上 下
393 / 962

早まるな

しおりを挟む
「はぁ、はぁ、はぁ……悪いな、付き合ってもらって」

「別に構わねぇよ。ちょっとはスッキリしたか?」

「あぁ、それなりにな。にしても……まだまだお前には追いつかなさそうだな」

「はっはっは!! これでも幼い頃から体術は毎日鍛えてきたからな。まだまだ負けねぇよ」

とは言っても、このまま俺が鍛錬を続けてもいずれは抜かされるかもな。
それほどリーベには格闘のセンスと才能を感じる……まっ、負ける気はないけどな!!!

「……なぁ、もしかして学校を辞めようとかちょっとも考えてないよな」

「ッ!!! ……」

この反応……ちょっとは考えてるみたいだな。
大失恋をした後、全てがどうにでも良くなったのかもしれないが……流石に思っただけで、踏み留まったか。

「それは止めといた方が良いぞ」

「分かってる、直ぐに頭から消した。それに……流石に父さんにぶっ飛ばされる」

「……だろうな」

ちょっと過激な気がしなくもないけど、侯爵家の令息が女を懸けた決闘に結果的に負けて学校を去ったら、マジで笑い者になる。

リーベ的には少々学校に居ずらいって思ってるのかもしれないが、結果的にそうなるのはアザルトさんだ。
リーベが辞める必要はこれっぽちもない。

「俺たちまだ一年生だぜ。卒業するまでに新しい恋をするかもしれないだろ」

「……直ぐ次に移ろうとは思えないがな」

「それはそうかもしれないけど……恋ってのはどこで、どのタイミングで見つかるか分からないものだろ。アザルトさんの件だって、確か一目惚れだったんだろ」

「そ、そうだな……あぁ、そうだった」

ヤバい、過去の恋愛に触れるのはアウトだな。

「と、とりあえず卒業するまでに恋人ができるかもしれない。その可能性はゼロじゃないだろ。あと、どうせハンターにはなるつもりなんだろ」

「……そうだな。今更騎士やどこかの家に仕えようという気にはならない」

「だろ、それならハンター科の生徒とそれなりに仲良くなっておけば、将来どこかでその縁が生きるかもしれない。それにな……ハンターになってからそれなりに良い生活を送るには、今から金を貯めておいた方が良いぞ」

「そ、そうなのか?」

おっと、どうやらちょっとハンターへの認識が甘いみたいだな。

「ハンターにはランクがあるのは知ってるだろ」

「あぁ、それは勿論知ってるぞ。ランクによって受けられる依頼があるのも知ってるが」

「それは良かった。基本的に卒業すれば一番下からのスタートだ。戦闘能力の高さによって飛んで昇給することは可能だけど、ある一定ラインからはしっかりと依頼を受け続けてギルドの信頼を得て、昇給する必要がある。俺は親が二人とも元ハンターだから知ってるが、そこそこ金がないと今使ってるベッドで寝ると無理だからな」

「……世間でいう一般的なベッドは学園の物より、そこまで品質が悪いの、か」

「そりゃ王都のベストフォーに入る学校のベッドだ。そこら辺の宿屋が質で勝てる訳ないだろ」

ベッドだけじゃなくて、料理の質も当然違う。
俺はこの世界の飯は圧倒的に不味い料理じゃなければ大抵は美味く感じる……でも、貴族が食べるような料理ばかり胃袋に入れてきた奴からすれば最初は戸惑うだろうな……いずれ慣れるとは思うけどな。

「だから、なるべく学生のうちに金を溜める。後は……野営時を快適に過ごす魔道具を持っていた方が良いだろうな」

「野営、か……そうだな。俺も何度か経験はあるが、自分の力だけで質の良い魔道具を揃えるとなると、それなりに時間が掛かるな」

「だろ。だからしっかりと学園を卒業するまで残って、その間にコツコツ金を溜めて道具を買って資金を溜めた方が良い。これからも魔弾の訓練を続ければ、低ランクのモンスターはそれだけで倒せる。ハンターでなくとも素材や魔核は換金出来るからな」

「……ふふ、的確なアドバイスに感謝する。お前はあれだな……偶に人生二週目かと思ってしまう」

「…………何言ってんだよ、そんな訳ないっての」

おいおい、鋭いな。
まっ、言うても生きた年数を足しても三十に届かないけどな。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?

紫楼
ファンタジー
 5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。  やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。  悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!  でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。  成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!  絶対お近づきになりたくない。  気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。  普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。  ブラコンとシスコンの二人の物語。  偏った価値観の世界です。  戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。  主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。  ふんわり設定、見切り発車です。  カクヨム様にも掲載しています。 24話まで少し改稿、誤字修正しました。 大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。

処理中です...