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八十八話 バカから真面目に
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SIDE フーネス
「ふっ!!! はっ!!!!」
訓練場で淡々と素振りを繰り返すクランドの兄、フーネス。
周辺には大量の水……汗が零れており、どれだけ長時間素振りを行っているのかが窺える。
「フーネス、そろそろ休憩しなさい」
「……まだだ」
「まだだ、じゃないわよ!! 休憩するのも訓練のうちって言うでしょ!」
再度訓練場を訪れたフーネスの同級生である女子生徒は、少し強めの口調で休憩するように伝える。
「あいつは、常に上を目指し、歩んでいる」
先日、フーネスの耳に一つの情報が入ってきた。
それは……弟であるクランドが通常種のワイバーンを倒しただけではなく、Bランクの希少種のワイバーンをソロで討伐したというもの。
フーネスは、Cランクモンスターが相手であれば、一人で倒せる自信を持っている。
しかし、Bランクという難敵が相手では、上手く頭の中で自身の勝利をイメージ出来ない。
そんな難敵を弟は従者であるリーゼの力を借りず、一人で倒した。
(ロニアス兄さんは遥か上。アスクの奴もきっちり前に進んでる……俺だけ、止まってる訳にはいかねぇ!!)
同級生の声を無視し、再び槍を振るう。
「ちょっと! 私の話聞いてるの!?」
「フーネス、リナの声を少しは聞いても良いんじゃないか?」
女子生徒だけではなく、ロニアスに似た爽やかイケメン系の男子生徒も、フーネスの身を案じて休憩するように伝える。
「のんびりしてたら、置いてかれるだろ」
「ふぅ~~~。向上心が高いのは良いことだけど、無理し過ぎて怪我をすれば、更に置いてかれるよ」
爽やかイケメン君……ナッシュはフーネスの言葉に、それはこちらのセリフだと言いたげな顔をしていた。
「それに、偶には寄り道することも、強くなる道に繋がるじゃないか」
「…………」
学園内で敬意を持つ元騎士が、生徒たちに向けて伝えた言葉。
その言葉を言われると、フーネスとしても一旦止まらざるを得ない。
「あんたの弟が凄いのは解かる。でも、フーネスはフーネスじゃない。そこまで比べる必要はないでしょ」
リナは学生による大会が行われた後に急遽行われた、エキシビションマッチの内容を覚えている。
準優勝者との差が、過去最高と言われるほどの戦闘力を持つ傑物、ブラハム・ダグレス。
それなりに自身の力に自信を持つフーネスも、彼に敵わないと断言してしまう強者。
そんな絶対王者を相手に……クランドは奇襲に近い戦法ではあったものの、圧倒的と言える戦況で勝利を収めた。
「そういうのは、関係ねぇ。俺は……胸を張れるために、強くならなきゃいけねぇんだよ」
二人に言われた通り、一旦訓練を止めたフーネスだが、放っておけばまた直ぐに訓練を再開するのは目に見えた雰囲気を放つ。
圧倒的な才を持つ兄。
飛び抜けた異才弟。
そして、自分と似た……しかし、確実に自分をお脅かす才を持つ、もう一人の弟。
ライバル視すべき相手は他家の者たちにもいる。
しかし……現ライガー家当主のオルガの息子であることも含め、胸を張って自分は彼らの家族だと言える強さを欲する。
「……クランド君は、奇襲に近い戦法で勝ったって噂してる人たちもいるのに、そこまであたなが焦るの?」
「奇襲、な……あいつは、念には念をと考えて何かしらの奥の手を使っただけだ。やろうと思えば、真っ向勝負からでもあの怪物を倒せたはずだ」
弟を下げるのに近い発言をした友人を睨むことはなく、冷静に自分が知っている弟の実力を思い出し、リナの言葉を否定した。
「それはさすがに過大評価なんじゃないかい?」
「百パーセントクランドの奴が勝つとは言わねぇよ。ただ、お前らもあいつの身体能力の高さを見ただろ」
「「……」」
ハンティングフィールドという、超特殊な結界は使った。
しかし、紛れもなくブラハム・ダグラスを追い詰めたのは、極限まで高められた身体能力。
「あいつの武器は素手。一見不利に思えるかもしれねぇが、長年その戦闘スタイルで戦い続けてきたからこそ、敵の間合いを潜り抜け、懐に入り込むのが上手い」
「ん~~~……ということは、大体七割から六割ぐらい、ってところかな」
「そうだな。だが、だとしてもあいつには、真正面からあの怪物に勝てる力がある」
希少種のワイバーンをソロで倒したという情報を耳にし、更に「もっと強くならないと」という思いが加速する。
とはいえ、自身の限界ギリギリが全く解らない程、フーネスもバカではなくなった。
「まっ、少しぐらいはお前らの用に付き合うのもありか」
「言ったわね! それじゃ、直ぐに汗ふいて着替えてきなさい!!! スイーツを食べに行くわよ!!!」
「スイーツ? そこは肉じゃねぇのかよ」
「肉なんていつでも食べられるでしょ! ほら、早く着替えてらっしゃい!!」
背中を押す友人に、分かった分かったと言いながら更衣室へ向かうフーネス。
かつてのバカ過ぎる彼は消えていた……が、少々我が強い強さに真面目な男に変わっていた。
(来年での大会は、ぜってぇに俺が貰う)
仕方なく休憩してやると言いながらも、頭の中は相変わらずなままだったが……友人二人も、さすがに頭の中で何を考えているのかまでは解らなかった。
「ふっ!!! はっ!!!!」
訓練場で淡々と素振りを繰り返すクランドの兄、フーネス。
周辺には大量の水……汗が零れており、どれだけ長時間素振りを行っているのかが窺える。
「フーネス、そろそろ休憩しなさい」
「……まだだ」
「まだだ、じゃないわよ!! 休憩するのも訓練のうちって言うでしょ!」
再度訓練場を訪れたフーネスの同級生である女子生徒は、少し強めの口調で休憩するように伝える。
「あいつは、常に上を目指し、歩んでいる」
先日、フーネスの耳に一つの情報が入ってきた。
それは……弟であるクランドが通常種のワイバーンを倒しただけではなく、Bランクの希少種のワイバーンをソロで討伐したというもの。
フーネスは、Cランクモンスターが相手であれば、一人で倒せる自信を持っている。
しかし、Bランクという難敵が相手では、上手く頭の中で自身の勝利をイメージ出来ない。
そんな難敵を弟は従者であるリーゼの力を借りず、一人で倒した。
(ロニアス兄さんは遥か上。アスクの奴もきっちり前に進んでる……俺だけ、止まってる訳にはいかねぇ!!)
