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第9話 買えるけども
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「どうぞ」
「悪いな、アスト。うちのメンバーが無理言って」
「いえいえ。誰かにカクテルを振舞うのは楽しいので」
「そうか……それじゃ、有難く貰うな」
商人の男性も含めて全員の手に行き渡り、全員がまずは一口。
「っ!!?? ……美味い、な」
当然ながら、今回作った酒は、正確にはモクテルというノンアルコールのドリンク。
吞んでもアルコールの重さを感じることはない。
ただ……甘い。
甘みというのは、それだけで疲れた体に染み渡る。
「甘くて美味しいですね。それに、甘さの中にあるほのかな酸っぱさ……これもまた美味しい」
「うん、確かに良い酸っぱさだな。なんというか、すっきりしてるから後味が残らない」
「この様なドリンクを野営の最中に飲めるとは……ふふ、他の商人に自慢したら羨ましがられること間違いなしですね」
マックスや商人の男性たちは大絶賛。
Dランクの男女二人は、声にならない衝撃を受け、ちびちびとその味を楽しんでいた。
「これだけ美味いとあれだな。エールみたいにがっつりと呑む訳にはいかねぇな」
タンクの男もちびちびと、少しずつ口に入れてシンデレラの味を堪能する。
甘い飲み物。
まずこれが野営の最中に飲めるだけでも有難い。
加えて、アストが作ったモクテルは非常に冷えていた。
これもまた彼らの疲れた体を癒す要素となる。
そして……このドリンクに関して、アストはマックスたちに代金を請求しない。
先程、各ジュースが入った容器を見る限り、まだストックがあるのは解る。
しかし彼らにとっては貴重な飲み物という認識であり、これ以上タダで飲ませてくれと言うのは我儘が過ぎるというもの。
とはいえ、アストにとってパイナップルジュースやオレンジジュースは大して貴重な呑み物ではない。
レモンもまだまだたくさん買い置きしており、鮮度はネットスーパーの副次効果によって保たれている。
それでもアストはクソ鈍感で頭が回らない男ではなく、この世界にとってそれらがどれだけ貴重かは理解している。
だからこそ……最初の一杯こそ無料で提供したものの、彼らがもう一杯と頼むのであれば、さすがに金を取る。
(冒険者として、あまりお人好しと思われるのも困るからな)
移動の最中、アストが彼らにシンデレラを提供したのは、この日だけ。
だが、目的の街に到着した日の夜、アストが早速屋台を出して店を開くと、直ぐにマックスたちがやって来た。
「まずはシンデレラ? だったか。それは一杯ずつ頼む」
「かしこまりました」
Dランクの二人組も椅子に座っており、計五人分のシンデレラを提供。
そこからはマックスたち三人はメニューの中から知っているカクテル、もしくは知らないからこそ興味を持ったカクテルと料理を注文。
「よ、良く解らねぇから、任せても良いか」
「私も同じく」
「かしこまりました」
二人の好みなどを軽く訊き、三杯ほど楽しめるようにカクテルの度数を調整しながら作り始めた。
お通しにローストビーフを提供した後、マックスたちからの注文でアヒージョとドリアの調理に取り掛かる。
「…………当たり前と言えば当たり前なんだろうが、本当に慣れているんだな」
「野営で料理を担当してる立場としては、惚れ惚れする速さと丁寧さね」
前世の人生も含めて、アストはカクテルの制作だけに力を入れていた訳ではない。
バーでのバイトを始めてからは食材を購入して家で料理をする機会を得て……それまで料理など殆どしたことがなかったため、家族からは少々心配された、なんてこ事も
あった。
「お待たせしました。こちら、まずはアヒージョになります」
アヒージョの完成が、他のカクテルの制作を受けながらも、手際よくドリアの調理も進めていく。
「……アストが使ってるマジックアイテム。随分と珍しい物ね」
エルフの女性はマジックアイテムマニアではないが、アストが調理に使用している道具には、見覚えがない物が多い。
「冒険者として活動している中で知り合った錬金術師に、アイデアを提案して造ってもらったんですよ」
ネットスーパー……このスキルがあれば、調理に必要な器具は金さえあれば全て手に入る。
家電を使用するために必要な電気に関しても、ネットスーパー内で購入が可能。
ただ……そこまで色々と店で使用してしまうと、面倒なあれこれが広まってしまう。
そこを、別世界の日本という場所で育ったアスト(錬)にとって驚き大爆発の品であるマジックアイテムで再現しようという結論に至った。
マジックアイテムの内容がどうであれば、動力が魔力であれば、そういったマジックアイテムもあるんだな~とそこまで勘繰られることがなくなる。
「そうなの? それじゃあ…………いえ、なんでもないわ」
この世界にも著作権に近い権利が存在する為、マジックアイテムのアイデアを提案したのがアストであれば、それらのマジックアイテムが売れる度に、いくらかの金が懐に入ってくることになる。
「お待たせしました、ドリアです」
「美味しそうね」
ゲスい考えを頭の中から放棄し、ただ美味いカクテルと料理を味わうことだけに意識を向けた。
そしてマックスたちはアストの助言もあり、酔っ払って潰れることはなく、やや千鳥足になりながらも取った宿まで戻ることが出来た。
「悪いな、アスト。うちのメンバーが無理言って」
「いえいえ。誰かにカクテルを振舞うのは楽しいので」
「そうか……それじゃ、有難く貰うな」
商人の男性も含めて全員の手に行き渡り、全員がまずは一口。
「っ!!?? ……美味い、な」
当然ながら、今回作った酒は、正確にはモクテルというノンアルコールのドリンク。
吞んでもアルコールの重さを感じることはない。
ただ……甘い。
甘みというのは、それだけで疲れた体に染み渡る。
「甘くて美味しいですね。それに、甘さの中にあるほのかな酸っぱさ……これもまた美味しい」
「うん、確かに良い酸っぱさだな。なんというか、すっきりしてるから後味が残らない」
「この様なドリンクを野営の最中に飲めるとは……ふふ、他の商人に自慢したら羨ましがられること間違いなしですね」
マックスや商人の男性たちは大絶賛。
Dランクの男女二人は、声にならない衝撃を受け、ちびちびとその味を楽しんでいた。
「これだけ美味いとあれだな。エールみたいにがっつりと呑む訳にはいかねぇな」
タンクの男もちびちびと、少しずつ口に入れてシンデレラの味を堪能する。
甘い飲み物。
まずこれが野営の最中に飲めるだけでも有難い。
加えて、アストが作ったモクテルは非常に冷えていた。
これもまた彼らの疲れた体を癒す要素となる。
そして……このドリンクに関して、アストはマックスたちに代金を請求しない。
先程、各ジュースが入った容器を見る限り、まだストックがあるのは解る。
しかし彼らにとっては貴重な飲み物という認識であり、これ以上タダで飲ませてくれと言うのは我儘が過ぎるというもの。
とはいえ、アストにとってパイナップルジュースやオレンジジュースは大して貴重な呑み物ではない。
レモンもまだまだたくさん買い置きしており、鮮度はネットスーパーの副次効果によって保たれている。
それでもアストはクソ鈍感で頭が回らない男ではなく、この世界にとってそれらがどれだけ貴重かは理解している。
だからこそ……最初の一杯こそ無料で提供したものの、彼らがもう一杯と頼むのであれば、さすがに金を取る。
(冒険者として、あまりお人好しと思われるのも困るからな)
移動の最中、アストが彼らにシンデレラを提供したのは、この日だけ。
だが、目的の街に到着した日の夜、アストが早速屋台を出して店を開くと、直ぐにマックスたちがやって来た。
「まずはシンデレラ? だったか。それは一杯ずつ頼む」
「かしこまりました」
Dランクの二人組も椅子に座っており、計五人分のシンデレラを提供。
そこからはマックスたち三人はメニューの中から知っているカクテル、もしくは知らないからこそ興味を持ったカクテルと料理を注文。
「よ、良く解らねぇから、任せても良いか」
「私も同じく」
「かしこまりました」
二人の好みなどを軽く訊き、三杯ほど楽しめるようにカクテルの度数を調整しながら作り始めた。
お通しにローストビーフを提供した後、マックスたちからの注文でアヒージョとドリアの調理に取り掛かる。
「…………当たり前と言えば当たり前なんだろうが、本当に慣れているんだな」
「野営で料理を担当してる立場としては、惚れ惚れする速さと丁寧さね」
前世の人生も含めて、アストはカクテルの制作だけに力を入れていた訳ではない。
バーでのバイトを始めてからは食材を購入して家で料理をする機会を得て……それまで料理など殆どしたことがなかったため、家族からは少々心配された、なんてこ事も
あった。
「お待たせしました。こちら、まずはアヒージョになります」
アヒージョの完成が、他のカクテルの制作を受けながらも、手際よくドリアの調理も進めていく。
「……アストが使ってるマジックアイテム。随分と珍しい物ね」
エルフの女性はマジックアイテムマニアではないが、アストが調理に使用している道具には、見覚えがない物が多い。
「冒険者として活動している中で知り合った錬金術師に、アイデアを提案して造ってもらったんですよ」
ネットスーパー……このスキルがあれば、調理に必要な器具は金さえあれば全て手に入る。
家電を使用するために必要な電気に関しても、ネットスーパー内で購入が可能。
ただ……そこまで色々と店で使用してしまうと、面倒なあれこれが広まってしまう。
そこを、別世界の日本という場所で育ったアスト(錬)にとって驚き大爆発の品であるマジックアイテムで再現しようという結論に至った。
マジックアイテムの内容がどうであれば、動力が魔力であれば、そういったマジックアイテムもあるんだな~とそこまで勘繰られることがなくなる。
「そうなの? それじゃあ…………いえ、なんでもないわ」
この世界にも著作権に近い権利が存在する為、マジックアイテムのアイデアを提案したのがアストであれば、それらのマジックアイテムが売れる度に、いくらかの金が懐に入ってくることになる。
「お待たせしました、ドリアです」
「美味しそうね」
ゲスい考えを頭の中から放棄し、ただ美味いカクテルと料理を味わうことだけに意識を向けた。
そしてマックスたちはアストの助言もあり、酔っ払って潰れることはなく、やや千鳥足になりながらも取った宿まで戻ることが出来た。
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