41 / 140
第41話 狙うはその一体のみ
しおりを挟む
「さて、一日で見つかってくれると嬉しいんだけどな」
森に到着して、浅い場所で一晩過ごしたアストは慎重に……周囲の警戒を怠らないようにしながららも、早歩きで目的のモンスターを探す。
「ッ!!」
だが、最初に発見してしまったのはコボルトの上位種。
姿を確認したアストは直ぐに身を隠し、見つからないように……ゆっくりとその場から離れた。
(ふぅ~~。どうやら、ちゃんと効果は継続されてるみたいだな)
アストはスタミナ強化の指輪をしまし、今は匂い消臭の効果が付与された指輪タイプのマジックアイテムを装備していた。
コボルトの上位種の中でも、Dランクであれば問題無く葬れる。
Cランクの上位種であってもそこまで焦る必要はないほど、アストの戦闘力は高いのだが、あくまで今回の探索は狙っているモンスターの肉を手に入れる事。
それ以外の戦闘で魔力、スタミナを消費したくない。
それなりに金になるモンスターではあるが、今のアストは一ミリも興味がなく、避けられる戦闘は全て避けていく。
(チッ、中々見つからないな)
ネットスーパーで購入したサンドイッチを食べながら空腹を満たし……一度冷静になったアストは、今自分が森のどのあたりにいるのか気になり、適当な木を見つけて登る。
「……最奥はまだ先だが、予定より深いところまで来てしまったか?」
最奥ではないものの、現在アストが探索している場所は、過去にBランクモンスターが現れた例がそれなりにある。
(いや、確か単純な戦闘力に関しては、Bランクに迫っててもおかしくないんだったよな……出来れば普通の状態の方が…………って願うのは、一料理人として失格か? でも、冒険者としては間違ってない思考だよなぁ)
現在アストが欲しているモンスターは、基本的にCランクなのだが……戦えば戦う程、徐々にではあるが確実に強くなっていき……名前が変わらないにもかかわらず、Bランククラスの戦闘力を有する場合もある。
鑑定という相手の名前や所有スキルなどを視ることが出来る者たちからは、鑑定詐欺モンスターと呼ばれることもある。
そして過去にはAランククラスまで成長した個体が確認されており、幾人も犠牲になったが……討伐した者たちはそのモンスター肉を食べた瞬間、今まで自分たちが食べていた肉は腐っていたのでは……と錯覚するほどの美味さを体験した。
カクテル作りがメインではあるが、やはり一料理人としては気になってしまう味。
(……クソ、目的を切り替えた方が良いか?)
そろそろ探索をストップした方が良い時間であり、目が普通であるアストにとって、不利な環境へと変わってしまうほど、日が傾いていた。
まだ目的のモンスターを討伐することは全く諦めてはいないが、それでも万能で多才に思えるアストにも限度はある。
「しょうがない。早めに野営の準備を始めっ…………はぁ~~~。もう少し後か」
耳が悲鳴を聞き取った。
善人……と堂々と自分では言わないアストだが、同業者かもしれない者たちの悲鳴を聞いて、見ぬふりをする程……薄情ではなかった。
「ん? あの後ろ姿は……って、あの見た目!!!」
悲鳴が聞こえた地点付近で、見覚えのある後ろ姿と……自分が探していたであろうモンスターを発見。
(助ける、一択だな)
匂い消臭の指輪から、身体強化系の指輪を装着。
「下がれッ!!!!」
「「「「っ!?」」」」
全く知らない声が背後から聞こえた。
しかし後方から感じる魔力の大きさを信頼し、彼らは一斉に後方へ下がった。
「シッ!!!!!」
「っ!!!???」
放たれた攻撃は、特大の雷を纏った斬撃刃。
当れば……アストが狙っていたモンスターと言えど、重傷は避けられない。
だが、そのモンスターは巨体からは少々予想外の俊敏さで、雷の斬撃刃を回避した。
「おいおい、今のを躱すか」
「あ、あなたは……マスター!!!」
「どうやら、ご無事だったようですね、カイン様」
助っ人が学友の知り合い。
それを知った他の学生たちは一先ずほっと一安心するも、二人の互いの呼び方にも疑問を抱いた。
「それと、ここは店ではありません。気軽にアストとお呼びください!?」
助っ人が現れようとも、先程までカインたちが戦っていたモンスター……エイジグリズリーには関係無い。
ただ、今日狩る得物が一匹増えただけである。
(これは、完全にBランククラスに成長してるな。そっちの方が肉は美味しいらしいが……カイン様以外の学生が、全員動けるのが不幸中の幸いか)
いくらアストが歳不相応の実力を持っていても、怪我人を守りながらBランクのモンスターと戦うのは厳しい。
「カイン様。まだスタミナがある自分が、前に出て戦います。皆さまは、その隙を突いて強力な一撃を、叩き込んでください!!」
「っ、助かります!! お前たち、聞いたか!!!! 彼の言う通り、強烈な一撃を叩き込むことに集中するんだ!!!!」
リーダーであるカインの言葉に他三人は頷き、彼らにとって第二ラウンドが始まった。
