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第40話 自己責任
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「お、おぅ。そうだな」
学園の教師を辞め、確かにフランツは冒険者となった。
だが、三十五歳のルーキーという異色の新人であることに変わりはなかった。
「であれば、わざわざそこまで気にする必要はないかと」
「……先程までと言っている事が逆になってないか?」
どのパーティーに属そうとしても、失敗に終わるかもしれない可能性を伝えたアスト。
しかし、今度はわざわざそこまで気にする必要はないと口にした。
どういう事なのだと首を傾げるフランツだが、アストには……副業ではあれど、冒険者らしい考えというものが解っていた。
「フランツさんが後進の育成の為にと活動するのであればまだしも、フランツさんは今……心の底から冒険者としての活動を楽しみたいと思っているのですよね」
「あぁ、そうだ」
「であれば、そこまでルーキーや他の冒険者の今後の人生まで考える必要はありません。最低限のマナーというのは必要でしょうが……冒険者として活動する以上、全て自己責任」
「……その言葉も、聞いたことがあるな」
パーティーを組む以上、自己責任という言葉で当てはめるのは違うかもしれない。
しかし、フランツをパーティーに加入しても良いと決めた以上、それは彼ら彼女たちの責任。
フランツには決して、加入したパーティーを搔き乱そうなどという最低最悪の考えを持っている訳ではない。
「全てそうだとは言い切れませんが、冒険者として活動する以上、その覚悟を持って動かなければなりません。その覚悟は……フランツさんと同じく冒険者になったばかりのルーキーにもあります」
「戦闘の世界に足を踏み入れたばかりの子供がかい?」
「そうです。もっと正確に言うと、持っていないという言い訳は基本的に通じないと言うべきでしょうか」
「……なるほど」
騎士という、同じく戦闘を生業とする職業に就いていたフランツは、アストが何を言いたいのか直ぐに理解した。
「………………変に遠慮する方が、彼らに失礼というものか」
「個人的な意見ではありますが。しかし、途中加入で起こるかもしれない問題をなるべく避けたいのであれば、訳あってソロで活動している冒険者に声を掛けてみるのがよろしいかと」
「そうか……はは、そうだったな。一からパーティーを誰かとつくるのも、冒険者の醍醐味か」
「ソロの冒険者であれば、尚更フランツさんの様な既に戦闘経験が豊富な人とパーティーを組みたいと思うかと」
「へっへっへ、店主は人を褒めるのが上手いな~~」
全くもってコミュ障ではないフランツにとって、面識のない冒険者に声を掛けることはそこまで難しいことではなかった。
「お世辞ではありませんよ。ただ、ソロで活動している冒険者と固定パーティーを組むのであれば、その前に一通りその冒険者について調べた方がよろしいかと」
「もしかしたら黒い噂を持つ奴かもしれないからって事だな」
「黒い噂だけではなく、単に性格に難ありというだけかもしれませんが、性格というのはパーティーを組む上で非常に重要な要素です。そう言ったところも含めて、色々と調べた方がよろしいかと」
伝えたいと思ったことを全て伝え終えたフランツ。
その後もフランツは徐々にアルコール度数の高いカクテルを頼みながら、千鳥足一歩手前になるまでカクテルを呑み、料理を食べ、アストと話し続けた。
「……しゃあない。行くか」
フランツが客として訪れた日から数日後、アストは気になるモンスターが離れた場所にある森に生息しているという話を耳にした。
そのモンスターの素材は決してカクテルに使える素材ではないが、以前高級料理店で食べた料理の素材として使われていた。
バーテンダーであり、腕前的には料理人とも言えるアストとしては、是非とも倒して自分の物にしたい。
勿論……そのモンスターの素材は全て欲しい。
故に、他のパーティーと組むということは出来なかった。
つまり、ソロで数日間行動するということになる。
「ふぅ~~~~……っし!!!」
持久力強化の指輪を装備し、飛ばし過ぎてない程度のペースで走り出したアスト。
(そういえばフランツさん、あれから固定パーティーを組めたのかな? 基本的に性格は良いだろうし、戦闘力は申し分ない。多分剣だけじゃなくて、魔法も使えるだろうし……っていうか、俺の勘が正しかったら、多分結構オールラウンダーな気がするんだよな)
基本的な戦闘力に関しては……カクテルという超特殊、アストだけの唯一無二のスキルを除けば、フランツはアストよりも強い。
つまり、Bランクという冒険者たちにとって憧れの領域の一つに到達している冒険者であっても、フランツという欲しいと断言する。
(というか、フランツさんみたいな隊長経験? がある人とかなら、大型クランが欲してもおかしくないよな……まっ、本当の意味で冒険者人生を楽しみたいフランツさんなら断るだろうけど)
