上 下
377 / 962

あと出来ることは……

しおりを挟む
「まっ、そういう訳だ。だからこのワイルドベアの死体は俺たちもらうからな」

「勿論だ。それじゃ、僕たちは失礼するよ」

早くこの場から立ち去りたいって表情がみえみえだな。

でも、ナルクってお兄さんの立場を考えれば、この場からさっさと消えたいって気持ちは解る。

アタッカーの奴は頭では理解していても、心では納得してないって感じだけどな。
その気持ちも多少は解るけど……ただ、あのワイルドベアはまだまだ体力的に余裕があった。

リーベが本気で叩き潰したからか問題無く倒せた。
だが……何度考えても、実戦経験の少ないルーキーが遭遇したらアウトだった。

「ようやく行ったか……なんだか、あのナルクというタンクの男は苦労しそうな性格だったな」

「激しく同意だ。他の二人が結構マイペースというか、自分の意志で自由に動くタイプだったからな……今もこれからも苦労しそうな人だ」

あの人が元々そういう人なのか……それともパーティーメンバーにあんな二人がいるから苦労してそうなのか……多分後者な気がする。

「とりあえず、これ。解体しよう」

「そうだな。早い内に解体しよう」

三人で行えば短時間で終わる。
幸いにも解体している途中にモンスターは襲い掛かって来なかった。

そしてまだ日が暮れるまで時間があったので、夕方になるまでモンスターを狩り続けた。

桁外れに強いモンスターとは遭遇しなかったけど、魔靴の力に慣れるには十分な相手と戦えた。
ライド君並みの相手と遭遇できたかどうかは微妙だけど……悪くない一日だった。

「今日の流れはそんな感じだったよ」

「……その男を少々ぶん殴りたいと思いました」

特別寮に戻り、夕食を食べ終えた後にメリルとシュラに狩りの内容を話した。
するとメリルがナイガ―に強烈な怒りを抱いていた。

毒とか糸で殺したいって言うより、純粋にぶん殴りたいって発言してる時の方が強い怒りを含んでそうだな。

「ソウスケさんたち三人を前にして、よくそんな強気な態度が取れるもんだ……俺としてはちょっと呆れるな」

「俺は大会で優勝してても所詮は男爵家の四男だからあれだけど、侯爵家の令息と公爵家の令嬢に対してあの態度はちょっとなぁ……ぶっ飛ばされても文句は言えないと思えないか?」

「私が傍にいたら絶対にぶっ飛ばしてました」

う、うん……そうだろうな。
てか、ちょっと圧が強いよメリルさん。

ぶっちゃけ俺に害とかないからそんな怒らないで……って、メリルの立場だとまた感じ方が違うか。
俺ことを思ってキレてるの正直嬉しいけど。

「それで良い感じに仕上がってたんすか?」

「まだ生まれてから大して時間は経ってなかったと思うけど、オーガを一人で倒せてた。年齢を考えれば、十分な実力だ」

貴族の令息や令嬢であっても、オーガをソロで倒せる者はそう多くはない。
ただ、ライド君ならそれぐらいの偉業を達成しそうなんだよな。

俺たちがどれだけリーベをサポートしても、決闘の結果が解るまでは安心出来ない。

「魔弾、魔剣、体術、魔靴……結構な手札を揃えたっすよね」

「魔力操作もそれなりのものかと思いますが……」

そうなんだよ、それだけの手札を揃えても絶対に勝てるとは断言出来ない。

体術のレベルはライド君よりも高いから二刀流で来ても、なんとか対処出来る筈。
光魔法も厄介な魔法アビリティではあるけど、そこまで苦戦する要因にはならない……と思う。

一番気になるのは限界突破だ。

「限界突破。こいつが実際のところ、どれぐらいの効果を発揮するのか……そこが勝負のカギになると思うんだよ」

「形勢がひっくり返るアビリティと聞いたことがありますが、実際のところはどうなんでしょうね」

「……侮れないアビリティに変わりはないだろ。限界を突破するんだからな」

シュラの言う通りだな。
そのアビリティを使うだけで、文字通り限界を突破出来る。

つまり、今回みたいな決闘であれば序盤から中盤まではあまり体力や魔力量の心配をする必要が無い。
それは精神にも大きな余裕を与える筈だ……チッ!!! 本当に厄介なアビリティだ。

今からでもアビリティを封じるマジックアイテムでも探すか?
いや、流石にそれはやり過ぎ、か……でも、マジで反則的な内容だ。

「けど、ここまで来たらあいつの努力と執念に祈るしかないな」

……大丈夫だ。
リーベはここで報われても良い筈だ。

それだけの努力を重ねてきた。だから……後は背中を押すだけだ。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...