万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか？

色々と充実はしていた

スレイドとの採掘作業を終え、学園に帰ってきてから夏休みが終わるまで結局魔靴造りに追われる日々が続いた。

お陰で五つ分の魔靴は制作出来たけど……正直、体がバキバキだ。
休憩がてらに軽く体を動かしたりしてたけど、あれだけじゃ体をほぐすのに足りなかったみたいだな。

そして、久しぶりに教室に来たんだが……物凄く来るのが久しぶりな気がする。
まぁ、夏休みが始まってから全く来てなかったんだし、久しぶりに感じるのは当然か。

それに……夏休みは色々とあったからな。

「ラガス、ちょっと顔が死んでる」

「え、マジで？」

「うん。何か、嫌なことでも、思い出した？」

「嫌な事……まぁ、そうだな。嫌な事だな」

得た物は確かに良かったけど、やっぱり嫌なことに入る部類の出来事だったのは変わらないな。

「やぁ、久しぶりだね」

「おう、久しぶりだな。ロックス。夏休みはどうだった？」

「中々充実した日だったよ。学校で色々と学べる日々も楽しいけど、のんびり悠々自適に過ごせる日々もやっぱり良いね」

「はは、同感だな」

のんびり悠々自適に、ね…………表情に嘘は感じられないけど、体から漏れるオーラ？　は嘘を付けないみたいだな。

夏休みが始まる前と比べて、かなり強くなってる。
リーベにはまだ及ばないけど、もしかしたら……いずれは肩を並べるぐらいの強さを手に入れるか？

「ラガスは……えっと、もしかして嫌なことというか、面倒な事でもあった？」

「うっ……そんなに表情に出てたか」

「うん、そうだね。ちょっと解りやすい顔をしてたと思うよ」

「そうか……まぁ、今年の夏休みはちょっと色々あってな。いや、その色々全部が面倒な事じゃないんだよ」

実家に帰ったりセルシアの実家に行ったり、スレイドのサプライズの為に手伝いをしたこととかは、決して面倒な事じゃない。

ただ……流石にロックスにはサラッと言える話では……待てよ、もう既に別の学園のスレイドには話してしまったよな。
念の為、他の生徒には話さないでくれって頼んだから……スレイドだから大丈夫だと思うけど。

それなら、ロックスにも話もいっか。
ここだと他の生徒が多いから場所を変えないと駄目だけど。

「おう、お前ら席に着け」

おっ、バッカス先生だ。
当然だけど久しぶりに見るな……もしかしたらだけど、朝から酒飲んでた？
それとも二日酔い？

凄い酒好きらしいし……ドワーフの人たちみたいに、度数の低い酒なんて水と一緒だ！　なんて思ってそうだな。

「お前らが特に問題を起こさなかったお陰で、先生も夏休みも満喫できた。ありがとな」

……ちょっとダメ人間に思えるかもしれないけど、これがクラスを持つ先生にとっては当然の思いなんだろうな。
夏休みでも学校でやることはあるだろうけど、生徒が問題を起こしたらな……本来は休める時間でも休まなくなるかもしれない。

それを考えると、やっぱり学校の先生ってのは大変だな。

あれ、それを考えると俺は……別にあれは問題ではないか。
若干外交問題？　みたいな気がするけど、そもそも俺やセルシアは悪くなくて、バカ王子が勝手に暴走しただけだもんな。

というか、そういえば俺たちが帰る時にあのバカ王子、暴れてた気がするけどどうなったんだろうな……忘れよう。
これ以上考えても無駄だし、最低でも後二年ぐらいは関わることないんだしな。

気持ちを切り替えて二学期も授業をサボらず、それなりに真面目に生きていこう……なんて思いながら過ごしていると、ハンター科の先生から結構大きな知らせを受けた。

「今日から二週間後から、君達には未来のハンターとして演習を行ってもらう。まっ、簡単に言えば野営だね」

ほほぅ、野営か。
それなら得意というか……いや、ちょっと待て。
見張はいつもルーフェイスに任せてたから、見張りに関しては少し不安な部分があるな。

「今夏の演習はかなり重要だから、各自しっかり野営の振り返りをしておくように」

……とりあえずルーフェイスを連れて行って良いか聞いておこう。