森に到着して、浅い場所で一晩過ごしたアストは慎重に……周囲の警戒を怠らないようにしながららも、早歩きで目的のモンスターを探す。
「ッ!!」
だが、最初に発見してしまったのはコボルトの上位種。
姿を確認したアストは直ぐに身を隠し、見つからないように……ゆっくりとその場から離れた。
(ふぅ~~。どうやら、ちゃんと効果は継続されてるみたいだな)
アストはスタミナ強化の指輪をしまし、今は匂い消臭の効果が付与された指輪タイプのマジックアイテムを装備していた。
コボルトの上位種の中でも、Dランクであれば問題無く葬れる。
Cランクの上位種であってもそこまで焦る必要はないほど、アストの戦闘力は高いのだが、あくまで今回の探索は狙っているモンスターの肉を手に入れる事。
それ以外の戦闘で魔力、スタミナを消費したくない。
それなりに金になるモンスターではあるが、今のアストは一ミリも興味がなく、避けられる戦闘は全て避けていく。
(チッ、中々見つからないな)
ネットスーパーで購入したサンドイッチを食べながら空腹を満たし……一度冷静になったアストは、今自分が森のどのあたりにいるのか気になり、適当な木を見つけて登る。
「……最奥はまだ先だが、予定より深いところまで来てしまったか?」
最奥ではないものの、現在アストが探索している場所は、過去にBランクモンスターが現れた例がそれなりにある。
(いや、確か単純な戦闘力に関しては、Bランクに迫っててもおかしくないんだったよな……出来れば普通の状態の方が…………って願うのは、一料理人として失格か? でも、冒険者としては間違ってない思考だよなぁ)
現在アストが欲しているモンスターは、基本的にCランクなのだが……戦えば戦う程、徐々にではあるが確実に強くなっていき……名前が変わらないにもかかわらず、Bランククラスの戦闘力を有する場合もある。
鑑定という相手の名前や所有スキルなどを視ることが出来る者たちからは、鑑定詐欺モンスターと呼ばれることもある。
そして過去にはAランククラスまで成長した個体が確認されており、幾人も犠牲になったが……討伐した者たちはそのモンスター肉を食べた瞬間、今まで自分たちが食べていた肉は腐っていたのでは……と錯覚するほどの美味さを体験した。
カクテル作りがメインではあるが、やはり一料理人としては気になってしまう味。
(……クソ、目的を切り替えた方が良いか?)
そろそろ探索をストップした方が良い時間であり、目が普通であるアストにとって、不利な環境へと変わってしまうほど、日が傾いていた。
まだ目的のモンスターを討伐することは全く諦めてはいないが、それでも万能で多才に思えるアストにも限度はある。
「しょうがない。早めに野営の準備を始めっ…………はぁ~~~。もう少し後か」
耳が悲鳴を聞き取った。
善人……と堂々と自分では言わないアストだが、同業者かもしれない者たちの悲鳴を聞いて、見ぬふりをする程……薄情ではなかった。
「ん? あの後ろ姿は……って、あの見た目!!!」
悲鳴が聞こえた地点付近で、見覚えのある後ろ姿と……自分が探していたであろうモンスターを発見。
(助ける、一択だな)
匂い消臭の指輪から、身体強化系の指輪を装着。
「下がれッ!!!!」
「「「「っ!?」」」」
全く知らない声が背後から聞こえた。
しかし後方から感じる魔力の大きさを信頼し、彼らは一斉に後方へ下がった。
「シッ!!!!!」
「っ!!!???」
放たれた攻撃は、特大の雷を纏った斬撃刃。
当れば……アストが狙っていたモンスターと言えど、重傷は避けられない。
だが、そのモンスターは巨体からは少々予想外の俊敏さで、雷の斬撃刃を回避した。
「おいおい、今のを躱すか」
「あ、あなたは……マスター!!!」
「どうやら、ご無事だったようですね、カイン様」
助っ人が学友の知り合い。
それを知った他の学生たちは一先ずほっと一安心するも、二人の互いの呼び方にも疑問を抱いた。
「それと、ここは店ではありません。気軽にアストとお呼びください!?」
助っ人が現れようとも、先程までカインたちが戦っていたモンスター……エイジグリズリーには関係無い。
ただ、今日狩る得物が一匹増えただけである。
(これは、完全にBランククラスに成長してるな。そっちの方が肉は美味しいらしいが……カイン様以外の学生が、全員動けるのが不幸中の幸いか)
いくらアストが歳不相応の実力を持っていても、怪我人を守りながらBランクのモンスターと戦うのは厳しい。
「カイン様。まだスタミナがある自分が、前に出て戦います。皆さまは、その隙を突いて強力な一撃を、叩き込んでください!!」
「っ、助かります!! お前たち、聞いたか!!!! 彼の言う通り、強烈な一撃を叩き込むことに集中するんだ!!!!」
リーダーであるカインの言葉に他三人は頷き、彼らにとって第二ラウンドが始まった。
253
お気に入りに追加
717
あなたにおすすめの小説
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる