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マジでやりやがった

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「ファイヤーランス!!!!」

シュラに自分の攻撃を真正面から受け止めるように挑発した執事が放った魔法はファイヤーランス。

難易度で言えば中級に当たる攻撃魔法だ。
そこそこ威力が高い魔法、相手の執事の年齢を考えれば……まぁ、上出来なのか?

持ってる杖はおそらく魔道具だろう。
その影響もあって強化されている。

威力も速さも申し分ない。

だが……その程度じゃ、シュラに一矢報いることすら無理だろうな。

「ふんッ!!!!」

あいつ……マジで両手で受け止めた。
勿論素手じゃない。両手には魔力が覆われている。

だが、だとしてもこの場にファイヤーランスを両手で受け止めると思っていた奴がいるか?
おそらくいないだろう。

俺だってその可能性はあるかもしれないと思っていだけど、多分殴って掻き消すのだろうと予想していた。

なのにシュラはマジでファイヤーランスを受け止めてしまった。
それは十分に凄い事だと思う。観客達もなんでそんなことが出来るんだって表情してるし。

何より対戦相手である魔法に特化した執事の表情が、もう……口をあんぐりと開けて固まってしまっている。
まぁ、自分の自信満々の攻撃を両手で受け止められてしまったらそういう表情になってもおかしく無いか。

ただ、そこからどうするんだ? 
確かに攻撃を受け止めることに成功したが、それをそのまま跳ね返せるわけでは無い。
ファイヤーランスの所有権は相手の執事が握っている訳だしな。

それは魔法特化の執事も解っている様で気を取り直して全力でファイヤーランスを押し進めようとしている。

「ただそれでもシュラが押されることは無い……って、まさか・・・・・・でも納得出来なくはない、か」

「シュラさんは今何をしようとしてるの?」

「ん~~~……簡単に言えば、浸食して上書きしようとしてるって言えば良いのか?」

「浸食して、上書き?」

「そうだ」

両手から鬼火を生み出し、徐々にファイヤーランスを浸食して支配権を奪おうとしている。
その証拠にファイヤーランスの色が徐々に変色している。

「そ、そんなことが可能なの?」

「さぁ、どうだろうな? そんな話聞いたこと無いけど……表情が徐々に変わっている対戦相手の執事を見れば、もしかしたら本当に所有権を奪われてるのかもしれないな」

赤かったファイヤーランスの色は少しずつ紅へと変わっていく。
そして全ての色が紅へと変わった時、シュラはファイヤーランスを両手で持つことを止め、片腕で持ち上げる。

「……あれだね、兎に角ヤバいね」

「そうだな。兎に角ヤバい、そして対戦相手の執事が可哀そうに思えてきた」

あれはもうファイヤーランスじゃない……鬼炎槍ってところか。
魔法特化の執事の奴固まって迎撃する詠唱する唱えられてない。

だが勝負は勝負だ。そんな事関係無いとばかりシュラの奴は鬼炎槍をぶん投げた。
身体強化系のアビリティは使ってない。だけど物を投げるという事は投擲に当てはまる。

つまり、放たれた鬼炎槍は投擲の効果を受けて速度は加速される。

思考が止まってしまっている執事がその攻撃に対処できる訳が無く……あっけなく鬼炎槍を喰らって場外に吹っ飛んだ。
そして同時に意識が切れてダウン。

勝者はシュラに決まった。

「あれが直ぐに出来るようになった魔法に特化した相手なら最悪の相手だよな」

「そう、かもな。とりあえず火魔法をメインに使う奴からすれば最悪だろう」

だが、それはファイヤーボールやランスの様に一つの塊として放つ攻撃に限る。
そうでない攻撃に関しては流石に支配できないだろうし、する暇も無いだろう。

でも……十分脅威になる技術ではある。

というか、流石に次の対戦相手からは油断せずに襲い掛かってくるだろうな。
まっ、それでもシュラの相手では無いだろうけど。
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