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いざ対面

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「んじゃ、行ってくる」

「気を付けてください」

「無いとは思うっすけど、乱闘には気を付けてくださいっす」

「大丈夫だよ、多分」

俺はビシッと正装を身に着けて特別寮を出て、リザード公爵の別荘へと向かう。
招待されているのは俺一人だけなので、メリルとシュラは今日は休みだ。

ぶっちゃけちょっと心細いと思わなくもないが、リザード公爵がそんなに短気ではない……てか、イーリスからすれば幾らでもいる婚約者候補なの中の一人である俺に、そんな執着はないと思いたい。

セルシアの言う通り大丈夫だ。
公爵はそんな短気な人ではない。てか、そんな短気で公爵家当主の座が務まるかって話だ。

でも……仮に乱闘にはならなくとも誰かと戦う流れになったらどうしようか?
公爵と模擬戦とかする流れになったら……とりあえず寒さ対策をして選定必勝で全力の肉弾戦で挑めば良いか。

公爵家の当主が弱い筈が無い。
仮にそうなったらある程度全力で戦う……大会で見せていない手札を晒すのは嫌だが、負けるのも嫌だからな。

その他の人物と戦う事になったら基本的に魔弾とアブストラクトで相手をすれば良いよな。
おそらくその二つを使えば何とかなる筈だ。

そして歩き始めてから大体三十分ぐらい経ち、ようやくリザード公爵の別荘へと辿り着いた。
いや、マジで王都は広すぎる。

というか……貴族外に入ってから貴族達や兵士からの視線がグサグサと突き刺さってきてちょっと重苦しかった。
好意的な視線があれば嫉妬や妬みなどの視線もあったからなぁ……戦いとかが始まればそういった視線を感じなくなるんだけど、そうでない場合はグサグサと刺さり続けるんだよなぁ~。

「それで着いた訳なんだが……デカ。別荘でこんなに大きいとか……実家はどれぐらい大きいんだろうな」

俺の目の前には巨大な屋敷が映っている。
公爵家の別荘だからそれなりに家は大きいだろうなとは思っていたけど、マジでデカい。

もしかし王都に来るときはしょっちゅうあるのか?
それとも他の貴族に侮られない為にわざと大きくて豪華な屋敷にしてるのか……後者の方が当たってそうだな。

よし、とりあえず辿り着いたんだから中に入ろう。

「すいません、リザード公爵家の当主様から正体を受けた者です」

招待状なる手紙を警備の兵士へと渡す。
すると兵士は変わらない表情で手紙を読み、招待状を返してくれた。

「君がリゼード殿だな。屋敷の入り口まで案内しよう」

「ありがとうございます」

……そこそこ強いな、この人。
公爵家の別荘の護衛兵士なだけあって、そこら辺の戦闘職より一歩上の強さを持っていると思う。

流石に失礼だから狼竜眼の鑑定なんて使えないけど、感覚的に解る。

「少々待っていてくれ」

そう告げると兵士は別荘の中へと入った。
そして直ぐに戻ってきた。

「屋敷の中に入っればメイドが案内してくれ。そいつに付いて行ってくれ」

「分かりました」

兵士さんがドアを開けてくれ、ササっと中に入る。
そしてまずは一言……本当に豪華だな。

外装だけじゃなくて、内装も豪華だ。
そこら辺に有名画家で書いたであろう絵も飾られて、壺? とかよく解からない美術品も点々と置かれている。

爵位が高い貴族としてはこういった物を家に置くのが当たり前なのかもしれないが……俺からすれば金の無駄遣いにしか思えないな。

「お待ちしておりました。アリオス様がお待ちしている部屋まで案内いたします」

この人も強いな。てか、もしかしてさっきの兵士さんよりも強い、か?
それに兵士さんと違って俺にこう……そんな強くはないんだけど、ちょっとチクチクする敵意を向けてきてるんだよな。

もしかしてイーリスの事を溺愛してる人か?
大会でイーリスを完封した俺が気に食わないってところか……でなければ俺に敵意を向ける理由は無いよな。

ま、まぁここで俺に攻撃を仕掛けてくるような雰囲気ではないから大丈夫だよな。

ここ最近自分でも色々と心配し過ぎかと思うが、やっぱり敵意を向けられると戦闘に発展してしまうのかと思ってしまうんだよな。

「こちらにアリオス様がおります」

ふぅーーー……いよいよイーリス・リザードの父親と対面か……悪い意味でドキドキが止まらないな。
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