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優先したいが、諦めたくない
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「にしても、お前の婚約者はこう……度胸があるな。リーベの意志で婚約まで至ったとはいえ、アザルト家はそれなりに色々と貰っているんだろ?」
「そういう話を何度か聞いたことがある。ただ……やはり元々は俺だけが望んだ婚約。フィーラの父親も望んでいなかったのかもしれない」
そ、それはどうなんだろうな?
男爵家が侯爵家の親戚になれるってのは結構嬉しく、有難い内容だと思うんだが……うん、きっとそうだよな。
実際にリーベが婚約による恩恵を男爵家が受けてるって言ってるんだし……やっぱりアザルトはその幼馴染君と駆け落ちする気か?
仮に二人は駆け落ちに成功したとしても実家の方がどうなるのか、ある程度想像出来るとは思うんだが……恋は人が暴走する切っ掛けになるのかもな。
「でも……諦めてはいないんだろ」
「勿論だ。その幼馴染が王都にいることは分かっている」
「王都にいるのか!」
でもなんで平民が王都に……あっ、なるほど。そういう事か。
「もしかしてだが、ハンターの学校に通ってるのか?」
「そうだ。集めた情報によると特待生の枠を勝ち取ったらしい」
「特待の枠を……一年生の中では実力者ってことだな」
もしかしてちょっと主人公的な性質を持ってるタイプなのか?
好意を抱いている相手は身分違いの令嬢、そして王都のハンター学校に特待生として入学……ここまでは完璧な流れだよな。
そして在学中にプロのハンターでも驚く様な結果を残して両家を黙らせる、という流れに持っていてアザルトと一緒にハンターとして活動しようと考えているかも………っていうのは俺の考え過ぎか。
「そこで俺はそいつに一対一の決闘を申し込もうと考えている。俺が勝てばフィーラには今後事務的用事以外に一切手を出さないと誓わせ、俺が負ければ潔く身を引く」
「なるほど、決闘らしい賭けの内容だな。でも、そういうのは子息であるお前が勝手に決めて良いものなのか?」
「そこは既に父に連絡してある。そして返事は私に任せると手紙には書かれていた」
……放任主義なのか子供の意志を尊重する主義なのか、どちらなのかは解らないけど本人達で解決出来そうなら後々面倒事にはならなそうだな。
「良いと思うぞ。ただ、その決闘で負けてしまったら身を引くんだろ。それでリーベは良いのか? アザルトに超惚れてるんだろ」
思い人にが自分ではない男にほぼ百パーセントと思いを寄せている、なんて分かったら気持ちがどんどん冷めていくのが普通だと思うが、それでもリーベの心は燃えている。
この状態でもまだ惚れているのだから、そう簡単に諦められる恋ではないだろ。
「……確かに俺はまだフィーラに惚れている。俺がフィーラのことを幸せにしたいと思っている……だが、やはりフィーラの気持ちを尊重しなければならいのかと思う部分もある」
「そう、かもな……その気持ちは確かに大切だ」
婚約者を雑に扱う男は糞野郎だと思うが、ここまで相手のことを考えて行動してるのに相手の気持ちが全く違う方向を向いてしまっている……うん、マジで可哀そうだと思う。
こんなにも良い男なのに……アザルトさんは全く見る目がないな。
「相手の気持ちも尊重はしたい。だがッ!!! 決闘に負けるつもりはない。しかし相手の実力に不安を感じるのも事実だ」
「そりゃ特待を勝ち取るほどの実力だもんな」
「そこでだ……リゼード、自分に稽古を付けて欲しい」
「えっ、と……魔弾の扱いを教えたら良いってことか?」
「それはそれで有難いが、実戦に近い稽古を望む。勿論、それによる報酬は払う。先払いは出来ないが、確実に払う!!!」
「そ、そうか。分かった、お前の熱意は十分に伝わった! だからちょっと落ち着け」
「す、すまない。少々熱くなり過ぎた」
いや、熱くなってしまうのはしょうがない。
その一戦で本来はこれからずっと自分の隣にいるかもしれない筈の人が、永遠に手の届かなくなるかもしれないんだ。
しかし俺が稽古、か……出来ないことはないと思うが、稽古をする期間にもよるよな。
「因みにだが、いつ頃に決闘を行おうと思ってるんだ?」
「一か月後に行おうと考えている」
「一か月後か……それなら一週間前ぐらいに本人に会って直接伝えよう。そうなれば相手が決闘に向けて準備する時間も短くなる。それに対して俺達は向こうより三週間も多く訓練を詰める。あと、一週間も猶予を与えれば向こうも理不尽だとは言わないだろ」
「……なるほど、確かにそうかもしれん。実力が高いだけではなく、策士でもあったか」
「そんな大層な考えじゃないよ。ちょっと悪知恵が働いただけだよ。とりあえず、面白そうってのもあるからお前からの依頼を受けるよ」
「感謝する、リゼード。この恩はきっちりと返す」
そんな重く捉えなくて良いのに。
まっ、返してくれると言うならきっちり返してもらおう。
「そういう話を何度か聞いたことがある。ただ……やはり元々は俺だけが望んだ婚約。フィーラの父親も望んでいなかったのかもしれない」
そ、それはどうなんだろうな?
