁ、お前の彼女ヤバいな」
「彼女というか、パートナーですけどね」
いや、パートナー関係になった人たちはそういう関係になるらしいけど……って、それは今考えることじゃないか。
「というか、大会で俺とバチバチに戦ってたんですから、正直……新人騎士の大半には負けないと思いますよ」
「はっはっは! そうみたいだな。目の前で五人抜きもされたら、お前と同じでぶっ飛んだ逸材だって認めるしかねぇよ」
騎士団に入団した騎士たちは現場に出て、実戦というまで経験を積んでるから、普通はそこで学生と差が出ると思われるだろうけど、セルシアの場合は違う。
休日になれば王都から出て、モンスターとソロで戦うことも珍しくない。
平日は授業が終われば俺たちと毎日訓練やら模擬戦を行ってるから、経験値が騎士団に入団した元学生と比べて広がったってことはないと思う。
まっ、今のところセルシアと戦った騎士の人たちは、そこら辺を理解してなかったから、戦う前は表情に余裕があったんだろうな。
そりゃシングルスの大会では全部俺が勝ってきたけど、言い換えればセルシアも決勝に辿り着くまで、多くの強者を倒してきたんだ。
学生の内は負けていても、騎士になって経験を積んだから今回は勝てる!! っていう希望的観測が通用する相手じゃない。
「俺やシュラ、メリルたちと殆ど毎日模擬戦してますからね」
「なるほどな。一ミリでもあいつらが油断してたら、絶対に勝てないな」
あっ、また勝った。
一応模擬戦の範囲内だから、命を懸けた勝負ならまだ解らない気がするけど……殺す気全開のモンスターと戦っても勝利を収めてるし、それは考えるだけ無駄か。
「でも、そろそろ限界が来そうだな」
その言葉通り、中堅の騎士との戦いでは、ついにセルシアが負けた。
見た感じ、剣技だけじゃなくて身体能力でも一歩先を行かれてるっぽいから、縛りがありだと厳しいか。
にしても……同じ騎士が勝ったってのに、セルシアに負けた新人騎士たちは案外盛り上がらないな。
「はっ!!!!」
って、模擬戦中にあまりよそ見をするのは良くないな。
対戦相手の騎士に失礼だ。
顔見知りの騎士と喋っていたら、以前模擬戦を行った騎士に再戦を申し込まれたので応じていた。
以前の一戦からそこまで時間が経ってはいないが、動きが僅かに修正されている……気がしなくもない。
とはいえ、よそ見をしたから負けたとか、メリルに知られたら絶対に説教を食らう。
気合を入れ直し、細かいフェイントを入れながら、今回は模擬戦の範囲内の全力で勝利を奪いにいった。
「うっ……参った」
「ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう……はぁ~~、もう少し善戦できると思ったんだけどな」
上から目線になってしまうので言わないが、俺の記憶が正しければ、前回よりも良い戦いをしたと思う。
「それにしても、ラガスのパートナーのセルシアさん、かなり凄いね」
「ふふ、でしょう」
いかん、解っていても顔が緩んでしまう。
「そりゃラガスの世代では、ラガスに続く実力者というのは解ってたけど、模擬戦という枠の中で、もう何人の騎士が負けた?」
「えっと…………多分、十人は超えたかと」
「それぐらいやられてるよね。普通はあり得ないというか、僕たちからすれば騎士としての立場がないんだけど……この差は何かな?」
セルシアが大きな才能を持ってるのは間違いないけど、そういう答えを持てめてる訳じゃないよな。
「多種多様な武器を使う人物との戦闘経験と、後は自分の従魔とも戦ってるんで、どんな相手でも対応出来る柔軟力……ですかね?」
「そういえば、強い狼系の従魔がいるんだったね。日頃からモンスターと模擬戦が出来る環境か。それは騎士団にない点だね」
……いや、一応差の一つでしかないと思うんで、あまりそこら辺は深く検討しない方が良いと思いますよ。
「彼女というか、パートナーですけどね」
