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理解しがたいその力
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審判の試合開始の合図と共にイーリスは小手調べとまずは無詠唱でアイスボールを放つ。
(あれだけ大口を叩くのだから、これぐらいはなんとか出来るでしょう)
放ったアイスボールは二つ。これだけでラガスを倒せるとは思っていない。
ただ、得た情報だけでラガスが戦う様子を見た事が無いイーリスは少しでも目で確認できる情報が欲しかった。
そして二つのアイスボールに対し、ラガスは……ただ躱す。
二つともなんてことない表情で躱した。
「おいおい、随分と遅いな。俺が全属性の適性が無いから……男爵家の四男だからって嘗めてるのか?」
「……たかがアイスボール二つを避けたぐらいで調子に乗らないで欲しいわね」
特に何も情報を得られなかった。
それならただ手数を増やせばいい。
魔法に特化したイーリスの魔力量はまだまだ余裕があり、今度はアイスボールを真ん中、上下左右から放つ。
(さぁ、これなら少しは手札を見せてくれるでしょう)
着弾時が全くズレない様に放たれたアイスボールは一瞬で五つを破壊するのがベストな攻略。
しかしラガスはその場から動かなかった。
「無詠唱は確かに凄いけど……これじゃあぁ~なぁ」
まずは左右のアイスボールを両手で受け止め、上真ん中下と迫るアイスボールをバク転の要領で蹴り飛ばす。
その攻略方法に観客のテンションは上がるが、その次のラガスの行動に観客達のテンションは更に湧く。
「おっ、らッ!!!!!」
「なっ!!??」
両手で掴んだアイスボールをそのままイーリスに向かってぶん投げた。
シュラの様に鬼火で相手のファイヤーランスを侵食し、完全に支配したわけでは無い。
だがそれでも完全に虚を突かれたイリスはアイスボールの制御に戸惑っていた。
それもその筈であり、ラガスは投げる瞬間にだけ腕力強化を使用し、その体からは考えられない程の速度でアイスボールを返した。
その腕力から放たれた豪球はイーリスの制御に反発する。
しかしその反発も未然に終わり、二つのアイスボールはイーリスから逸れて地面に激突する。
「……まぁ、そう上手くは行かないか」
「と、とんでもない馬鹿力ね」
「俺はシュラの主だ。これぐらいの攻撃なら、俺にも同じ事は出来るんだよ」
シュラと言う名前にイーリスは一瞬誰のことか分からなかったが、直ぐのその名前を思い出した。
先日のメイド執事部門の戦いで相手のファイヤーランスの支配権を奪ったという普通に考えればあり得ない荒業で勝負に勝った執事の名前。
(確か優勝した鬼人族の名前だったわね。確かにそれを考えればそれなりの脅威ね……だったらこれはどうかしら?)
「アイスフロア」
床を氷で凍らす。
それだけの技、運良く行けば相手の脚を止めることが出来るが、タイミングが合わなければそれは失敗に終わる。
しかしこの魔法の狙いはそこでは無く、相手を慣れないフィールドに連れ込む事だった。
(あなたの執事やメイドが氷魔法を使えるという情報は無い。それなら、このフィールドではまともに動けないでしょ!!!!)
ラガスに魔弾という遠距離攻撃があっても自分の方が優位に立つのは間違いない。
そう思っていたのだが……その考えはあっさりと砕かれてしまう。
「おらッ!!!」
アイスボールの時と同じく腕力強化のアビリティを使用して計四発、地面を殴りつけた。
するとその衝撃は地面に真っすぐ向かわず、周囲に分散していく。
そしてイーリスが作り出した氷のフィールドを一瞬にして砕いた。
この結果には流石のイーリスも固まってしまう。
(ひ、火の魔法で対抗してくるなら分かるけど、拳で私のアイスフロアを粉々にするなんて……どうなってるのよこいつの力は!?)