男爵家が侯爵家の親戚になれるってのは結構嬉しく、有難い内容だと思うんだが……うん、きっとそうだよな。
実際にリーベが婚約による恩恵を男爵家が受けてるって言ってるんだし……やっぱりアザルトはその幼馴染君と駆け落ちする気か?
仮に二人は駆け落ちに成功したとしても実家の方がどうなるのか、ある程度想像出来るとは思うんだが……恋は人が暴走する切っ掛けになるのかもな。
「でも……諦めてはいないんだろ」
「勿論だ。その幼馴染が王都にいることは分かっている」
「王都にいるのか!」
でもなんで平民が王都に……あっ、なるほど。そういう事か。
「もしかしてだが、ハンターの学校に通ってるのか?」
「そうだ。集めた情報によると特待生の枠を勝ち取ったらしい」
「特待の枠を……一年生の中では実力者ってことだな」
もしかしてちょっと主人公的な性質を持ってるタイプなのか?
好意を抱いている相手は身分違いの令嬢、そして王都のハンター学校に特待生として入学……ここまでは完璧な流れだよな。
そして在学中にプロのハンターでも驚く様な結果を残して両家を黙らせる、という流れに持っていてアザルトと一緒にハンターとして活動しようと考えているかも………っていうのは俺の考え過ぎか。
「そこで俺はそいつに一対一の決闘を申し込もうと考えている。俺が勝てばフィーラには今後事務的用事以外に一切手を出さないと誓わせ、俺が負ければ潔く身を引く」
「なるほど、決闘らしい賭けの内容だな。でも、そういうのは子息であるお前が勝手に決めて良いものなのか?」
「そこは既に父に連絡してある。そして返事は私に任せると手紙には書かれていた」
……放任主義なのか子供の意志を尊重する主義なのか、どちらなのかは解らないけど本人達で解決出来そうなら後々面倒事にはならなそうだな。
「良いと思うぞ。ただ、その決闘で負けてしまったら身を引くんだろ。それでリーベは良いのか? アザルトに超惚れてるんだろ」
思い人にが自分ではない男にほぼ百パーセントと思いを寄せている、なんて分かったら気持ちがどんどん冷めていくのが普通だと思うが、それでもリーベの心は燃えている。
この状態でもまだ惚れているのだから、そう簡単に諦められる恋ではないだろ。
「……確かに俺はまだフィーラに惚れている。俺がフィーラのことを幸せにしたいと思っている……だが、やはりフィーラの気持ちを尊重しなければならいのかと思う部分もある」
「そう、かもな……その気持ちは確かに大切だ」
婚約者を雑に扱う男は糞野郎だと思うが、ここまで相手のことを考えて行動してるのに相手の気持ちが全く違う方向を向いてしまっている……うん、マジで可哀そうだと思う。
こんなにも良い男なのに……アザルトさんは全く見る目がないな。
「相手の気持ちも尊重はしたい。だがッ!!! 決闘に負けるつもりはない。しかし相手の実力に不安を感じるのも事実だ」
「そりゃ特待を勝ち取るほどの実力だもんな」
「そこでだ……リゼード、自分に稽古を付けて欲しい」
「えっ、と……魔弾の扱いを教えたら良いってことか?」
「それはそれで有難いが、実戦に近い稽古を望む。勿論、それによる報酬は払う。先払いは出来ないが、確実に払う!!!」
「そ、そうか。分かった、お前の熱意は十分に伝わった! だからちょっと落ち着け」
「す、すまない。少々熱くなり過ぎた」
いや、熱くなってしまうのはしょうがない。
その一戦で本来はこれからずっと自分の隣にいるかもしれない筈の人が、永遠に手の届かなくなるかもしれないんだ。
しかし俺が稽古、か……出来ないことはないと思うが、稽古をする期間にもよるよな。
「因みにだが、いつ頃に決闘を行おうと思ってるんだ?」
「一か月後に行おうと考えている」
「一か月後か……それなら一週間前ぐらいに本人に会って直接伝えよう。そうなれば相手が決闘に向けて準備する時間も短くなる。それに対して俺達は向こうより三週間も多く訓練を詰める。あと、一週間も猶予を与えれば向こうも理不尽だとは言わないだろ」
「……なるほど、確かにそうかもしれん。実力が高いだけではなく、策士でもあったか」
「そんな大層な考えじゃないよ。ちょっと悪知恵が働いただけだよ。とりあえず、面白そうってのもあるからお前からの依頼を受けるよ」
「感謝する、リゼード。この恩はきっちりと返す」
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