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目の前に集中

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「浮かない顔してるねラガス」

「そういうロックスは楽しそうだな」

「ほんの少しだけど自分が強くなってるって実感があるからね。ラガスは……やっぱり面倒事で悩んでるのかな?」

面倒事・・・・・・いや、面倒事と言ってしまうのはサルネさんに失礼だな。

「普通は羨ましい内容なんだと思う。ただ、俺にとっては困るって言う方が正しいか」

これからセルシアとロックス達と訓練を行った訓練室でサルネさんとの模擬戦を行う。

「ラガスの力でも解決するのは難しいって感じみたいだね」

「そうだなぁ……結果的に解決出来る内容では無いからな」

体術ではクレア姉さんより上。それにアリクが何度も負けている。
俺の方が素の身体能力は高い。でもそれだけで簡単に勝たしてはくれないだろう。

「ふふ、でもちょっと楽しそうな顔をしてるんじゃない?」

「そうか? ・・・・・・そうかもしれないな」

やっぱり、勝負をしてる瞬間は不思議な楽しさがあるからな。

「さて、結果がどうであろうと勝つ」

「さっきより良い顔してるよ」

なんとなく吹っ切れたからな。
顔は狙わないようにするけど、それ以外は手を抜かない。

訓練実に着き、既にギャラリーは揃っている。
メリルやシュラ、セルシア達にレックス先生ともう一人は……分からないな。
そしてクレア姉さん達三年生組。

アリクはいないみたいだな。

というか、俺がサルネさんと模擬戦を行うって話はアリクの奴にも話はいってると思うんだが、何もしてこなかったな。

もしてかしなくても俺がサルネさんに負けるって思ってるから全く接触してこなかったのか。

「あれ、やっぱりちょっと不機嫌?」

「いえ、サルネ先輩のせいではありません」

一応来る前に軽く準備運動はしているから今直ぐに始めても問題は無い。

「お互いに、始めても大丈夫そうだな」

「レックス先生が審判を務めるんですか?」

「おうよ!! こんな面白そうなイベントを俺が見逃すわけ無いだろ」

そりゃどうも。野次馬根性逞しいことで。

「んじゃ、お互い適当に離れて」

適当にって、ゆるゆるやな。
いや、とりあえず今は目の前の戦いにだけ集中しよう。

「・・・・・・始め!!!」

一気に、駆ける!!!

「ふんっ!!!!」

「ッウ!!??」

身体強化のアビリティを使って一気に距離を詰め、掌で吹き飛ばす。

「へ、へへっ!! やっぱり強いね!!!!」

それを難なく腕をクロスしてガードされた。
吹っ飛びはしたが、ダメージはそこまでなしか。

「今度はこっちの番!!!」

向こうも身体強化を使ってきたか。まったく、下手な相手なら頭と首がサヨナラしそうなストレートだ。

「いえいえ、まだ俺の番ですよ」

お互いに蹴りは繰り出さず、拳の応酬が続く。

ジャブを放てば細かいフットワークで躱され、左のボディが飛んでくる。
それを躱して左フックを放つが屈んで回避され、好機だと思って左足で蹴りを放てば屈んだ状態で後ろに飛んで躱される。

「シッ!!!!」

「ッ!!??」

それ出来るのかよ!!!
拳に魔力を纏い、それをパンチの速度で放つ攻撃、拳弾。

そんなもん考える人はそうそういないと思っていたから面食らったぞ。

「お返しです!!!」

「おわっ!!?? 君も、これ出来るんだね!!」

「魔力だけは結構あるんで、ねっ!!!」

接近戦から変わって今度は遠距離戦に変わる。
お互いに拳弾を放ち、それを躱すか相殺してまた拳弾を放つ。

一見ただの魔力の打ち合いに見えるが、拳の速度が乗った魔弾はそう簡単には躱せないし、相殺することも難しい。
なのにそれを難なくやってのけるのは素直に凄いと思う。

でもこの展開は長くは続かない。

「ッ、本当に魔力が多いんだね!」

「毎日使い続けて来たんで人並みよりは多いですよ!!」

種族の問題なんだろうけど、アマゾネスはそこまで魔力の総量が多くない。
だからこういった遠距離戦は長くは続かない。

「やっぱり、遠距離戦は、合わないね!!!!」

今度は闘気を纏っての接近戦か……望むところだ!!!
接近戦なら俺だって得意分野だ。

「ハッハッ!!! 良いね! 有難う!!! 私を格下に見ないでくれて!!!」

「クレア姉さんや、アリクを接近戦で圧勝する相手に、手は抜きませんよ!!!」

こっちも闘気を纏って応戦する。闘気を纏うだけで拳の質が変わる。
それにサルネさんのようなタイプは、闘気を扱う練度も高い筈。
猶更油断出来ないって話だ!!

ストレートも回し蹴りもアッパーも変則蹴りも殺す気で放っていない。
それでも完全に倒す気で繰り出しているが、当たるのもあるが紙一重で躱され、ダメージを流される攻撃が多い。
こっちも幾つか攻撃を貰っているけど、直撃はちょっと洒落ならない。

拳が闘気を纏っている影響もあるんだろうけど、とにかく硬い。
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