いや、パートナー関係になった人たちはそういう関係になるらしいけど……って、それは今考えることじゃないか。
「というか、大会で俺とバチバチに戦ってたんですから、正直……新人騎士の大半には負けないと思いますよ」
「はっはっは! そうみたいだな。目の前で五人抜きもされたら、お前と同じでぶっ飛んだ逸材だって認めるしかねぇよ」
騎士団に入団した騎士たちは現場に出て、実戦というまで経験を積んでるから、普通はそこで学生と差が出ると思われるだろうけど、セルシアの場合は違う。
休日になれば王都から出て、モンスターとソロで戦うことも珍しくない。
平日は授業が終われば俺たちと毎日訓練やら模擬戦を行ってるから、経験値が騎士団に入団した元学生と比べて広がったってことはないと思う。
まっ、今のところセルシアと戦った騎士の人たちは、そこら辺を理解してなかったから、戦う前は表情に余裕があったんだろうな。
そりゃシングルスの大会では全部俺が勝ってきたけど、言い換えればセルシアも決勝に辿り着くまで、多くの強者を倒してきたんだ。
学生の内は負けていても、騎士になって経験を積んだから今回は勝てる!! っていう希望的観測が通用する相手じゃない。
「俺やシュラ、メリルたちと殆ど毎日模擬戦してますからね」
「なるほどな。一ミリでもあいつらが油断してたら、絶対に勝てないな」
あっ、また勝った。
一応模擬戦の範囲内だから、命を懸けた勝負ならまだ解らない気がするけど……殺す気全開のモンスターと戦っても勝利を収めてるし、それは考えるだけ無駄か。
「でも、そろそろ限界が来そうだな」
その言葉通り、中堅の騎士との戦いでは、ついにセルシアが負けた。
見た感じ、剣技だけじゃなくて身体能力でも一歩先を行かれてるっぽいから、縛りがありだと厳しいか。
にしても……同じ騎士が勝ったってのに、セルシアに負けた新人騎士たちは案外盛り上がらないな。
「はっ!!!!」
って、模擬戦中にあまりよそ見をするのは良くないな。
対戦相手の騎士に失礼だ。
顔見知りの騎士と喋っていたら、以前模擬戦を行った騎士に再戦を申し込まれたので応じていた。
以前の一戦からそこまで時間が経ってはいないが、動きが僅かに修正されている……気がしなくもない。
とはいえ、よそ見をしたから負けたとか、メリルに知られたら絶対に説教を食らう。
気合を入れ直し、細かいフェイントを入れながら、今回は模擬戦の範囲内の全力で勝利を奪いにいった。
「うっ……参った」
「ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう……はぁ~~、もう少し善戦できると思ったんだけどな」
上から目線になってしまうので言わないが、俺の記憶が正しければ、前回よりも良い戦いをしたと思う。
「それにしても、ラガスのパートナーのセルシアさん、かなり凄いね」
「ふふ、でしょう」
いかん、解っていても顔が緩んでしまう。
「そりゃラガスの世代では、ラガスに続く実力者というのは解ってたけど、模擬戦という枠の中で、もう何人の騎士が負けた?」
「えっと…………多分、十人は超えたかと」
「それぐらいやられてるよね。普通はあり得ないというか、僕たちからすれば騎士としての立場がないんだけど……この差は何かな?」
セルシアが大きな才能を持ってるのは間違いないけど、そういう答えを持てめてる訳じゃないよな。
「多種多様な武器を使う人物との戦闘経験と、後は自分の従魔とも戦ってるんで、どんな相手でも対応出来る柔軟力……ですかね?」
「そういえば、強い狼系の従魔がいるんだったね。日頃からモンスターと模擬戦が出来る環境か。それは騎士団にない点だね」
……いや、一応差の一つでしかないと思うんで、あまりそこら辺は深く検討しない方が良いと思いますよ。
35
お気に入りに追加
3,492
あなたにおすすめの小説
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる