50 / 92
五十話 そういうのに憧れる
しおりを挟む
Dランクの昇格試験を受ける前に、ルーキーを襲っていた盗賊を全滅させた。
その情報を聞いたギルドの上層部は、クランドにDランク昇格試験を受けさせるべきか迷っていた。
基本的に、Dランクへの昇格試験は、盗賊団の討伐。
冒険者として活動していれば、いずれ盗賊という存在そのものが害である者たちと戦う時が来る。
冒険者人生を送る上で、必ず乗り越えなければならない壁。
なので、上のランクに上がる際の試験となる。
しかし……襲われていた女性冒険者たちを助けるために、盗賊五人を倒したのではなく、殺した。
助けられた女性冒険者から証言を得ている。
そのため、ギルド内でクランドにわざわざ試験を受けさせる必要はないという声が上がるのも必然。
そして、その話題は冒険者たちに伝わっていた。
「まっ、Dランクのモンスターを倒せるんだから、当然と言えば当然か」
「貴族の子供なんだろ。それなら、ガキの頃から盗賊に襲われる経験があってもおかしくねぇか」
「冒険者になる前に、人を殺れるようになってるってのは驚きだが……普通じゃない強さを考えれば、経験があってもおかしくねぇか」
ベテランたちの間では、驚くべき内容ではあるが、クランドならおかしくないといった認識。
ルーキーを卒業したDランクの比較的若い者たちも、先日の規模が大きい討伐戦で、クランドの強さをその眼で確認している為、誰もおかしいとは思わなかった。
とはいえ、当然不満を持つ者たちがいる。
同じルーキー……クランドと同じ同性の冒険者たちにとっては、非常に気に食わない。
最初からリーゼの様な美人を仲間にしており、直ぐに先輩たちから認められ、特別扱いされる。
先輩たちから説教を食らい、嫉妬し続けても無意味だと説かれた。
解らなくもないが、そう簡単に心は納得しない。
ただ、今回はクランドに助けられた女性冒険者たちが、どれだけクランドが凄かったのかを、同じルーキーたちに広めていた。
彼女たちも最初こそ、貴族だから苦労せず良いスタートを切れているのだと思っていたが、蓋を開けてみれば、盗賊たちから無償で助けてくれた。
それどころか、自分たちの将来を考え、お節介まで焼いてくれた。
お節介の内容はさておき、無償で助けてたことに関して……話を聞いた同じ女性冒険者たちは、当然の様に手のひらを返し始めた。
自分たちが殺されそう、もしくは攫われそうになったところに、颯爽と現れて救ってくれた。
冒険者という荒いイメージがある職業に就いているが、そういうシチュエーションを夢見る者はそれなりにいる。
そしてクランドが実際にそれを行たとなれば、必然的に株が上がるのも当然だった。
そうなってくると……余計にクランドの事が気に入らないと感じるのは、男のルーキーたち。
超美人な仲間を連れているだけではなく、自分たち同期の異性たちの関心まで引いてしまう。
クランドにそのつもりはないが、結果的にそうなってしまった事実は変わらない。
「そろそろ決闘でも申し込まれそうですね」
「俺も同じことを考えてたよ。でもさ、俺に決闘を申し込んできたところで、何か変わると思うか?」
「何も変わらないかと。クランド様に勝てたのであれば、状況は大なり小なり変わると思いますが、それは絶対にあり得ません」
「万が一にも、とかじゃないんだな」
「勿論です。上から目線の言葉にはなりますが、一般的なルーキーがクランド様に勝つなど、天地がひっくり返ってもあり得ません」
ハッキリと断言するクランド。
現在二人は宿の食堂で夕食を食べており、宿のランク的に同じランク帯の冒険者はいない。
内容は完全に彼らに喧嘩を売るものだが、クランドの実力を少しでも知る者であれば、その言葉は否定出来ない。
「クランド様に、Dランクへの昇格試験を受ける必要がないという話が上がるのも、当然の結果かと」
「……」
褒められるのは嬉しい。
そして実力的にはその考えが間違っていないので、否定も出来なかった。
「でも、このままいくとリーゼだけが昇格試験を受けることになるよな……適当に見つけて殺るか?」
「運良く見つかると良いですが……探してみる価値はありそうですね」
恐ろしい会話をしているが、二人は至って平常運転。
リーゼが倒したと、どう証明する? という問題点もあるが、そこは既に解決案がある。
そこで二人は二日後、本当に盗賊団のアジトを探し始め……一週間後にアジトを発見。
本当に運が良く、先日クランドが殺した盗賊たちが所属していた団であったため、人数は六人と少なく、二人でも討伐可能な範囲。
リーゼの攻撃魔法で先制を取り、戦闘は五分も経たずに終了。
三人は攻撃魔法で殺し、もう一人は双剣を使用して討伐。
残り二人はクランドが狩り、彼らが隠し持っていたお宝なども含め、その場から持ち去った。
二人から報告を聞いた門兵は、先日と同じ様に慌てて冒険者ギルドに向かい、報告。
そしてその報告を聞いた酒盛り中の冒険者たちは、再びエールを吹き出してしまう。
即上層部にも伝わり、盗賊の死体を調べた結果も踏まえ、二人を昇格試験を受けなしでDランクにランクアップさせることが決定した。
その情報を聞いたギルドの上層部は、クランドにDランク昇格試験を受けさせるべきか迷っていた。
基本的に、Dランクへの昇格試験は、盗賊団の討伐。
冒険者として活動していれば、いずれ盗賊という存在そのものが害である者たちと戦う時が来る。
冒険者人生を送る上で、必ず乗り越えなければならない壁。
なので、上のランクに上がる際の試験となる。
しかし……襲われていた女性冒険者たちを助けるために、盗賊五人を倒したのではなく、殺した。
助けられた女性冒険者から証言を得ている。
そのため、ギルド内でクランドにわざわざ試験を受けさせる必要はないという声が上がるのも必然。
そして、その話題は冒険者たちに伝わっていた。
「まっ、Dランクのモンスターを倒せるんだから、当然と言えば当然か」
「貴族の子供なんだろ。それなら、ガキの頃から盗賊に襲われる経験があってもおかしくねぇか」
