上 下
64 / 962

だれかれ構わずでなく

しおりを挟む
もう少し声の大きさを落として話していた方が良かったな。

「ラガス坊ちゃま、どう対処いたしますか?」

「そうだな・・・・・・取りあえず相手の出方次第ってところだ」

さっきと同じように、普通は俺みたいなガキに上から目線で何か言われれば頭に来ても仕方がない。
ただ俺としては本当の事を言ったまでだから文句言われる筋合いはないんだよな。

「お前ら。何の用だ?」

「こんにちわっすノウガストさん。そこにいるガキが随分と知ったかぶったような事を言っていたんで現実を教えてやろうと思って」

「阿呆か、こっちの坊主はこっちの男爵の爵位を持つ方の息子さんだ。それにお前歳の差を考えろ。坊主とお前の間に幾つ歳の差があると思ってんだ」

オレガ男爵家の息子だって解ったとたん怖気着いたな。これが一般的な反応なんだろう。
てか、後半の部分は本気で同意する。俺と十の差は無いだろうが、見た目からして俺の倍ぐらいの歳の筈だ。
ノウガストさんの言う通り歳の差を考えて欲しいもんだ。寧ろガキの戯言だと思って聞き流して欲しいよ。

「で、でも! ノウガストさんはハンターは舐められてはいけないって言ってたじゃないですか!!!」

「ああ、ハンターとして生きてくなら相手になめられない様にしなきゃならねぇ。それは大事な事だ。でもな、だれかれ構わず強気な態度を取れって訳じゃねぇんだよ。言っとくが、男爵家とはいえお前みたいなまだ何も実績を持っていないハンター一人ぐらい消せる力ぐらいは持ってるんだぞ」

いや、別にそんな事はしませんよ。わざわざ権力や金を使って殺すぐらいなら実力でぶっ飛ばした方が気持ちいし。

「今ここにいる男爵様やその子息はそんな短気な性格をしていない方だから良かったが、悪い意味で貴族思考な奴だったら物理的な意味でお前らの首が飛んでたからな」

ノウガストさん、そんなにビビらせなくても。
でも・・・・・・言ってることはあながち間違ってもいないか。

「それとだ。知ったかぶってるんじゃなくて実際に知ってるんだよ。言っとくがこっちの坊主に後ろの嬢ちゃんに喧嘩売ろうなんて考えるなよ」

「そ、それは俺達がこいつらと戦って負けるって意味ですか。それともこいつが男爵の息子だからですか」

「・・・・・・両方だ」

いやいやいや、前半は目の前の三人の為にも否定しておいてあげましょうよノウガストさん。
ほらぁ・・・・・・拳握りしめながらむっちゃこっち睨み付けてるじゃないですか。
って後ろからも殺気!?

「お、おいメリル。変な気を起こすなよ」

「・・・・・・ラガス坊ちゃま。それは承知いたしかねます」

うっわ、メリルがガチでキレてるよ。
いや、俺の為に怒ってくれてるんだからそこは嬉しいよ。でもそこまで殺気を漏らさなくても・・・・・・ほら、父さんなんて今の状況に苦笑いしちゃってるし。

「だからお前ら、男爵様の息子さんにガン飛ばすなっての」

「け、けど!!! まだモンスターと戦ってもいないガキより俺らの方が弱いなんて、そんな事ある訳無いじゃないですか!!!!」

「そ、そうですよ!!! 俺らは確かにまだ新人の域を出ないですけど、温室育ちのガキに負ける程弱くはありません!!」

・・・・・・あぁ、まぁ普通はそう見えても可笑しくない。というよりもそう見えるのが普通か。
ただ、新人のハンター達の言葉を聞いてメリルの殺気が消える。
なんかきょとんとした表情になって、少ししたら小さく笑いだした。いや、父さんまで小さく笑ってるし。

「俺にはそう見えないんだがなぁ。下手したらお前らよりモンスターを殺す事に慣れてる筈、っと俺は思ってるんだが合ってるか坊主?」

「まぁ、間違ってはいないですよ」

家の中にいても別に楽しい事は無いからな。
肉が食えるモンスターを倒せば夕食のメニューが増えるし。

「ッーーーーー!!!!! ・・・・・・おい、そこのお前!!! 俺達と戦え!!!」

やっぱりそう来るよな。というか俺さっき戦ったばかりなんだが。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。 見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。 最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!? しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!? 剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶
ファンタジー
【シリアス悪役令嬢モノ(?)。分からないことがあるのは幸せだ】 ある日目覚めたらずっと大好きな乙女ゲーの、それも悪役令嬢のレヴィアナに転生していた。 全てが美しく輝いているセレスティアル・ラブ・クロニクルの世界。 ヒロインのアリシア視点ではなく未知のイベントに心躍らせる私を待っているのは楽しい世界……のはずだったが? 「物語」に翻弄されるレヴィアナの運命はいかに!? カクヨムで先行公開しています https://kakuyomu.jp/works/16817330668424951212

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...