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国宝並みの一品

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「こちらが、詫びの品になる」

数日の間、フォロスたちと模擬戦を行いながら細剣が用意されるまで待った。
そしてようやくセルシアが要望した品に相応しい細剣が届き、アルガ国王と再び対面。

細剣はケースの中に入れられているんだよな?

セルシアがケースを開けると、中には厭らしく感じない程度の装飾が施された鞘付きの細剣が入っていた。

「……丁度良い重さ」

実際に手に取り、重さを確かめながらゆっくり鞘から刃を抜く。

「刃にはアダマンタイト鉱石と雷竜の中でも稀有な存在である紫竜の牙が使われている」

ッ!!?? アダマンタイトと紫竜の牙……とんでもない素材の名前が出てきたな。
いや、でもセルシアの要望通りの細剣を造るには、それぐらいの素材じゃないとダメか。

ちなみに細剣のランクは……九!!??
最低でも七って伝えてたからランク八ぐらいの細剣を用意するかと思ってたけど……もうワンランク上の細剣を用意するか。

まっ、アルガ国王にちゃんと迷惑を掛けたって思いがあるから、それぐらいの細剣を用意するのは当然か。

「名は、紫電崩牙」

「紫電、崩牙……良い名前、ですね」

確かに良い名前というか、中二心をくすぐる名前というか……というか、名前に紫電が付くってことは紫の雷が使えるってことか。

他の雷竜よりも速さと威力が優れている紫電。
刃にはアダマンタイト鉱石を使ってるから、強度に問題はないだろう。

にしても、ランク九の細剣か……改めて考えると、とんでもない一級品だよな。
国宝になってもおかしくない武器だ。

セルシアが順調に成長すれば、いずれ紫電崩牙を使って山を切断したりしそうだな……冗談じゃなく。

「気に入ってもらえてようで良かったよ」

ホッと一安心って顔だな。
ここでセルシアが物足りない、みたいな反応や言葉を漏らしたら……素材の価値を考えれば、もうどうしようもないか?

探せば紫竜の牙やアダマンタイト鉱石以上の素材はあるかもしれない。
だが現状、短時間の間に取り寄せられたのはそれらが限界。
紫竜は確かギリギリSランクのモンスターだったか?

それにアダマンタイト鉱石が加わればランク九に届くことも可能、か。
だとしても、この細剣……紫電崩牙を造った職人を褒めるべきだろうな。

シュラなんて感心し過ぎて、さっきから口が半開きになってる。
鍛冶を行うシュラにとっては、それぐらい驚く一品なんだな。

まっ、俺が貰った空間魔法のアビリティ結晶も本来ならそちら側に落ち度があったとしても、おいそれと渡せる物じゃない。
あのバカ王子は自分のせいでこんな貴重な物が俺の手に渡ったと知れば、いったいどんな反応をするんだろうな……もう二度と会うことはないだろうけど、そこはちょっと気になる。

「アルガ国王様、本日まで王城での滞在を許可していただき、誠に感謝します」

「こちらこそ、バカ息子の無駄なプライドをへし折ってくれたことに感謝している」

「ははは、それはどうも……それでは、短い間でしたがお世話になりました」

やっぱりあの第三王子はちょっと難ありな奴だったのか。
でなければ、父親であるアルガ国王がバカ息子なんて言わないよな。

さて、まだ昼飯前だし日が暮れるまでそれなりに進めそうだな。
一旦学園によってクレア姉さんとアリクに……そういえば、もう二人とも時期的に実家に帰ってるか。
それなら、そのまま実家に行って……は、無理だな。

ここまで乗って来た馬車は王族が管理してる馬車だし、ドレッグさんたちは近衛騎士なんだから俺たちの護衛という任務が終われば、城に戻らなければならない。
それを考えると、結局一度王都に戻ってから実家に向かう流れになるか。

身支度を整えて王城の外に出て、馬車に乗り込むときに王城の方から何故か魔法による衝撃音が聞こえた。

「……訓練場で誰かが魔法を使った、とかじゃないよな?」

「どう考えても違いますね。訓練場にはおそらく防音機能が付与されているので……誰かが訓練場以外で魔法を使ったということになります」
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