上 下
185 / 962

実力でも、気持でも負けたくない

しおりを挟む
ジークと戦い始めてから五分、それとも三分か?
それぐらいの時間が経ったと思う。

ジークの剣に力技は無く、技術で俺を崩そうとして来た。
それを俺は適度に受け、ダメージを喰らったふりをする。

ただ、俺もやられてばかりでは無く、偶に反撃をして数回ほど良い感じにダメージを与えている、と思う。

俺もジークもお互いに身体強化のアビリティを使用しているが、こっちは手加減をしている。
じゃないと一発でジークが終わるし。つか、やっぱり演技ってのは難しいな。

手数ではジークが押している。ただ、一発のダメージでは俺の方が上。
観客席に座っているギャラリーにはそんな様子に見えている筈だ。というか、いつの間にこんなにギャラリーが増えてんだよ。

つか、俺は全く息切れしておらず、ジークは方で息をしている。
この状況を見れば俺が有利って状況に見えなくもないよな。

それだと困るんだよな。
というか、こいつなんで剣術のアビリティは使うくせに、光魔法を使わないんだ?

確かに接近戦では詠唱破棄のアビリティを習得出来ていなかったら意味を為さないが、偶に距離を大きく取ってるんだから初級のライトボールぐらいは使えるだろ。
それとも剣で俺に勝つのに拘ってんのか?

別にそれをどうこう言うつもりは無いが、お前に残っている体力を考えれば流石に無理だろ。
自慢じゃないが、同学年で俺以上にスタミナを持っている奴はいないだろうし。

どうやって良い感じに終わらせるか・・・・・・悩む。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。どうやら、君はセルシアが興味を持つほどの、強さを持っているみたいだね」

「そうみたいだな」

こいつ、何か仕掛けてくるつもりだな。
森の中で何度も戦ったモンスター達が、最後にアクションを起こす前の面に似てる。

「でも、僕は・・・・・・ずっと、ずっと、ずっと!!! 彼女の隣に立つ事だけを考えて来た」

「そうか。俺は、どうすれば楽しい人生を送れるか考えて来た」

「だろうね。君からは確かな覇気を感じない。だから、だからこそ!! ・・・・・・僕は君に負けたくない。実力でも、気持でもだ!!!!」

おぉう、物凄い気迫だな。
そこまでしてセルシアと一緒になりたかったって事か?
まぁ、婚約者に釣り合う為に努力を重ねてきたのに突然知らない男に攫われたら腸煮えくり返るよな。

俺がお前の立場だったら同じ気持ちになる。そこは断言できる。

でもなぁ・・・・・・俺だって人生を楽しく生きる為に、誰でも出来る様な努力をしてきた訳じゃ無いんだよ。
何を繰り出すのかは知らんが、生半可な攻撃じゃ意味無いぞ。

「これで、終わりだ!!!!!」

おまっ、マジでか。
こいつ・・・・・・魔力と闘気を混ぜやがった。

まだまだ不完全で歪だが、魔闘気には変わりない。
それを、俺にぶっ放すってか。

意外と熱い奴だな。

「はぁあああああああああッ!!!!!!!」

放たれた魔闘気の刃が俺に直撃し、土埃が舞う。


side セルシア

「あれは、魔闘気」

「ですね。形は歪で不完全ですが魔闘気です」

セルシア達は観客席、では無くラガスが通った入り口で戦いを観戦している。
突然後ろから現れたセルシア達にロックスは驚き、どう対応して良いのか戸惑っていたが、結果直ぐに馴染んだ。

「へぇーー。あの坊ちゃん、態度だけじゃないのか」

「侯爵家の子息なのですから出来ても不思議ではないでしょう。ただ、それがラガス坊ちゃまの負ける要因にはなりませんが」

魔闘気を使えたところで、ラガスが負ける事は絶対にあり得ない。可能性は万に一も億に一も無くゼロ。
それはメリルとシュラにとって確信だった。

なぜ確信しているのか。理由は多くあるが、一つはラガスも扱えるからだ。
歪で不完全でなく、完全に一つになり完全な魔闘気を。

「うん、ラガスは、負けない」

セルシアはジークが数瞬であっても魔闘気を使った事に驚いた。
確かにジークは成長している。会う度に成長しているかもしれない。

それでも、ラガスに勝つイメージは一切浮かばない。

その証拠に、土埃が徐々に腫れると・・・・・・そこには無傷のラガスが立っていた。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...