万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai

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砕いて砕く

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アサルトタイガーファング、氷魔法の上級に当たる攻撃魔法。
氷の虎が咆哮を上げながら獲物を食い千切る。

繰り出されたその攻撃に観客のテンションは最高潮にまで高まる。
上の席で観戦している貴族達もその魔法に感嘆の声を上げた。

「あの歳でまさかアサルトタイガーファングまで使えるとは……いやはや末恐ろしいな」

「流石は今年の一年生の中で最も魔法の腕が高い言われるだけのことはあるな」

「相手のロウレット公爵家の令嬢のパートナーである少年も属性魔法のアビリティが使えないながらも、上手く試合を運んでいたが……流石にあの攻撃を破ることは無理だろう」

貴族達は既にラガスの事を下に見ておらず、その実力を認めていた。
中にはやはり属性魔法が使えない者は貴族にあらずなど、しょうもない事を考えている者もいるが……そういった考えを持つ者は少ない。

だが、そんなラガスであってもアサルトタイガーファングを破ることは無理だろうという結論に至る。
アサルトタイガーファングは本人の意志による追尾機能があり、その速度は侮れるものでは無い。

「流石リザード家の令嬢だな。流石にお前のところの息子でもあれは防げ無いんじゃないのか?」

「さて、それはどうだろうな」

交流が深い貴族から声を掛けられたラガスの父親であるリットの表情はアサルトタイガーファングを見ても変わらない。

「俺の息子、娘たちは全員中々にぶっ飛んでいるが……そんな中でもあいつは別格だ。その証拠に、あいつは未だに剣を抜いていない」

「そういえばそうだな。でも、メインは素手による接近戦と魔弾じゃないのか?」

「さぁな、自分の目で確認しろ。面白いものが見られるぞ」

アイスランスを大きく削った時と同じ構えを取っているラガスにアサルトタイガーファングが一気に距離を縮め、その体を食い千切ろうとする。

だが、ラガスはその魔法に驚きながらも受けるつもりはさらさら無い。

「すぅーーーーー……喝ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」

気合一閃 音魔法のアビリティで得られる技であり、名の通り気合を入れて声を出すことで一定時間の間身体能力を向上させる。

しかし効果はそれだけでは無く、その声量の威力により全方向に強力な衝撃波を生み出し、特に前方に強い衝撃を与える。

会場でラガス以外の者が一斉に耳を塞ぐ。
その声は完全防備されている観客席にまで響いていた。

「おいおい、なんだこのバカデカい声は……もしかしてそういうアビリティを持ってるのか」

「想像に任せる。あんまり息子の秘密をばらす訳にはいかないんでな。ただ……もう勝負は決まったも同然だな」

観客席の最前列より少し内側には選手の技が観客に被害が及ばないように結界が施されている。
だがそれは音まで遮るようには造られておらず、審判の判断が少々遅れて特殊結界を張るように指示を出し……結果的に観客の鼓膜が破れる様な事態は起こらなかった。

しかし衝撃をモロに受けたアサルトタイガーファングが無事な訳が無く……崩れることは無かったがその衝撃により全体に罅が入り勢いが急速に衰えた。

そして音撃を纏ったジャブを四発放ち……その体が全て砕かれてしまった。

「な、なにが、起こって……」

音こそ聞こえているが、気合一閃の影響で視界が揺れており、目の前の状況をまともに確認出来ていなかった。
だが自分を当然襲った不安感により一先ず自身の身を守ろうと、自分を覆うようにアイスシールドを発動しようとする……が、それは既に手遅れだった。

気合一閃により身体強化が施され、それにプラスして身体強化のアビリティの使用。
それらによる速度強化はもはやイーリスの感覚や直感で捉えられるような速さでは無く……完全に接近を許してしまった。

そしてラガスは先程の構えた同じ状況からジャブを放つがイーリスの腹に当たる前にその拳をひっこめた。
しかしそれは攻撃を止めたという訳では無く、空を叩くことで衝撃波を生み出して攻撃していた。

その結果イーリスは自分に何が起こったのか直ぐには認識できないまま宙を飛び、リングの外へと落ちる。

リングの外に落ちてしまったという事だけは解り、必死でリングへと戻ろうとするイーリスだが、体のダメージは思っている以上に重く……無情にもテンカウントが過ぎ、試合の勝者はラガスへと決定した。
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