上 下
596 / 962

結果を残せるか

しおりを挟む
SIDE ラガス

探索を終えた翌日は休息を挟み、再び雪原に向かい……ヘイルタイガーやアイスドラゴンの探索を行う。
その前に、一つイーリスに要件を伝えた。

「イーリス、昨日みたいな腑抜けた状態が続くなら、次の探索からは宿で待っててもらう」

男爵家の令息である俺が、公爵家の令嬢であるイーリスにこんな事を言うのは、どう考えてもアウトだろう。
そんなことは理解している。

だが、ここで言っておかなければならない。

「……」

「……」

イーリスの護衛であるルーノさんとリタさんも、黙って見守っている。
つまり、俺の考えに賛同してくれているということだろう。

「お前がそんなふらふらした状態なら、俺たちがどれだけ頑張っても、お前が原因で万が一という状況が起こりうる」

「……モンスターを自力で倒せ。そういうことかしら」

「そういうことだ。自分はお荷物じゃないという事を示せ」

ラージュ先輩でさえ……イーリスよりは経験が豊富という点はあるが、雪原の探索を始めてからモンスターの討伐に参加している。

それも消極的ではなく、かなり積極的に参加するように……なった。

イーリスと同じ常識を持っているタイプだとは思うが、意識的に乗り越えようとしてるのかもな。

「分かったわ」

「……そうか」

意外とあっさり了承した。
ぶっちゃけ、ちょっと上から目線だったからいつもの生意気? な態度で返されるかと思ったけど……どういう心変わりだ?

ラージュさんが先日の間にもう一度話し合ったか、それともルーノさんとリタさんが意を決して、注意したのか?

どっちなのかは分からないけど、とりあえず面倒な事態は回避できたが。

「ラガス坊ちゃま、よろしいのですか?」

「あぁ、構わない。予定通り、拒否すれば強制送還してもらうつもりだったが、ここからはイーリスの働き次第だ」

常識を乗り越えようとする姿勢……そこは良い。
けど、結局は乗り越えられなければ、正直邪魔だ。

無理そうなら……次回から宿で待機してもらう。
セルシアと比べて、道具のお陰で大きな差があるってわけでもない。
確かにセルシアが持つ紫電崩牙は超が十個ぐらい付く最高で最強の武器だ。

とはいえ、セルシアの実力……経験値なら、普段から使っているロングソードを使ったとしても、時間を掛ければスノーベアーを倒せていた。
それに対して、イーリスもリザード公爵様から氷の魔力と相性が良い杖を貰っている。

一応失礼になると思って魔眼で調べてないが、最低でもランク四……ランク六の可能性も十分にある杖だ。
条件はセルシアと五分……とは言えないが、近い状態。

それに、別にCランクのモンスターを一人で倒せって訳じゃない。
誰かと組んでも良いから、戦力になるってことを証明してくれれば、これからの動向を認める。

そう決めたんだが……なんか、思った以上にやる気に溢れてた。

「…………」

いや、表情に熱さが出てる訳じゃないけど、遭遇するEランクやDランクのモンスターを前に出て、一人で倒し始めた。

イーリスの実力を考えれば、そこまでは出来てもおかしくないとは思うが……一応接近戦でも戦ってるし、魔力を無駄に消費してるってわけでもない。

「なんか、ちょっと危なっかしいっすね」

「危なっかしい、か?」

「うっす。昨日の落ち込みから立ち直ったのは良いことだと思うっすよ。ただ……なんというか、張りつめてる? 追い込まれてる? そんな雰囲気が漂ってて……個人的には、今のイーリス様は危なっかしいと感じるっす」

「……そうか」

ラガスのこういった感覚は、あまり外さない。

俺的には恨む妬み嫉みが重なって、その矛先が俺に向かないことが素直に嬉しいと思ってるけど……とりあえず、イーリスなりに前に踏み出そうとはしてる。

それに、イーリスが戦う度にルーノさんとリタさんがいつでも攻撃を放てるように構えてる。
今のところ問題はないだろう。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

エンジェリカの王女

四季
ファンタジー
天界の王国・エンジェリカ。その王女であるアンナは王宮の外の世界に憧れていた。 ある日、護衛隊長エリアスに無理を言い街へ連れていってもらうが、それをきっかけに彼女の人生は動き出すのだった。 天使が暮らす天界、人間の暮らす地上界、悪魔の暮らす魔界ーー三つの世界を舞台に繰り広げられる物語。 著作者:四季 無断転載は固く禁じます。 ※この作品は、2017年7月~10月に執筆したものを投稿しているものです。 ※この作品は「小説カキコ」にも掲載しています。 ※この作品は「小説になろう」にも掲載しています。

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

処理中です...