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三十三話 だからこそ、優勝は逃せない
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「自分本来の目的を達成することよりも、家門の名誉を優先したからです」
「……そうか」
クランドが何を言っているのか、ブラハムはおおよそ理解した。
ブラハムもクランド程ではないが、強敵との戦いを好む。
それもあり、クランドの実力を肌で感じ取った時は、心が震えた。
殴って蹴られた分、存分に返したいという思いがあったが、それは叶わなかった。
「それと、退屈そうなブラハムの気持ちに応えられないなと思って」
「ふ、ふふふ。そんな事を考えていたのか」
本人としては、まさか本心を見透かされていたとは、という気持ち。
だが、クランドからすれば、ブラハムが学生たちとのバトルを退屈に感じていたのは明白。
「だから、すいませんでした」
「改めて謝る必要はない。それに、あんな一方的な結果になったのは、俺が結界に気を取られていたからだ」
学生の中にも、結界を使う者は多少存在する。
そんな学生との戦闘経験もあるブラハムだが、絶対に脱出することが出来ない。
今までに感じたことがない圧迫感を感じ、クランドが放つ初撃に対し、完全に反応が遅れてしまった。
(それだけじゃない。俺がクランドの強さを見極められていなかった。それが一番の要因だろう)
正確に把握できていなかった自分に対し、クランドは把握していたからこそ、超短期決戦に持ち込んだ。
「それに、お前が放つ攻撃はどれも見事だった。何度意識が飛びそうになったことか」
「どうも」
クランドとしては、鬼心開放まで使ったにもかかわらず、最後の一撃を食らうまで意識が飛ばなかった、ブラハム
の耐久力に驚嘆していた。
その後、クランドとブラハムは二人だけで会話を続ける。
二人に間に割って入りたい……という思いを持つ生徒たちはいたが、二人と自分の格の違いに気付き、おいそれと話に加わろうと、実際に動くことは出来なかった。
(……負けてらんねぇな)
この場は、大会に参加した生徒たちを労う会。
その会には当然……クランドの兄であるフーネスがいた。
二人の戦いは、フーネスもしっかり観ていた。
しっかり観ていたが……正直、何が起こったのか大半は解らなかった。
とはいえ、クランドがカバディという謎のスキルを使ったことだけは理解している。
それは見事的中しているが、謎のスキルだけでクランドがブラハムに勝利したとは思っていない。
学園に入学してから、日々戦闘訓練の授業以外でも鍛えてきたフーネス。
しかし、弟であるクランドの成長を垣間見え……自分はまだまだだと痛感。
クランドが今回の大会に、スペシャルゲストとして参加しただけであり、学生になった訳ではないのは理解している。
加えて、ブラハムも現在三年生なので、来年には卒業して騎士になっている。
来年の大会には、群を抜いて強いライバルがいない。
その状況下で手にした優勝は価値があるのか?
そう考える者もいるだろうが、フーネスにとっては、その様な状況下で優勝出来なければ、尚更強さを証明できないと考えていた。
こうしてクランドは現学生たちに刺激を与え、大会を見に来ていた観客たちに大きな衝撃を与えて……王都から去った。
「それでは、行ってきます」
「あまり無茶はし過ぎるなよ」
「お父さんの言う通りよ。本当に駄目だと感じたら、引くことも勇気なのよ」
「えぇ、解ってますよ。父さん、母さん」
王都でのスペシャルマッチを終え、屋敷に戻ってから一週間後、いよいよ屋敷を出て冒険者としての道をスタートする。
目指す場所は……冒険者のルーキーにとって、それなりに優しい街、ハリストン。
その街を目指し、リーゼと共に行く。
両親、ライガー家に仕える従者たちと別れ、二人でハリストンへ目指すのだが……そう簡単には到着できない。
街から街へ移動していれば、当然モンスターに襲われることがある。
「よし、解体しようか」
「では、見張りをします」
とはいえ、並みのモンスターでは二人の相手にならない。
ブラハム戦を観ていれば解る通り、クランドは大きく成長しており、並みのモンスターではキャントする必要がない。
ただ、集団戦ともなれば話は別。
現在二人だけでハリストンへ向かっており、リーゼは何度も振り帰ってしまう様な魅惑の美女。
「よぅ、兄ちゃん。ちょっとお話ししようか」
「なんなら、そっちの姉ちゃんを置いてってくれるなら見逃してやるよ」
「どうだ、悪くない提案だろ」
当然というか、残念ながらというか……盗賊という害虫にも遭遇してしまう。
(どこが悪くない提案なんだ?)
