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自分の常識で考えてはいけない
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「イーリス、本当に一度落ち着きなさい。あなたは、セルシアさんの戦いぶりを見ていなかったの?」
「見てました……見てて、自分の心臓の鼓動が速くなるのが分かりました」
自分の方がもっと上手く戦える、自分だってやれる! そんな思いではないんだろうな。
「セルシアが、いつあの鋭い爪に切り裂かれてしまうんじゃないかって」
「……友人を心配する気持ちは、いつまでも大事にするべきでしょう。ただ、今のあなたの気持ちはセルシアさんの今までの努力、無視しているのと同じです」
「ッ!?」
ふ~む……なるほど、そういう見方も出来るな。
セルシアが今まで才能に胡坐をかかず、努力に努力と実戦を重ね続けたからこそ、スノーベアーが相手でも恐れずに立ち向かえる精神力と強さを手に入れた。
紫電崩牙を使ったから簡単に倒せてしまったと言ってたけど、多分……紫電崩牙を使ってなくとも、今のセルシアなら時間はかかるかもしれないけど、一人で倒せただろう。
って、説明したら…………セルシアを一人で送り出すなんて、なんて無責任なのよ!!! てな感じで怒鳴られそうだな。
「彼女が今まで積み重ねてきた努力があったからこそ、セルシアさんは一人でスノーベアーを倒せました。先程、あなたをそれを結果論と済ませましたね」
「そ、それがなんなんですか!!」
「結果論……つまり、あなたはセルシアが今まで積み重ねてきた努力でスノーベアーを倒したのではなく、偶々運良く倒した……そう言ってるのと同じなのですよ」
「ッ!! わ、私はそんなつもりじゃ……」
いや、イーリスさんよ、ぶっちゃけそういうことだぞ。
結果論……偶々上手くいった結果。
そういう意味に捉えられてもおかしくない。
セルシアがイーリスに対して全く文句を言っておらず、表情を歪んでないことから不快には思ってないだろう。
でも、人によっては今まで積み重ねてきた努力を否定されたと感じてもおかしくない発言ではあるな。
「それに、あなたの常識がラガス君やセルシアさんたちに通じるとは限りません」
「それは……どういう意味ですか」
「言葉通りです。少し前に、ラガス君が全員でBランクのモンスターを倒したことがあると言ったのを覚えてますか」
言った、言った。確かに言った。
イーリスが本当に俺がリザード公爵様からの依頼を達成できるのか不安そうだったから、二回ぐらい言った。
なんならAランククラスのモンスターも一人で倒したけど……その話は、絶対に信じてないな。
ルーフェイスのお陰で倒せたとか思ってそう……てか、そのルーフェイスが超つまらなそうにしてる。
ごめんな、ルーフェイス。
でも今話をぶった切ったら、絶対に空気が悪い状態が続くから、もうちょい我慢してくれ。
「覚えて、ます」
「話から推測するに、ラガス君たちはそのBランクのモンスター以外のモンスターも、自分たちだけで戦っている筈です……あっていますか、ラガス君」
「はい、その通りです」
間違ってたら恥ずかしいから、一応俺に確認したんだろうな。
仮に間違ってたら……地獄の様な空気だ。
「遭遇したモンスターに、一人だけで挑むこともあったでしょう。であれば、セルシアさんがDランクやCランクのモンスターにソロで挑み、戦ったことがある……そういった状況もあったでしょう」
あったような、なかったような……最低でも、Dランクのモンスターと一人で戦ってた記憶はある。
てか、オーガの集団に襲撃された際には、メリルのサポートがあっただろうけど、ソロでオーガに挑んでたし……えっ!? まさかその話も信用してなかったのか?
