上 下
268 / 962

疑われるかもしれない

しおりを挟む
「明日はラガス君の番だけど、自信のほどはいかがかな?」

「……副騎士団長さんは俺の実力を解ってるので正直に言いますけど、個人とダブルスは負けるつもりは一切無いです」

既に自分の実力を解っている人に嘘を付いても無駄なので、正直に思っている事を伝える。

「うん、自信満々だね。確かにラガス君は底が知れない力を持っている。それを考えると……同年代の子たちは当然の様に、三年生であっても勝てる人はいなだろうね」

「ありがとうございます。ただ、自分程戦闘経験が多い学生もあまりいないかと。個人が持つ才も重要ですが、戦闘経験の有無でも大きく力の差は変わるかと」

「そうだね。正しい考えだ。戦闘経験の多さ、実戦の有無……それだけで個人の実力は本番に変動することがある」

どうやら本当に俺が優勝すると思ってくれているみたいだな。
レグラードさんの前では大した手札は見せていないんだけど……まっ、実力者ならある程度は解ってしまうものか。

「それで、今日の二人の様に瞬殺はしないのかい?」

「まぁ……そうですね。丁度良い小遣い稼ぎになりますから」

明日行われる大会でも賭けは行われる。
今日の大会でもある程度儲けたが、まだまだ儲けるつもりだ。

まだ世の中では俺がセルシアのパートナーということしか広まっていない筈。つまり俺の強さは広まっていない。
いや、大会に出られる時点である程度の実力はあると思われてしまうか?

ん~~~……まっ、そこまで他の学生と比べて差があるとは思われていないだろう。

「そうかもしれないね。なら僕も少し賭けさせてもらおうかな」

「……あんまり大金を賭けるとちょっとした問題になりそうですし、大胆な事はしないでくださいね」

「はっはっは、解ってるよ」

分かってくれてるな良いけど……でも、俺が勝ち続けたらもしかしたら八百長なのではと思う人が現れてもおかしく無いか?

貴族はそういった事を妄想するのが好きそうだしな。

「なにか不安そうな顔をしているね」

「顔に出てましたか?」

「ちょっとね。解決出来るかどうかは分からないけど、相談になら乗るよ」

「えっと……明日からの大会で俺が勝ち続けたら八百長じゃないかって言いだす人が現れるかもしれないと思って」

「あぁ~~~、確かに一定数そういった事を言い出す者達は現れるだろうね」

やっぱりか。どんなに俺が勝負に勝ち続けても俺の見た目が変わる訳じゃ無い。
自分の見た目が強そうな見た目をしていないという自覚はある。だから結果が真実だと認めない客が現れるのは仕方ないと思う。当然ムカつきはするけど。

ただ、それが原因で絡んでくるような人が現れると思うと……それは面倒なんだよな。

「でも、そこは安心して良いんじゃないかな。だって君のパートナーはセルシア・ロウレットだよ。その父であるロウレット公爵の権力は君が思っているよりも大きい。だからそこまで心配する必要は無いよ」

「そ、そうですか」

た、確かにそうか。公爵家だもんなぁ……うん、それを考えるとそこまで心配しなくても良いかと思えてきた。

「僕の立場上、あまり誰かに肩入れするのは良く無いのだけど、心の中でこっそり応援させてもらうよ」

「ありがとうございます。相手にもよりますが、見応えのある試合にしますよ」

「ふっふっふ、楽しみにしてるよ」

レグラードさんは俺との会話に満足してくれたのか、ご機嫌な様子で部屋から出ていった。
特に緊張するような会話内容でも無かったのだが、精神的に少し疲れたのでベットにダイブする。

「公爵家ってのは一つじゃ無いんだし、もしかしたらある程度腕のある奴と戦うかもな。でも、セルシアの実力は十分知ってるし、トーナメントでお互いに決勝で合う位置なら、相手は絶対にセルシアだろうな」

個人で戦う連中は全員一年生な訳だし……セルシアより強い一年生ってのは想像出来ないな。
貴族の世界に疎い俺だからしらない情報は多いけど……でも、相手が誰であれ勝てばいい話か。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

出会いと別れと復讐と

カザハナ
ファンタジー
数々の反則的能力を持つカルラはある目的の為、魔力で色合いや姿を偽り危険を承知で一人、子供姿で旅をしていたが、人拐いに拐われる。その時偶然知り合った神子〈みこ〉気質と呼ばれる真眼〈しんがん〉持ちの美少女ティファーラ(愛称ティファ)と出会った事で、彼女と彼女の連れである守護者達(美形三人組。ただしカルラにとって美形男はほぼ鬼門)に付き纏われてしまう話。 ※かなりダークな世界観の内容な為、人権無視な組織、内容、表現等多数出てきます。苦手な方はご注意下さい。そこまで書けるか自信はないですが、恋愛要素は後半にちょろっと出てくる予定です。ただし、ハッピーエンドとは呼べない終わり方をすると思います(ほぼ確定で)。ハッピーエンドでないと嫌だという人は回避した方がいいかもです。 ※不定期更新ですがご容赦下さい。 ※大体一話が1000文字前後で、プロローグと一話目は二つで1000文字程です。 ※一応R15にしてますが、主役のカルラの過去がかなりのダークさで、後々R18に変更する可能性もありますのでご注意下さい。 ※ファンタジー小説大賞で登録してます!投票宜しくお願いします!!

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...