二人がそんなアホ過ぎる要求を受け入れるわけがなく、戦闘開始。
「カバディ」
「死になさい」
二人とも戦闘者としての童貞、処女は捨てているので、盗賊たちに慈悲はない。
数的には盗賊たちが有利ではあるが、クランドが鋭い指で喉や頸動脈を裂いていき、リーゼの捉えられない容赦ない攻撃魔法によって殲滅。
通りすがりの街にそれを報告し、報告を受けた冒険者ギルドが冒険者たちが兵を失ったアジトに乗り込み、殲滅。
二人が自分たちに襲い掛かってきた盗賊を、一人残さず全滅させたこともあり、アジト壊滅はスムーズに行われた。
「……そうか」
クランドが何を言っているのか、ブラハムはおおよそ理解した。
ブラハムもクランド程ではないが、強敵との戦いを好む。
それもあり、クランドの実力を肌で感じ取った時は、心が震えた。
殴って蹴られた分、存分に返したいという思いがあったが、それは叶わなかった。
「それと、退屈そうなブラハムの気持ちに応えられないなと思って」
「ふ、ふふふ。そんな事を考えていたのか」
本人としては、まさか本心を見透かされていたとは、という気持ち。
だが、クランドからすれば、ブラハムが学生たちとのバトルを退屈に感じていたのは明白。
「だから、すいませんでした」
「改めて謝る必要はない。それに、あんな一方的な結果になったのは、俺が結界に気を取られていたからだ」
学生の中にも、結界を使う者は多少存在する。
そんな学生との戦闘経験もあるブラハムだが、絶対に脱出することが出来ない。
今までに感じたことがない圧迫感を感じ、クランドが放つ初撃に対し、完全に反応が遅れてしまった。
(それだけじゃない。俺がクランドの強さを見極められていなかった。それが一番の要因だろう)
正確に把握できていなかった自分に対し、クランドは把握していたからこそ、超短期決戦に持ち込んだ。
「それに、お前が放つ攻撃はどれも見事だった。何度意識が飛びそうになったことか」
「どうも」
クランドとしては、鬼心開放まで使ったにもかかわらず、最後の一撃を食らうまで意識が飛ばなかった、ブラハム
の耐久力に驚嘆していた。
その後、クランドとブラハムは二人だけで会話を続ける。
二人に間に割って入りたい……という思いを持つ生徒たちはいたが、二人と自分の格の違いに気付き、おいそれと話に加わろうと、実際に動くことは出来なかった。
(……負けてらんねぇな)
この場は、大会に参加した生徒たちを労う会。
その会には当然……クランドの兄であるフーネスがいた。
二人の戦いは、フーネスもしっかり観ていた。
しっかり観ていたが……正直、何が起こったのか大半は解らなかった。
とはいえ、クランドがカバディという謎のスキルを使ったことだけは理解している。
それは見事的中しているが、謎のスキルだけでクランドがブラハムに勝利したとは思っていない。
学園に入学してから、日々戦闘訓練の授業以外でも鍛えてきたフーネス。
しかし、弟であるクランドの成長を垣間見え……自分はまだまだだと痛感。
クランドが今回の大会に、スペシャルゲストとして参加しただけであり、学生になった訳ではないのは理解している。
加えて、ブラハムも現在三年生なので、来年には卒業して騎士になっている。
来年の大会には、群を抜いて強いライバルがいない。
その状況下で手にした優勝は価値があるのか?
そう考える者もいるだろうが、フーネスにとっては、その様な状況下で優勝出来なければ、尚更強さを証明できないと考えていた。
こうしてクランドは現学生たちに刺激を与え、大会を見に来ていた観客たちに大きな衝撃を与えて……王都から去った。
「それでは、行ってきます」
「あまり無茶はし過ぎるなよ」
「お父さんの言う通りよ。本当に駄目だと感じたら、引くことも勇気なのよ」
「えぇ、解ってますよ。父さん、母さん」
王都でのスペシャルマッチを終え、屋敷に戻ってから一週間後、いよいよ屋敷を出て冒険者としての道をスタートする。
目指す場所は……冒険者のルーキーにとって、それなりに優しい街、ハリストン。
その街を目指し、リーゼと共に行く。
両親、ライガー家に仕える従者たちと別れ、二人でハリストンへ目指すのだが……そう簡単には到着できない。
街から街へ移動していれば、当然モンスターに襲われることがある。
「よし、解体しようか」
「では、見張りをします」
とはいえ、並みのモンスターでは二人の相手にならない。
ブラハム戦を観ていれば解る通り、クランドは大きく成長しており、並みのモンスターではキャントする必要がない。
ただ、集団戦ともなれば話は別。
現在二人だけでハリストンへ向かっており、リーゼは何度も振り帰ってしまう様な魅惑の美女。
「よぅ、兄ちゃん。ちょっとお話ししようか」
「なんなら、そっちの姉ちゃんを置いてってくれるなら見逃してやるよ」
「どうだ、悪くない提案だろ」
当然というか、残念ながらというか……盗賊という害虫にも遭遇してしまう。
(どこが悪くない提案なんだ?)
二人がそんなアホ過ぎる要求を受け入れるわけがなく、戦闘開始。
「カバディ」
「死になさい」
二人とも戦闘者としての童貞、処女は捨てているので、盗賊たちに慈悲はない。
数的には盗賊たちが有利ではあるが、クランドが鋭い指で喉や頸動脈を裂いていき、リーゼの捉えられない容赦ない攻撃魔法によって殲滅。
通りすがりの街にそれを報告し、報告を受けた冒険者ギルドが冒険者たちが兵を失ったアジトに乗り込み、殲滅。
二人が自分たちに襲い掛かってきた盗賊を、一人残さず全滅させたこともあり、アジト壊滅はスムーズに行われた。
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