だとしたら……ラージュさんの言う通り、かなり自分の常識だけで考えちゃってるな。
「相手が強敵であったとしても、自分を高める為に……限界を超える為に戦う。だからこそ、恐れない。それが彼らの常識なのでしょう」
……い、イーリスを説得できそうな言葉ではあるけど……こちとしては少々恥ずかしいな。
「見てました……見てて、自分の心臓の鼓動が速くなるのが分かりました」
自分の方がもっと上手く戦える、自分だってやれる! そんな思いではないんだろうな。
「セルシアが、いつあの鋭い爪に切り裂かれてしまうんじゃないかって」
「……友人を心配する気持ちは、いつまでも大事にするべきでしょう。ただ、今のあなたの気持ちはセルシアさんの今までの努力、無視しているのと同じです」
「ッ!?」
ふ~む……なるほど、そういう見方も出来るな。
セルシアが今まで才能に胡坐をかかず、努力に努力と実戦を重ね続けたからこそ、スノーベアーが相手でも恐れずに立ち向かえる精神力と強さを手に入れた。
紫電崩牙を使ったから簡単に倒せてしまったと言ってたけど、多分……紫電崩牙を使ってなくとも、今のセルシアなら時間はかかるかもしれないけど、一人で倒せただろう。
って、説明したら…………セルシアを一人で送り出すなんて、なんて無責任なのよ!!! てな感じで怒鳴られそうだな。
「彼女が今まで積み重ねてきた努力があったからこそ、セルシアさんは一人でスノーベアーを倒せました。先程、あなたをそれを結果論と済ませましたね」
「そ、それがなんなんですか!!」
「結果論……つまり、あなたはセルシアが今まで積み重ねてきた努力でスノーベアーを倒したのではなく、偶々運良く倒した……そう言ってるのと同じなのですよ」
「ッ!! わ、私はそんなつもりじゃ……」
いや、イーリスさんよ、ぶっちゃけそういうことだぞ。
結果論……偶々上手くいった結果。
そういう意味に捉えられてもおかしくない。
セルシアがイーリスに対して全く文句を言っておらず、表情を歪んでないことから不快には思ってないだろう。
でも、人によっては今まで積み重ねてきた努力を否定されたと感じてもおかしくない発言ではあるな。
「それに、あなたの常識がラガス君やセルシアさんたちに通じるとは限りません」
「それは……どういう意味ですか」
「言葉通りです。少し前に、ラガス君が全員でBランクのモンスターを倒したことがあると言ったのを覚えてますか」
言った、言った。確かに言った。
イーリスが本当に俺がリザード公爵様からの依頼を達成できるのか不安そうだったから、二回ぐらい言った。
なんならAランククラスのモンスターも一人で倒したけど……その話は、絶対に信じてないな。
ルーフェイスのお陰で倒せたとか思ってそう……てか、そのルーフェイスが超つまらなそうにしてる。
ごめんな、ルーフェイス。
でも今話をぶった切ったら、絶対に空気が悪い状態が続くから、もうちょい我慢してくれ。
「覚えて、ます」
「話から推測するに、ラガス君たちはそのBランクのモンスター以外のモンスターも、自分たちだけで戦っている筈です……あっていますか、ラガス君」
「はい、その通りです」
間違ってたら恥ずかしいから、一応俺に確認したんだろうな。
仮に間違ってたら……地獄の様な空気だ。
「遭遇したモンスターに、一人だけで挑むこともあったでしょう。であれば、セルシアさんがDランクやCランクのモンスターにソロで挑み、戦ったことがある……そういった状況もあったでしょう」
あったような、なかったような……最低でも、Dランクのモンスターと一人で戦ってた記憶はある。
てか、オーガの集団に襲撃された際には、メリルのサポートがあっただろうけど、ソロでオーガに挑んでたし……えっ!? まさかその話も信用してなかったのか?
だとしたら……ラージュさんの言う通り、かなり自分の常識だけで考えちゃってるな。
「相手が強敵であったとしても、自分を高める為に……限界を超える為に戦う。だからこそ、恐れない。それが彼らの常識なのでしょう」
……い、イーリスを説得できそうな言葉ではあるけど……こちとしては少々恥ずかしいな。
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