その思いはイーリスのものだけは無く、観客までもが思っていた。
決して大きくは無く、巨漢とは言えないその体から何故そこまでの力が出るのか。
アビリティの有無、レベルの差。
少し考えれば分かる要因だ。
ただそれでも、ラガスの体格や見た目を考えれば対戦相手のイーリスが、観客達がその力の理解出来ないのも無理は無い。
「おい……これで終わりか?」
だがその力は、ラガスにとってほんの一部でしかなかった。
(あれだけ大口を叩くのだから、これぐらいはなんとか出来るでしょう)
放ったアイスボールは二つ。これだけでラガスを倒せるとは思っていない。
ただ、得た情報だけでラガスが戦う様子を見た事が無いイーリスは少しでも目で確認できる情報が欲しかった。
そして二つのアイスボールに対し、ラガスは……ただ躱す。
二つともなんてことない表情で躱した。
「おいおい、随分と遅いな。俺が全属性の適性が無いから……男爵家の四男だからって嘗めてるのか?」
「……たかがアイスボール二つを避けたぐらいで調子に乗らないで欲しいわね」
特に何も情報を得られなかった。
それならただ手数を増やせばいい。
魔法に特化したイーリスの魔力量はまだまだ余裕があり、今度はアイスボールを真ん中、上下左右から放つ。
(さぁ、これなら少しは手札を見せてくれるでしょう)
着弾時が全くズレない様に放たれたアイスボールは一瞬で五つを破壊するのがベストな攻略。
しかしラガスはその場から動かなかった。
「無詠唱は確かに凄いけど……これじゃあぁ~なぁ」
まずは左右のアイスボールを両手で受け止め、上真ん中下と迫るアイスボールをバク転の要領で蹴り飛ばす。
その攻略方法に観客のテンションは上がるが、その次のラガスの行動に観客達のテンションは更に湧く。
「おっ、らッ!!!!!」
「なっ!!??」
両手で掴んだアイスボールをそのままイーリスに向かってぶん投げた。
シュラの様に鬼火で相手のファイヤーランスを侵食し、完全に支配したわけでは無い。
だがそれでも完全に虚を突かれたイリスはアイスボールの制御に戸惑っていた。
それもその筈であり、ラガスは投げる瞬間にだけ腕力強化を使用し、その体からは考えられない程の速度でアイスボールを返した。
その腕力から放たれた豪球はイーリスの制御に反発する。
しかしその反発も未然に終わり、二つのアイスボールはイーリスから逸れて地面に激突する。
「……まぁ、そう上手くは行かないか」
「と、とんでもない馬鹿力ね」
「俺はシュラの主だ。これぐらいの攻撃なら、俺にも同じ事は出来るんだよ」
シュラと言う名前にイーリスは一瞬誰のことか分からなかったが、直ぐのその名前を思い出した。
先日のメイド執事部門の戦いで相手のファイヤーランスの支配権を奪ったという普通に考えればあり得ない荒業で勝負に勝った執事の名前。
(確か優勝した鬼人族の名前だったわね。確かにそれを考えればそれなりの脅威ね……だったらこれはどうかしら?)
「アイスフロア」
床を氷で凍らす。
それだけの技、運良く行けば相手の脚を止めることが出来るが、タイミングが合わなければそれは失敗に終わる。
しかしこの魔法の狙いはそこでは無く、相手を慣れないフィールドに連れ込む事だった。
(あなたの執事やメイドが氷魔法を使えるという情報は無い。それなら、このフィールドではまともに動けないでしょ!!!!)
ラガスに魔弾という遠距離攻撃があっても自分の方が優位に立つのは間違いない。
そう思っていたのだが……その考えはあっさりと砕かれてしまう。
「おらッ!!!」
アイスボールの時と同じく腕力強化のアビリティを使用して計四発、地面を殴りつけた。
するとその衝撃は地面に真っすぐ向かわず、周囲に分散していく。
そしてイーリスが作り出した氷のフィールドを一瞬にして砕いた。
この結果には流石のイーリスも固まってしまう。
(ひ、火の魔法で対抗してくるなら分かるけど、拳で私のアイスフロアを粉々にするなんて……どうなってるのよこいつの力は!?)
その思いはイーリスのものだけは無く、観客までもが思っていた。
決して大きくは無く、巨漢とは言えないその体から何故そこまでの力が出るのか。
アビリティの有無、レベルの差。
少し考えれば分かる要因だ。
ただそれでも、ラガスの体格や見た目を考えれば対戦相手のイーリスが、観客達がその力の理解出来ないのも無理は無い。
「おい……これで終わりか?」
だがその力は、ラガスにとってほんの一部でしかなかった。
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