上 下
468 / 962

判断を誤れば掬われる

しおりを挟む
「チッ!! 役に立たねぇ屑共だな」

一番後方で戦況を眺めていた盗賊団の頭……オバルは地面に唾を吐いた。
自身の部下がラガスたちの手によって次々に殺されていくなか、特に悲しいという感情は生まれてないみたいだな。

もう少し疲弊させろ。少しでも傷を負わせろ。
もっと役になってから死ね。
そんなことしか思ってなさそうだ。

いかにも盗賊らしい面構えだ。

「はぁ~~~~、俺様自ら動かねぇとならねぇのか……めんどくせぇな」

大斧を持ち上げ、地面から腰を上げて一歩前に出る。

大将が重い腰を上げたころには、盗賊団……全員が地面に倒れ伏していた。
真打登場とでも思ってるのか? 仮に本当にそう思ってるなら、馬鹿過ぎるだろ。

「残るはあんただけだな」

「はっ!! ガキがカス共を殺したぐらいで粋がってんじゃねぇぞ!!!!」

「うるさい声だな……響くからあんまり大きな声を出すなよ」

出口が一つしかなくて、ちょっと距離があるからマジで大きな声を出されると耳に響く。

「口だけは一人前みてぇだな」

「……まぁ、自分で実力も一人前って言うのは恥ずかしいな」

既に大人と変わらない……もしくはそれ以上の力は持ってるだろうけど、堂々と自分は一人前だって言うのはちょい恥ずかしい。
目の前の盗賊団の頭よりは強いと思うけど。

「ラガスさんは口だけじゃなくて実力も一人前……いや、超一人前っすよ」

「シュラの言う通りですね。それで、ラガス坊ちゃま。目の前のお山の大将をどう懲らしめてから殺しますか?」

「……電気で、ビリビリしてから、メリルの毒で、じわじわ追い詰める」

「あら、セルシア様。とても良い案ですね。ラガス坊ちゃまには先程、その役割を行ってもらいましたので、今度は私たちが行いましょうか」

二人とも、目がマジじゃないですか。
別にそんな感じで殺しても良いと思うけどさ。

「……メリル、それで殺すなら本当にキッチリ死ぬ毒を使えよ」

「えぇ、勿論分かっていますよ、ラガス坊ちゃま」

「さっきからペラペラごちゃごちゃくっちゃべってんじゃねぇぞ、クソガキども!!!!!!」

……おっさんこそ、ちゃんと風呂に入ってるのかよ。
加齢臭どうこうの臭さじゃないぞ、その匂い。

見ろよ、お前が勢い良く近づいてきた瞬間、ルーフェイスが物凄く嫌そうな顔をしたぞ。
やっぱり盗賊なんかに毎日風呂に入って体を綺麗するなんて考えはないんだろうな。

「おい、その汚い体でラガスさんの近づくなよ。匂いが移るだろ」

「……調子に乗んなよ。鬼人族だろうが、ガキ相手に負けるわけねぇだろ」

身体強化のアビリティを使って、更に魔力を纏って身体能力を向上。
それで……へぇ、俺が外で戦った奴と同じで腕力強化のアビリティを持ってるのか。

でも、こいつのほうがアビリティレベルは上だな。
それに……こいつが持ってる大斧にも腕力強化の効果が付与されている。
典型的なパワータイプって感じだな。

それに戦えるんだろうけど……総合的には、ハンターのベテランぐらい、か?
一級レベルには程遠いだろう。

シュラも判断を間違えることなく、強化系のアビリティを使用している。
良い判断だ。

中身と外面も完全に屑だけど、それなりの力を持っている。
判断を誤れば、足元を掬われるぐらいの力は持っている。

「ッ!!? ぐ、ぅおおおおおおおあああああああっ!!!!!!」

「ッ……さすがに、見た目通り力はあるな。けどよ、ちょっと俺に集中し過ぎじゃないか」

「がっ!!!???」

確かに、シュラの言う通り目の前の相手に集中し過ぎたな。
誰もこの戦いが盗賊の頭……オバルとシュラの一騎打ち、なんて言ってないからな。

「文字通り、隙だらけってやつだな」

ルーンはちょっとシュラと似てるよな。
メインはロングソードだけど、体術も年齢を考えればおそらくそれなりの腕がある。

いくら強化能力を使っていたとしても、ルーンも同じく自身を強化している。
今のであばら二、三本は折れたか?

でも、相手は二人だけじゃないんだよな。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...