同級生の声を無視し、再び槍を振るう。
「ちょっと! 私の話聞いてるの!?」
「フーネス、リナの声を少しは聞いても良いんじゃないか?」
女子生徒だけではなく、ロニアスに似た爽やかイケメン系の男子生徒も、フーネスの身を案じて休憩するように伝える。
「のんびりしてたら、置いてかれるだろ」
「ふぅ~~~。向上心が高いのは良いことだけど、無理し過ぎて怪我をすれば、更に置いてかれるよ」
爽やかイケメン君……ナッシュはフーネスの言葉に、それはこちらのセリフだと言いたげな顔をしていた。
「それに、偶には寄り道することも、強くなる道に繋がるじゃないか」
「…………」
学園内で敬意を持つ元騎士が、生徒たちに向けて伝えた言葉。
その言葉を言われると、フーネスとしても一旦止まらざるを得ない。
「あんたの弟が凄いのは解かる。でも、フーネスはフーネスじゃない。そこまで比べる必要はないでしょ」
リナは学生による大会が行われた後に急遽行われた、エキシビションマッチの内容を覚えている。
準優勝者との差が、過去最高と言われるほどの戦闘力を持つ傑物、ブラハム・ダグレス。
それなりに自身の力に自信を持つフーネスも、彼に敵わないと断言してしまう強者。
そんな絶対王者を相手に……クランドは奇襲に近い戦法ではあったものの、圧倒的と言える戦況で勝利を収めた。
「そういうのは、関係ねぇ。俺は……胸を張れるために、強くならなきゃいけねぇんだよ」
二人に言われた通り、一旦訓練を止めたフーネスだが、放っておけばまた直ぐに訓練を再開するのは目に見えた雰囲気を放つ。
圧倒的な才を持つ兄。
飛び抜けた異才弟。
そして、自分と似た……しかし、確実に自分をお脅かす才を持つ、もう一人の弟。
ライバル視すべき相手は他家の者たちにもいる。
しかし……現ライガー家当主のオルガの息子であることも含め、胸を張って自分は彼らの家族だと言える強さを欲する。
「……クランド君は、奇襲に近い戦法で勝ったって噂してる人たちもいるのに、そこまであたなが焦るの?」
「奇襲、な……あいつは、念には念をと考えて何かしらの奥の手を使っただけだ。やろうと思えば、真っ向勝負からでもあの怪物を倒せたはずだ」
弟を下げるのに近い発言をした友人を睨むことはなく、冷静に自分が知っている弟の実力を思い出し、リナの言葉を否定した。
「それはさすがに過大評価なんじゃないかい?」
「百パーセントクランドの奴が勝つとは言わねぇよ。ただ、お前らもあいつの身体能力の高さを見ただろ」
「「……」」
ハンティングフィールドという、超特殊な結界は使った。
しかし、紛れもなくブラハム・ダグラスを追い詰めたのは、極限まで高められた身体能力。
「あいつの武器は素手。一見不利に思えるかもしれねぇが、長年その戦闘スタイルで戦い続けてきたからこそ、敵の間合いを潜り抜け、懐に入り込むのが上手い」
「ん~~~……ということは、大体七割から六割ぐらい、ってところかな」
「そうだな。だが、だとしてもあいつには、真正面からあの怪物に勝てる力がある」
希少種のワイバーンをソロで倒したという情報を耳にし、更に「もっと強くならないと」という思いが加速する。
とはいえ、自身の限界ギリギリが全く解らない程、フーネスもバカではなくなった。
「まっ、少しぐらいはお前らの用に付き合うのもありか」
「言ったわね! それじゃ、直ぐに汗ふいて着替えてきなさい!!! スイーツを食べに行くわよ!!!」
「スイーツ? そこは肉じゃねぇのかよ」
「肉なんていつでも食べられるでしょ! ほら、早く着替えてらっしゃい!!」
背中を押す友人に、分かった分かったと言いながら更衣室へ向かうフーネス。
かつてのバカ過ぎる彼は消えていた……が、少々我が強い強さに真面目な男に変わっていた。
(来年での大会は、ぜってぇに俺が貰う)
仕方なく休憩してやると言いながらも、頭の中は相変わらずなままだったが……友人二人も、さすがに頭の中で何を考えているのかまでは解らなかった。
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