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さっさと納得しろ
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SIDE メリル
(面倒なお方ですね)
シュラ、ラガス、セルシアの三人がそれぞれおスノーベアーを倒し終えた後、イーリスが何故セルシアは一人でスノーベアーと戦わせたのか……ということについて、ラガスを攻め始めた。
(セルシア様がランクCのモンスターと戦うなど、決して珍しいことでは……おっといけませんね。常識という感覚が狂って来てますね)
世間一般的には、貴族の令嬢が……十三歳の子供がCランクのモンスターを一人で相手にするなど、狂気の沙汰としか思えない。
そういう感覚は、ギリギリメリルの中に残っていた。
とはいえ、毎日の訓練光景が目に焼き付いているので、メリルとしては、セルシアがCランクのモンスターにソロで挑むことに関して……あまり心配はしていない。
勿論、万が一という可能性があることについては重々承知している。
しかし……先程まで行われていた戦いの間、自分の役割は三人の戦闘に割り込もうとするモンスターの排除。
それがメインだと思っていた。
(そんなにセルシア様が心配なら、援護しに行けば良いではありませんか)
イーリスの得意な攻撃魔法の属性は氷なので、属性的にはあまりスノーベアーと相性が良くない。
だが、攻撃が当たれば物理的なダメージは通る。
魔法の腕に関しては学生レベルではないのだから、勇気を出して戦えばいいのに……そう思ったメリルだったが、直ぐにその甘い考えを消去した。
(セルシア様の性格上、一人で挑むことを好み、援護は不要と考えるでしょうね)
オーガの群れに挑んだ際には、数が数だったので素直にメリルの援護を受けた。
そして、仮にBランクのモンスターと戦う状況に遭遇したとしても……冷静な判断が出来るセルシアは複数人で挑むことを拒まない。
だが……セルシアにとって、一人でCランクのモンスターに挑むのは、丁度良い挑戦なのだ。
一緒に生活するようになり、そういった部分にはメリルだけではなく、シュラも気付いていた。
当然、セルシアの従者であるキリアとルーンも気付いている。
(断られたら断られたで、かなりショックを受けるでしょうね……しかし、中々引き下がりませんね)
イーリスがラガスに文句を言い始めてから、以前の様に直ぐに言い合いが終わることはなく、イーリスの怒りが収まらない。
確かに……確かに、イーリスが言っていることは……一般常識と考えれば、決して間違っていない。
Cランクのモンスターと一人で主人が戦おうとすれば、普通は止める。
だがしかし……元々ハイレベルな実力を有していたセルシアは、ラガスたちと一緒に特別寮で生活するようになってから、確実に実力を伸ばし……メンタル面も若干鍛えられた。
それらの甲斐あって、今のセルシアにとって、Cランクモンスターというのはそこまで恐れる存在ではないのだ。
(ラージュ様が説得に入っても、中々納得しませんね……ラージュ様の言う通り、もうイーリス様とセルシア様では、常識が異なるというのに……)
ラージュの常識が違う。
その言葉を聞き、メリルはまさにその通りだと思い、軽く頷いた。
「……その、お二人は止めに入らなくともよろしいのですか?」
「止めたいとは思うよ。ただ……立場上、あまり強くは言えないんだよ」
「ルーノさんの言う通りなんですよ。というか、私たちが言ったところで納得してくれるかどうか、ちょっと怪しい様子ですし」
(失念していましたね。お二人の立場を考えれば、イーリスに強い口調で説教は出来ない……とはいえ、そろそろ移動したいですね)
正直なところ……メリルとしては、今回の探索でメリルが死ななければそれで良いとしか考えていない。
メリルにとって一番優先すべき存在はラガスであり、次にセルシア。
他はだいたい一緒のライン。
なので、ぶっちゃけなところ、イーリスに対して「さっさと先輩からの有難い説教に納得しろ」と、思っていた。
(面倒なお方ですね)
シュラ、ラガス、セルシアの三人がそれぞれおスノーベアーを倒し終えた後、イーリスが何故セルシアは一人でスノーベアーと戦わせたのか……ということについて、ラガスを攻め始めた。
(セルシア様がランクCのモンスターと戦うなど、決して珍しいことでは……おっといけませんね。常識という感覚が狂って来てますね)
世間一般的には、貴族の令嬢が……十三歳の子供がCランクのモンスターを一人で相手にするなど、狂気の沙汰としか思えない。
そういう感覚は、ギリギリメリルの中に残っていた。
とはいえ、毎日の訓練光景が目に焼き付いているので、メリルとしては、セルシアがCランクのモンスターにソロで挑むことに関して……あまり心配はしていない。
勿論、万が一という可能性があることについては重々承知している。
しかし……先程まで行われていた戦いの間、自分の役割は三人の戦闘に割り込もうとするモンスターの排除。
それがメインだと思っていた。
(そんなにセルシア様が心配なら、援護しに行けば良いではありませんか)
イーリスの得意な攻撃魔法の属性は氷なので、属性的にはあまりスノーベアーと相性が良くない。
だが、攻撃が当たれば物理的なダメージは通る。
魔法の腕に関しては学生レベルではないのだから、勇気を出して戦えばいいのに……そう思ったメリルだったが、直ぐにその甘い考えを消去した。
(セルシア様の性格上、一人で挑むことを好み、援護は不要と考えるでしょうね)
オーガの群れに挑んだ際には、数が数だったので素直にメリルの援護を受けた。
そして、仮にBランクのモンスターと戦う状況に遭遇したとしても……冷静な判断が出来るセルシアは複数人で挑むことを拒まない。
だが……セルシアにとって、一人でCランクのモンスターに挑むのは、丁度良い挑戦なのだ。
一緒に生活するようになり、そういった部分にはメリルだけではなく、シュラも気付いていた。
当然、セルシアの従者であるキリアとルーンも気付いている。
(断られたら断られたで、かなりショックを受けるでしょうね……しかし、中々引き下がりませんね)
イーリスがラガスに文句を言い始めてから、以前の様に直ぐに言い合いが終わることはなく、イーリスの怒りが収まらない。
確かに……確かに、イーリスが言っていることは……一般常識と考えれば、決して間違っていない。
Cランクのモンスターと一人で主人が戦おうとすれば、普通は止める。
だがしかし……元々ハイレベルな実力を有していたセルシアは、ラガスたちと一緒に特別寮で生活するようになってから、確実に実力を伸ばし……メンタル面も若干鍛えられた。
それらの甲斐あって、今のセルシアにとって、Cランクモンスターというのはそこまで恐れる存在ではないのだ。
(ラージュ様が説得に入っても、中々納得しませんね……ラージュ様の言う通り、もうイーリス様とセルシア様では、常識が異なるというのに……)
ラージュの常識が違う。
その言葉を聞き、メリルはまさにその通りだと思い、軽く頷いた。
「……その、お二人は止めに入らなくともよろしいのですか?」
「止めたいとは思うよ。ただ……立場上、あまり強くは言えないんだよ」
「ルーノさんの言う通りなんですよ。というか、私たちが言ったところで納得してくれるかどうか、ちょっと怪しい様子ですし」
(失念していましたね。お二人の立場を考えれば、イーリスに強い口調で説教は出来ない……とはいえ、そろそろ移動したいですね)
正直なところ……メリルとしては、今回の探索でメリルが死ななければそれで良いとしか考えていない。
メリルにとって一番優先すべき存在はラガスであり、次にセルシア。
他はだいたい一緒のライン。
なので、ぶっちゃけなところ、イーリスに対して「さっさと先輩からの有難い説教に納得しろ」と、思っていた。
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