カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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四十八話 嫌な悲鳴

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コボルトジェネラルとグレートウルフがツートップの群れの討伐に成功した二日後には、既にギルドの依頼を受け、街の外でモンスターとバチバチに戦り合っていた。

討伐戦に参加し、グレートウルフやその他のモンスターを倒した素材を売却して手に入れた金額を考えれば、もっと休んでいても問題はない。

討伐戦に参加してい冒険者たちの殆どは、最低でも三日は依頼を受けるつもりはない。
数日はぐーたらと怠けても、遊んでも問題無い報酬を受け取った。

ギルドの訓練場で軽く体を動かす者はいても、クランドやリーゼの様に、本格的に仕事を受ける者はいない。

「あの二人は何と言うか……働き者だな」

「自由に動けて、強い奴と戦えるから、騎士に進めたかもしれない道を蹴って、冒険者になったんだろ」

「それを考えると、数日も休むってなると、クランドにとっては逆に毒なのかもな」

ベテラン達は二人の行動について、特に文句などなく、あぁいった者たちがあっという間に上へ駆け上がるのだろうと話していた。

しかし、立場的には同じルーキーである若造たちからすれば、その勤勉さ……貪欲さは、あまり気持ちの良いものではない。

物凄く……非常に我儘で身勝手な考えではある。
ただ、彼らからすれば「天才なんだから、真面目に努力し続けなくても良いだろ」なんて考えを持っていた。

それ以上速く前に前に進まれては、自分たち凡才が追い付けるイメージが浮かばない。
だから、それ以上走るなよ……そんなことを考える者たちがいた。

「ブレードラビットか」

「クランド様、私が相手をしてもよろしいでしょうか」

「おぅ、良いぞ」

同じルーキーたちが、着々と自分たちへ負の感情を貯め込んでいるとは知らず、二人は普段通り狩りを楽しんでいた。

(肉を潰さず、刃を潰さず)

高値で売れる素材を潰さない様に立ち回る。
本職は後衛だが、その高い身体能力は腐らせておらず、そこら辺のルーキーよりも接近戦の腕は高い。

ブレードラビットはDランク。
ホーンラビットよりもワンランク高く、それに比例して体も少々大きい。

だからといって素早さは失われておらず、空中での動きに関しては圧倒的にホーンラビットよりも優れている。

空中におびき出せたからといって油断してると、ザクっと殺られてしまう。

(弱い攻撃魔法は斬り裂いてしまう……相変わらず恐ろしい刃ですね)

魔力を纏っているというのが一つの要因だが、そのブレードは魔法であっても容赦なく切断する。

個体によっては、中級に位置するランス系の攻撃魔法でも切断してしまう。

攻撃魔法を切断する攻撃力、空中でも対象を切り裂ける体幹に、素早い脚力。
それらの要素を持ち合わせるブレードラビットは、一部の後衛職から後衛殺しと呼ばれている。

そんな後衛職にとって凶悪なモンスターの攻撃を全て回避し、決定的な隙を見つけた瞬間、鋭い蹴りを斜め上からこめかみに叩きつけた。

「ピっ!!??」

切断できたと思ったが、刃は紙一重でリーゼに当たっておらず、鋭いカウンターを食らってしまう。
そのまま勢い良く地面にバウンドし、木に激突。

たった一撃だが、されど一撃。
つま先に纏っていた魔力は、形を鋭い刃に変えており、魔力の刃は脳まで達していた。

「お見事!!!」

「恐縮です」

脳を刺され、呆気なくやられたブレードラビットの解体に移り、二人は再び夕食時まで探索を続ける。

ちなみに、受けた採集依頼は既に終わっている。

(リザードマン辺り……もしくは、先日戦えなかったコボルトジェネラルが現れてくれても嬉しいな)

(また心配するようなことを考えていますね)

主人の横顔を見るだけで、従者は何を考えているのか、一目で見抜いた。
相変わらずこちらが心配するようなことを考えている……だとしても、その考えをむやみに否定することなく、どこまでも付いて行く。

それはそれで仕え甲斐があると思ったリーゼの耳に、小さな悲鳴が入ってきた。

「クランド様、聞こえましたか」

「あぁ、微かにだが聞こえた。ちょっと嫌な予感がするな」

直感ではあるが、今耳に入ってきた悲鳴は、モンスターに襲われた時の者ではないと感じた。

それが事実か勘違いかを確かめる為、二人は悲鳴が聞こえた方に向かって走る。
そして一分と経たず、現場に到着した。

(ちっ、やっぱりか)

現場には三人の女性冒険者と、五人の野蛮人……盗賊がいた。
状況はどう見ても劣勢であり、二人が気付かなければどうなっていたことか。

「なんだ? 正義の味方登場ってところか?」

「ひゅ~~、カッコイイね~~~」

「おぅおぅ、悪くない体格なんじゃねぇの。まっ、一人戦える奴が増えたところで、この状況が変わる訳じゃねぇけどな」

(……割と強いな)

手札を切らずに、襲われていた女性冒険者たちを守れるほど、目の前の盗賊たちは弱くない。

十分に、数の有利が働く戦力を有してると判断し、クランドは鬼心開放を発動した。

「カバディ」

それと同時に、ダラっと前傾姿勢になり……全力で地面を蹴った。

その表情に先日のグレートウルフ戦の様な笑みはなく、冷酷な表情を浮かべていた。
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