上 下
419 / 968

久しぶりに実戦で使用

しおりを挟む
贅沢な朝を迎え、今日も軽快に進んでいく。

「……やっぱり暇だな」

「その様な魔力操作の訓練をしながら暇だと言えるとは、やはりラガス坊ちゃまは傑物ですね」

「そりゃどうも」

馬車の中はやはり暇すぎるので、体に魔力を纏いながらうねうねと不規則に動かし続けている。
これが魔力操作の訓練になるのか、正直最初は分らなかった。

ただ、うねうねした状態を意図的につくるのはどうやら魔力操作の訓練になるらしい。

「メリルも相当だと思うけどな。シュラも」

「ラガス坊ちゃまのメイドですからね。これぐらいは当然です」

「メリルと同意見っすね。何年も訓練していればスムーズに動かせるようになるっすよ」

これに関してはキリアさんにも伝えており、同時にルーンさんにも伝わっているので二人共ぎこちなさはない。
だが、メリルたちと比べればうねうね感が足りないな。

「……ラガスの魔力、ちょっとうねうねし過ぎ、だと思う」

「こればかりは年季の差? ってやつだ。ただ……やっぱりフェリスさんは上手いですね」

「ふふふ。これでも長生きしてますからね。魔力操作の練度は実戦で鍛えまくりましたよ」

は、ははは。実戦で鍛えたのか……俺とはレベルが違うな。
確かに実戦で何かを試すことはちょいちょいあったけど、魔力操作はまず訓練で練度を上げてから実戦で実験してたからな……やっぱりあれだな、フェリスさんに追いつけるイメージができないな。

良い暇つぶし……という訳ではないけど、なんとか時間を潰しながら昼飯の時間になり、一旦箱の外に出る。
そしてフェリスさんたちが昼食を用意している時に、オークが一体だけこちらに来た。

「シュラ、あれはどう考えてもちょっとご飯を分けてくださいって顔じゃないよな」

「そうっすね。どう考えてもとりあえずこの場の男は殺して食おうって顔をしてるっす」

オークの雄だから男は殺して食って、女は持って帰って犯したいって訳だな。
清々しいまでに性欲が正直に現れてるモンスターだよな、マジで……とりあえずこいつで久しぶりに倒すか。

「ドレッグさん、俺が倒すんで手を出さないでください」

「……分かりました。お気を付けて」

オークジェネラルとキングじゃないから大丈夫だと思う……だから、こいつを溜めさせてもらう。

「コンバットドール、久しぶりに暴れてもらうぞ」

戦うための錬金人形、コンバットドール。
最近全く使ってなかったからな。

久しぶりに戦う相手として、オークは丁度良いだろ。

オークは俺が作ったコンバットドールの凄さが解らないのか、身体強化のアビリティを使わない。
おいおい、せめて身体強化を使ってくれないと話にならないんだが……まっ、実際にコンバットドールを見たことがなければ、凄さが解らないのも当然か。

速さはこちらの方が上なので、近づいて殺さない程度に蹴りやパンチを入れる。

「ッ!? フガッ!!!!!」

遅い遅い。それぐらいの攻撃じゃ余裕で避けられるっての。
ほれワンツー、ミドルからの後ろ飛び蹴り!!。

「ブ、モァッ……」

……数メートルぐらい吹っ飛んだな。まだ生きてるよな。
これぐらいじゃ、まだまだ鈍った腕が元に戻らない。

「ブモォォォオオオオオオアアアアアッ!!!!!!!」

おっ、どうやら本気になってくれたみたいだな。
身体強化のアビリティは使ってるし、それに魔力を纏う強化まで……そうそう、それぐらいマジな感じで殺しに来てくれないと。

「ようやく練習相手になったって感じだな」

素の力や速さ、耐久力はまだ上だと思うが……一応こっちも魔力を纏わせて対処するか。
コンバットドールを操る魔力の糸を通して魔力を送り、纏わせる。

自分の体を纏うわけじゃないからちょっと手間だけど、オークぐらいな逃げながらやればいけるな。

「相変わらず器用に動かすっすね」

「シュラだって魔力操作の腕上がってるし、操ろうと思えば操れるだろ」

「出来るかもしれないっすけど……俺は基本的にコンバットドールを操れたとしても、自分メインで戦いたいんでラガスさん並みの腕がないとコンバットドールを使ってみようと思えないっすよ」

「はっはっは!! そうなりたかったら実際に動かす練習あるのみだ」

俺だって最初っからコンバットドールを動かしながら自分も縦横無尽に動いて戦えたわけないじゃないからな。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...