先日の客の事を気にしながらも走って走って走り続け……アストは一日も経たずに目的の森へと到着した。
学園の教師を辞め、確かにフランツは冒険者となった。
だが、三十五歳のルーキーという異色の新人であることに変わりはなかった。
「であれば、わざわざそこまで気にする必要はないかと」
「……先程までと言っている事が逆になってないか?」
どのパーティーに属そうとしても、失敗に終わるかもしれない可能性を伝えたアスト。
しかし、今度はわざわざそこまで気にする必要はないと口にした。
どういう事なのだと首を傾げるフランツだが、アストには……副業ではあれど、冒険者らしい考えというものが解っていた。
「フランツさんが後進の育成の為にと活動するのであればまだしも、フランツさんは今……心の底から冒険者としての活動を楽しみたいと思っているのですよね」
「あぁ、そうだ」
「であれば、そこまでルーキーや他の冒険者の今後の人生まで考える必要はありません。最低限のマナーというのは必要でしょうが……冒険者として活動する以上、全て自己責任」
「……その言葉も、聞いたことがあるな」
パーティーを組む以上、自己責任という言葉で当てはめるのは違うかもしれない。
しかし、フランツをパーティーに加入しても良いと決めた以上、それは彼ら彼女たちの責任。
フランツには決して、加入したパーティーを搔き乱そうなどという最低最悪の考えを持っている訳ではない。
「全てそうだとは言い切れませんが、冒険者として活動する以上、その覚悟を持って動かなければなりません。その覚悟は……フランツさんと同じく冒険者になったばかりのルーキーにもあります」
「戦闘の世界に足を踏み入れたばかりの子供がかい?」
「そうです。もっと正確に言うと、持っていないという言い訳は基本的に通じないと言うべきでしょうか」
「……なるほど」
騎士という、同じく戦闘を生業とする職業に就いていたフランツは、アストが何を言いたいのか直ぐに理解した。
「………………変に遠慮する方が、彼らに失礼というものか」
「個人的な意見ではありますが。しかし、途中加入で起こるかもしれない問題をなるべく避けたいのであれば、訳あってソロで活動している冒険者に声を掛けてみるのがよろしいかと」
「そうか……はは、そうだったな。一からパーティーを誰かとつくるのも、冒険者の醍醐味か」
「ソロの冒険者であれば、尚更フランツさんの様な既に戦闘経験が豊富な人とパーティーを組みたいと思うかと」
「へっへっへ、店主は人を褒めるのが上手いな~~」
全くもってコミュ障ではないフランツにとって、面識のない冒険者に声を掛けることはそこまで難しいことではなかった。
「お世辞ではありませんよ。ただ、ソロで活動している冒険者と固定パーティーを組むのであれば、その前に一通りその冒険者について調べた方がよろしいかと」
「もしかしたら黒い噂を持つ奴かもしれないからって事だな」
「黒い噂だけではなく、単に性格に難ありというだけかもしれませんが、性格というのはパーティーを組む上で非常に重要な要素です。そう言ったところも含めて、色々と調べた方がよろしいかと」
伝えたいと思ったことを全て伝え終えたフランツ。
その後もフランツは徐々にアルコール度数の高いカクテルを頼みながら、千鳥足一歩手前になるまでカクテルを呑み、料理を食べ、アストと話し続けた。
「……しゃあない。行くか」
フランツが客として訪れた日から数日後、アストは気になるモンスターが離れた場所にある森に生息しているという話を耳にした。
そのモンスターの素材は決してカクテルに使える素材ではないが、以前高級料理店で食べた料理の素材として使われていた。
バーテンダーであり、腕前的には料理人とも言えるアストとしては、是非とも倒して自分の物にしたい。
勿論……そのモンスターの素材は全て欲しい。
故に、他のパーティーと組むということは出来なかった。
つまり、ソロで数日間行動するということになる。
「ふぅ~~~~……っし!!!」
持久力強化の指輪を装備し、飛ばし過ぎてない程度のペースで走り出したアスト。
(そういえばフランツさん、あれから固定パーティーを組めたのかな? 基本的に性格は良いだろうし、戦闘力は申し分ない。多分剣だけじゃなくて、魔法も使えるだろうし……っていうか、俺の勘が正しかったら、多分結構オールラウンダーな気がするんだよな)
基本的な戦闘力に関しては……カクテルという超特殊、アストだけの唯一無二のスキルを除けば、フランツはアストよりも強い。
つまり、Bランクという冒険者たちにとって憧れの領域の一つに到達している冒険者であっても、フランツという欲しいと断言する。
(というか、フランツさんみたいな隊長経験? がある人とかなら、大型クランが欲してもおかしくないよな……まっ、本当の意味で冒険者人生を楽しみたいフランツさんなら断るだろうけど)
先日の客の事を気にしながらも走って走って走り続け……アストは一日も経たずに目的の森へと到着した。
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