上 下
545 / 968

必要ないのでは?

しおりを挟む
SIDE 見守りのハンター

(あの令息くん……ちょっとヤバ過ぎないか)

ロッソ学園のハンター科の生徒たちが無茶しない様に陰から見守っているハンターたちの中で、それなりの戦闘力があって気配を消すことに長けたハンターがロックスとセルシア、ラガスの戦闘光景を見ていた。

(先のグレーウルフを一人で倒した令息くんと、素手でグレーグリズリーをボコボコにした令嬢ちゃんも学生にしては跳び抜けた力を持ってたが、Cランクのヴェノムスネークを一人で倒すとか……頭おかしい……じゃなくて、身体能力おかしいんじゃねぇか?)

それなりにプロとして長くやっているので、戦っている者が身体強化を使っているか否か。
それぐらいは戦っている様子を見れば分かる。

勿論、戦闘中にヴェノムスネークは身体強化のアビリティを使用していた。
それに対して、一人で戦っている学生……ラガスは身体強化のアビリティを使わずに素手で攻め続け、最後はヴェノムスネークの珍しいアビリティに気付き、衝撃を体内に素早く通して勝利を収めた。

(ヴェノムスネークなんて、俺らでも数人がかりで倒すのがセオリーだってのに……いや、上手く奇襲が成功すれば、俺一人でも倒せるか? しかしヴェノムスネークの感知能力は厄介だからな……それを考えると、奇襲で倒すのはやっぱり難しいよな)

男は離れた場所から鑑定のスキルを発動してヴェノムスネークのステータスを視ていたので、力流のアビリティを持っていたのを知っていた。

知っていたからこそ、余計にラガスがソロでヴェノムスネークを倒したことに驚きを隠せない。

(学校の先生達から、この三人がランクの高いモンスターと遭遇しても、多分手助けは要らないみたいなことを言ってたが……マジでそうなのかもな)

この男、王都でラガスがどれだけ活躍したのか知らず、セルシアがどれだけお嬢様なのかも知らない。

ただ……男はラガスの苗字を思い出し、とあることに気付いた。

(そういえば、リゼードって苗字を持った高ランクのハンターが昔いた様な気が……もしかして、そのハンターの息子なのか? それならこれだけ強いのも納得……いや、それでも完全に納得するのは難しいな)

男とリットでは、十歳以上年齢が離れており……リットがハンターを止めてから、かなり時が経っているので思い出すのに時間が掛かったのは仕方ない。

そして目の前でヴェノムスネークを一人で倒した理由に納得しかけたが、元高ランクハンターの夫婦の息子であってもCランクを十二歳という年齢で倒す理由としては納得しかねた。

(とんでもない才能を持った化け物なのか……それとも両親の英才教育が凄いのか……どっちともって可能性の方が高いか?)

正解は前者。
才能というよりは、果てしない訓練と実戦が生んだ化け物という表現が正しい。

(先生方の言う通り、Cランクのモンスター程度じゃ……どうやら俺の参入は必要なさそうだな。オークの上位種の群れとか、リゼードマンの群れが襲ってきてもこの生徒たちならなんとかしそうだ)

ロックスはCランクのモンスター相手だと、まだ余裕を持って倒せるかは微妙なライン。
だが、メリルの支援があれば隙を突いて倒すことは出来る。

セルシアは紫電崩牙を使えばそこまで難しくはなく、ラガスは身体強化系のアビリティ、獣魔法等を使って高速で戦場を駆け、魔弾を撃ちまくれば殲滅することぐらい難しくはない。

(でも、仮にBランクのモンスターと遭遇したら、さすがに助けねぇと……いや、そういえば従魔のブラックウルフと従者のメイドも中々強い気が……本当に何が起こっても俺らの手助けは必要ないか?)

男の直感は正しく、学生の中ではずば抜けた実力を持つ生徒三人に加えて、ルーフェイスとメリルの力が加わればBランクのモンスターの討伐も難しくはない。

男はもしかしたら、自分たちはこのグループを見守る必要はないのでは? と思ってしまったが、金を貰って雇われている立場なので、先生方にそんな事は進言できなかった。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...