上 下
402 / 968

それって結局は

しおりを挟む
王城から戻り、夕食までいつも通り過ごした後、ベランダに出て亜空間から通信用の水晶玉を取り出す。

「ガイ、今大丈夫か」

『あぁ、大丈夫だ。それで、何か厄介事に巻き込まれたのか、マスター』

……こ、今回の件はまだ漏れて無い筈だよな?
なのに厄介事に巻き込まれたって……ちょっと鋭すぎないか。

「ま、まぁそうだな。実はな……アルガ王国の第三王子に絡まれてるんだよ」

『……アルガ王国の第三王子がガルガント王国に入国したという情報はないが』

「実はな、簡単に言うと第三王子がセルシアのパートナーに俺が選ばれたことに納得出来ていないっぽいんだよ」

『マスターのパートナー……あぁ、なるほど。大体状況は把握した。そういえあばアルガ王国の王子の中で一人、マスターのパートナーであるセルシア嬢に惚れているという情報をかなり前に入手したが……その熱が再熱したという訳か』

第三王子がセルシアに惚れていた情報は得ていたのか。
さっさと諦めてくれてたら嬉しいんだが……個人の気持ちだから仕方ないと言えば仕方ないんだよな。

ぶっ飛ばして呪うことに変更はないけどさ。

『そうか……マスターの周りは中々落ち着かないようだな』

「不本意ながらそうみたいなんだよ。それでさ、一応俺が用意できる手札は大丈夫そうなんだけどさ、念のためそっちから少し人を貸してほしいんだよ」

『そういう事なら問題はない。国境を越えて活動を行うことは少なくないからな。そうだな……ゼンスをリーダーにしてもう数人付けよう』

「ゼンスっていうと……あの気の良さそうなおっちゃんか」

『そうだな。その認識で合っている……だが、ゼンスは強いぞ。俺達の中でも強さはトップクラスだ。その分諜報関係は腕が下がるが、その分は他の奴らで補う』

「へぇ~~、それは心強いな」

確かにあれはただ優しいだけのおじさんって感じじゃなかったもんな。
今回は諜報よりも俺の周りの人を守ってほしいってのがメインだから、実戦的な実力に特化した人が来てくれるのが有難い。

『ただ、王城の中に入って周囲を警戒するのはさすがにリスクが大き過ぎる』

「そこに関しては大丈夫だ。王城での護衛に関しては俺が用意した切り札に活躍してもらうから」

『そうか、すまないな。王城に入ればアルガ王国専属の暗殺集団もいるだろうから、俺たちとマスターの関係が仮にバレた場合、国と国の問題に発展しかねない』

「……それはだけは絶対に避けたいな」

俺と国なら……いや、それでも最低限、セルシアには迷惑を掛ける。
元々頼もうとは思っていなかったが、ゼンスたちに王城での護衛は頼まないのが吉だな。

『俺としても国との衝突は避けたいところだ……マスター、一つ提案なんだが』

「なんだ?」

『俺たちディザスターにそうしたように、アルガ王国の暗殺ギルドのトップを掌握したら良いのではないか』

……なるほど。
いや、なるほどって納得しちゃうのは良くないな。

でも……そうしてしまえば、アルガ王国で起きた問題に関わる時、大いに役立つよな。
とはいえ、そこまでアルガ王国に何度も行く予定がなければ、関わろうとも思わない。

「一瞬良い案だとは思ったが、そもそもアルガ王国と関わろうとは思っていない。それに、アルガ王国でトップの暗殺ギルドを掌握してしまったら、それこそ激突しそうじゃないか?」

『……うむ、そうかもしれないな。少々考えが甘かった。だが、実際にマスターたちを襲ってきた裏のギルド連中はどうする? 望みとあれば、襲ってきた連中は殺しておくように伝えるが』

「あぁ……それに関しては、俺が出向くよ。二度と変な気を起こさないようにきっちり示しておいた方が良いだろ」

『そうかもしれない。そうかもしれないが、それでは結局向こうの裏ギルドの連中を掌握することにならないか?』

あっ…………確かに、そうなる、か?
でも報復の役割をフェリスさんに任せるわけにはいかないし、やっぱり俺が自ら乗り込んで忠告しないと駄目だよな。

まぁ、そうなったらそうなったらで仕方ないよな。
暗殺ギルドの連中が仕掛けてきたってことは、アルガ王国の連中が仕掛けてきたのと同じ。

その力を俺に奪われても……しょうがないよな。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...