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世界一高価?

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「それではラガス様、作業着が出来次第連絡を学園の方に入れさせていただきます」

「よろしくお願いします」

二人の採寸が終わり、お偉いさん? とのお話も終えて店を出た。
まだ若干放心状態のメリルだが、ようやく口を開いた。

「ラガス坊ちゃま……気は確かですか」

「確かに決まってるだろ。失礼だな」

そりゃ高い買い物であることは理解している。
高いどころか、高過ぎるだろう。

もしかしたら、世界で一番高価な作業着を頼んでしまったかもしれない。
だが、今までも……これからも俺のメイドと執事はメリルとシュラだけ。

それなら、こういった買い物をしても損じゃないだろ。

「そうですか……いえ、だからといって私たちの作業着に黒曜金貨を使うなど、正気かどうか疑ってしまいます」

「だろうな。でもメリル、俺からのプレゼントなんだから、とりあえず素直に受け取っておけ」

もう、あの服屋と約束は取りつけた。
今頃あの服屋と専属契約してる職人に連絡がいってるだろ。

「ラガスさんの言う通りだぞ、メリル。もう決まったことなんだし、有難く受け取ろうぜ」

「……そうするしかありませんか」

そうそう、そうするしかないんだよ。

「それはそうとラガス坊ちゃま、イーリス様からのお誘いですが……セルシア様と一緒に行くのですか?」

「そのつもりだぞ。セルシアが嫌だって言ったら、とりあえず俺たちだけで行くことになるけど」

俺たちだけってことにはならないか?
あんなんでも公爵家の令嬢だし、護衛の騎士の一人や二人は着いてくるか。

「イーリス様が付いて行くことを、リザード公爵家の当主様が直々に決めた。それはつまり……そういうことですよ」

「だろうな」

手紙にも娘と仲良くしてくれと書かれていた。

上手くいけば、イーリスを俺の嫁にしたいとか思ってるんだろうな。
普通に考えれば身分違いなんだろうけど……以前話した様子からして、リザード公爵様は気にしてないっぽいよな。

まっ、俺はあいつと仲良くする気はナッシングだけど。
少なくとも……俺から仲よくしようとは思わない。
面白くて旨味たっぷりな指名依頼をくれたリザード公爵様には悪いけど、俺が声かけたり話題を振ったり……そんな気を使うつもりはない。

「よろしいのですか? ラガス坊ちゃまにはセルシア様がいます。まぁ、英雄色を好むと言いますので、側室をつくることは止めませんが」

「おいおい、勝手に話を進めるな」

そもそも英雄でもないし、ハーレムとか凄い気苦労するイメージがある。

いや、一応同級生をオーガの集団から守ったし、規模は小さいけど英雄……ではあるのか?
……自分でそんなことを考えるのは恥ずいな。

「俺があんなのとそういう関係になると思うか? つか、そんな状況になろうものなら、イーリスの奴は俺を殺してでもその状況をぶち壊そうとするだろ」

「はっはっは!! 容易に想像できるっす」

「だろ」

恋愛漫画とかなら、イーリスみたいな奴はツンデレキャラなんだろうけど、どう考えても……奇跡が起こったとしても、俺にデレるとかあり得ない。

というか、仮にそうなったとしても気持ち悪くて蕁麻疹が出そう。

「まぁ、ラガス坊ちゃまがそこまで意志が固いのであれば構いませんが……私は将来、子供の数がいくら増えても嬉しいので、お世話の事は気にしなくても問題ありませんよ」

「街中でぶっ飛んだことをいきなり口に出すなっての」

俺に枯れろと言うのか?
とりあえず、、側室とかそんな貴族的なことは考えられない……一応貴族ではあるけどな。

「俺にはバラック様の後ろ盾があるし、父さんはリザード公爵家に借りがある訳でもない。だから、俺がイーリスとくっつくなんか絶対にあり得ないから」

「そうですか……それなら、いつか現れるラガス坊ちゃまの第二夫人に来たいですね」

「変な未来に期待するな」

メリルの立場が俺のメイドだから、本気か俺をからかってるだけなのか分からなかった。
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