「冒険者になる前に、人を殺れるようになってるってのは驚きだが……普通じゃない強さを考えれば、経験があってもおかしくねぇか」
ベテランたちの間では、驚くべき内容ではあるが、クランドならおかしくないといった認識。
ルーキーを卒業したDランクの比較的若い者たちも、先日の規模が大きい討伐戦で、クランドの強さをその眼で確認している為、誰もおかしいとは思わなかった。
とはいえ、当然不満を持つ者たちがいる。
同じルーキー……クランドと同じ同性の冒険者たちにとっては、非常に気に食わない。
最初からリーゼの様な美人を仲間にしており、直ぐに先輩たちから認められ、特別扱いされる。
先輩たちから説教を食らい、嫉妬し続けても無意味だと説かれた。
解らなくもないが、そう簡単に心は納得しない。
ただ、今回はクランドに助けられた女性冒険者たちが、どれだけクランドが凄かったのかを、同じルーキーたちに広めていた。
彼女たちも最初こそ、貴族だから苦労せず良いスタートを切れているのだと思っていたが、蓋を開けてみれば、盗賊たちから無償で助けてくれた。
それどころか、自分たちの将来を考え、お節介まで焼いてくれた。
お節介の内容はさておき、無償で助けてたことに関して……話を聞いた同じ女性冒険者たちは、当然の様に手のひらを返し始めた。
自分たちが殺されそう、もしくは攫われそうになったところに、颯爽と現れて救ってくれた。
冒険者という荒いイメージがある職業に就いているが、そういうシチュエーションを夢見る者はそれなりにいる。
そしてクランドが実際にそれを行たとなれば、必然的に株が上がるのも当然だった。
そうなってくると……余計にクランドの事が気に入らないと感じるのは、男のルーキーたち。
超美人な仲間を連れているだけではなく、自分たち同期の異性たちの関心まで引いてしまう。
クランドにそのつもりはないが、結果的にそうなってしまった事実は変わらない。
「そろそろ決闘でも申し込まれそうですね」
「俺も同じことを考えてたよ。でもさ、俺に決闘を申し込んできたところで、何か変わると思うか?」
「何も変わらないかと。クランド様に勝てたのであれば、状況は大なり小なり変わると思いますが、それは絶対にあり得ません」
「万が一にも、とかじゃないんだな」
「勿論です。上から目線の言葉にはなりますが、一般的なルーキーがクランド様に勝つなど、天地がひっくり返ってもあり得ません」
ハッキリと断言するクランド。
現在二人は宿の食堂で夕食を食べており、宿のランク的に同じランク帯の冒険者はいない。
内容は完全に彼らに喧嘩を売るものだが、クランドの実力を少しでも知る者であれば、その言葉は否定出来ない。
「クランド様に、Dランクへの昇格試験を受ける必要がないという話が上がるのも、当然の結果かと」
「……」
褒められるのは嬉しい。
そして実力的にはその考えが間違っていないので、否定も出来なかった。
「でも、このままいくとリーゼだけが昇格試験を受けることになるよな……適当に見つけて殺るか?」
「運良く見つかると良いですが……探してみる価値はありそうですね」
恐ろしい会話をしているが、二人は至って平常運転。
リーゼが倒したと、どう証明する? という問題点もあるが、そこは既に解決案がある。
そこで二人は二日後、本当に盗賊団のアジトを探し始め……一週間後にアジトを発見。
本当に運が良く、先日クランドが殺した盗賊たちが所属していた団であったため、人数は六人と少なく、二人でも討伐可能な範囲。
リーゼの攻撃魔法で先制を取り、戦闘は五分も経たずに終了。
三人は攻撃魔法で殺し、もう一人は双剣を使用して討伐。
残り二人はクランドが狩り、彼らが隠し持っていたお宝なども含め、その場から持ち去った。
二人から報告を聞いた門兵は、先日と同じ様に慌てて冒険者ギルドに向かい、報告。
そしてその報告を聞いた酒盛り中の冒険者たちは、再びエールを吹き出してしまう。
即上層部にも伝わり、盗賊の死体を調べた結果も踏まえ、二人を昇格試験を受けなしでDランクにランクアップさせることが決定した。
11
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
転移したらダンジョンの下層だった
Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。
もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。
そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた
八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』
俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。
レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。
「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」
レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。
それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。
「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」
狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。
その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった――
別サイトでも投稿しております。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる