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軽くやりましょう

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俺はセルシアが隣にいればそれで十分だ。
何人もの女性を囲うとか……無理無理、この世界でハーレムは結構当たり前かもしれないけど、俺には無理な芸当だ。

「例え多くの女性から言い寄られたとしても、俺はそれに応える気はありませんよ」

ただ……フェリスさんの勘がそう言ってるんだもんな。
マジでそうなりそうで今後どうなるのか……考えただけで怖い。

「ふふ。ラガスさんのパートナーであるセルシアさんは本当に愛されている様ですね」

「えっと……まぁ、その……パートナーなんで」

「初々しいですねぇ~~。青春しているというやつですね」

ぶっ!!! だ、第三者からそう言われると恥ずかしいな。
けど……前世と比べれば、確かに青春してるな。うん、それは断言出来る。

なんて話しているうちに特別寮に着いた。

「おかえり、ラガス。えっと……その人が、ルーフェイスのお母さん?」

「そうだよ、今は人の姿をしてるけどルーフェイスのお母さん、フェリスさんだ」

「……どうも、ラガスのパートナーである、セルシアです。よろしくお願い、します」

「あらあらどうもご丁寧にありがとう。もう知ってると思うけど、ルーフェイスの母であるフェリスです。よろしくお願いしますね」

お互いに握手を交わした瞬間、セルシアの表情が少し変わった。
やっぱり直ぐにフェリスさんの実力を察したみたいだな。

今のセルシアではどう足掻いても超えられない……とてつもなく高い壁だ。
ルーンさんとキリアさんもなんとなく感じ取ったみたいだな。

「それではラガスさん、出発は明日ですよね。それなら……少し体を動かしませんか?」

「……ふふ、良いですね。訓練場に移動しましょう」

夏休み中は多くの生徒が実家に帰ってるから、訓練所の一つや二つは空いてるだろ。

「ラガス、大丈夫? 死んじゃわない?」

「おいおい、心配し過ぎだってセルシア。そうなるかもしれない可能性はアルガ王国に行ってからだろ。フェリスさんは俺たちからすれば大先輩。相手の実力に合わせて手加減するなんて朝飯前だよ」

「そう、それなら良い……けど、フェリスさん、本当に強いよね」

「そりゃルーフェイスのお母さんだからな……国と戦争しても余裕で勝つだろ」

狼竜だからフェリスさんの一声で従う狼系やドラゴン系のモンスターは多い筈……って事を考えると、本当にアルガ王国が今後存命してるか不安になってきたな。

偶に昔話を聞いてたけど、敵にはあまり容赦ない人だからな。

「ラガスさん、ルールはどうしますか」

「……俺は肉弾戦のみ。試合時間は三分でお願いします」

「分かりました。楽しみですね」

フェリスさんにとっては楽しみかもしれないけど、俺からすればドキドキの時間だ。
……折角のフェリスさんとの模擬戦だし、羅門を使うか?

フェリスさん相手なら羅門を使っても問題はない。
模擬戦だから終わった後の判断に関しても気にしなくて良いよな……選択肢の中に入れておくか。

「ラガス、私も……フェリスさんと模擬戦を、したい」

「……えっと、どうですか? フェリスさん」

「えぇ、勿論お受けしますよ。どうせなら、全員とやりましょうか」

ルーンさんとキリアさんがビクッと震えた。
そりゃそういう反応になるか。

二人ともそれなりに強い部類に入るけど、シュラとメリルと比べればまだまだ。
そんな二人よりも圧倒的に強いフェリスさんと模擬戦を行っても、大した成果を得られないって考えてるんだろうな。

「ルーンさん、キリアさん。最強の狼竜と模擬戦が出来る機会なんて、そうそうないですよ」

「そ、それもそうですね」

「……ラガス殿の言う通りだな」

二人の眼に戦意が戻った。
まっ、主であるセルシアが模擬戦を行うと言ってるのに、自分たちが下がる訳にはいかないだろうから、俺が何も言わなくても戦ってただろう。

教師に一声掛けてから訓練場に向かい、フェリスさんと向き合う。

「それではメリルさん、時間のカウントをお願いしますね」

「かしこまりました、お任せください」

ふぅーーーー……軽く戦意を零しただけでこの圧かよ。本当に桁違いだな、この人。

「それではラガスさん、遠慮なく来てくださいね」

「分かりました……遠慮なくいかせてもらいます」

「……始め!!!!」

メリルの模擬戦開始の合図と共に、俺は全力で駆け出した。
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