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二話 ワクワクを抑えきれない
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(マジか……マジか……マジかよ!!!!)
ほぼほぼカバディ、なんてスキルを習得できるとは思っていなかった。
もしかしたらと思い、レイドの練習などをしていたが、もう無理なんだろうな……と諦めていた。
(カバディ……カバディとは、なんだ??)
クランドとはテンションが真逆な父、オルガ。
息子はきっと、槍技のスキルを習得したからテンションが高かいのだ……そう思っていたが、その期待はあっさりと裏切られた。
そして、その事実はあっという間に屋敷中に広まり、母であるエリカと兄であるロ二アスは、もうクランドが槍技のスキルを習得するのは絶望的なのだと悟り、悲し気な表情を浮かべた。
長女であるミラルはというと……クランドが槍技を習得出来ない事実に関しては、勿体ないという気持ちがあった。
しかし、当の本人であるクランドは全く落ち込んでいない。
その様子を見て、あまり気にする必要はないかと思えてしまった。
そんな中……一人だけ、クランドがカバディなどという訳の分からないスキルを習得したことに、喜んでいる人物がいた。
そう……クランドの一つ上の兄、フーネスだった。
勿論、フーネスは純粋に今回の出来事を喜んでいる訳がなく、悪い意味で喜んでいた。
兄弟の中でも物覚えが早く、槍の扱いに関しても兵士や騎士が教える内容をどんどん吸収し、フーネスはクランドが自分よりも早く槍技のスキルを習得してしまうのではないかと、強く恐れていた。
当然兄弟ということもあって、多くの部分で比較されてしまう。
焦りを感じてからのフーネスは勤勉に努力を続けたが、クランドが強くなる努力を緩めることはない。
直ぐに追い抜かされ、一生突き放されていくのではないか……そう思っていたが、意外にも自分の方が早く槍技のスキルを習得した。
それでも、まだ安心できないという思いがあった。
ただ……それからもクランドは槍技を習得出来ず、数年の月日が経ち……訳の分からないスキルを習得した。
「なぁ、クランド。久しぶりに模擬戦しようぜ」
「模擬戦ですか。勿論良いですよ」
弟があっさりと承諾したことで、フーネスはあくどい笑みを抑えるのに必死になる。
模擬戦では当然、木製の槍を使う。
槍技習得していない自分とクランドでは、既に勝負が決まったようなもの。
そして二人が久しぶりに模擬戦を行うという話はあっという間に広まり、オルガたちだけではなく、手の空いている従者たちも訓練場に集まった。
「クランド、本当に行うのか」
「はい、ロ二アス兄さん!!!」
「……そ、そうか」
改めて確認したが、弟の眼に絶望の闇は一欠片もない。
それどころか、希望の光で満ち溢れていた。
(どうやら落ち込んではいないようだな……もしや、クランドはカバディ? というスキルが、どのようなスキルなのか、既に理解しているのか?)
勉学にも精を出しているロ二アスだが、カバディというスキルは見たことも聞いたこともない。
だが、弟の表情に負の要素は全くない。
(……まぁ、槍技のスキルを習得出来てないとはいえ、大怪我を負うことはないだろう)
残念ながら、クラウドは母や父には似ず、魔法の才能はあまりなかった。
しかし、兄であるロ二アスは弟が毎日肉体を鍛え続けているのは知っている。
槍技のスキルこそ習得出来ていないが、それでも鍛えぬいた肉体が嘘を付くことはない。
そう思い、弟の元を離れた。
「ロ二アス、クランドは大丈夫かしら」
「槍に武器を限定するのであれば、クランドの不利は否めません」
クランドに対して槍技を習得しているからという理由で下に見ているフーネスだが、それで気を抜いて訓練をサボっている訳ではない。
その努力の甲斐もあって、現在のスキルレベルは二。
オルガやロ二アスの見立てでは、もう少しで三に到達してもおかしくない。
「ですが……そもそも、クラウドは槍を使う気がないようです」
「えっ」
開始線まで歩いてきたクランドの手には、訓練用の木製槍が握られていなかった。
「おい、クランド……どういうつもりだ」
「見ての通りですよ、フーネス兄さん。俺は素手で戦います」
決して反則などではない。
しかし、ライガー家は槍に長けた家系。
クランドの二つ下の弟であるアスクも既に槍技を習得している。
戦いの場で、槍を使うのが当たり前……それは家の中だけではなく、貴族の世界でも一般常識だった。
「ふん、まぁいい。負けた時に言い訳にするなよ」
「えぇ、勿論」
先程まで零れそうなあくどい笑みを堪えるのに必死だったフーネスだが、普段どりの表情を見せるクラウドに苛立ち始めた。
(精々余裕かましてろ)
ここでクランドに勝利し、ようやく今までの劣等感を払拭できる。
そんな思いなどつゆ知らず……クランドはカバディという名のスキルが使える……その事実だけでワクワクが止まらない。
「それでは……始め!!!!」
騎士の一人が審判役を務め、模擬戦開始の合図を行った。
「カバディ」
その瞬間、クランド……大河は、前世でのレイドを思い出しながら、自然にキャントを零した。
(えっ?)
今世でも、もしかしたらという思いを持ちながら、キャントしながらの特訓を行っていたので、何も問題はなかった……ただ、この時クランドは、まだカバディという名のスキルは全く把握できていなかった。
ほぼほぼカバディ、なんてスキルを習得できるとは思っていなかった。
もしかしたらと思い、レイドの練習などをしていたが、もう無理なんだろうな……と諦めていた。
(カバディ……カバディとは、なんだ??)
クランドとはテンションが真逆な父、オルガ。
息子はきっと、槍技のスキルを習得したからテンションが高かいのだ……そう思っていたが、その期待はあっさりと裏切られた。
そして、その事実はあっという間に屋敷中に広まり、母であるエリカと兄であるロ二アスは、もうクランドが槍技のスキルを習得するのは絶望的なのだと悟り、悲し気な表情を浮かべた。
長女であるミラルはというと……クランドが槍技を習得出来ない事実に関しては、勿体ないという気持ちがあった。
しかし、当の本人であるクランドは全く落ち込んでいない。
その様子を見て、あまり気にする必要はないかと思えてしまった。
そんな中……一人だけ、クランドがカバディなどという訳の分からないスキルを習得したことに、喜んでいる人物がいた。
そう……クランドの一つ上の兄、フーネスだった。
勿論、フーネスは純粋に今回の出来事を喜んでいる訳がなく、悪い意味で喜んでいた。
兄弟の中でも物覚えが早く、槍の扱いに関しても兵士や騎士が教える内容をどんどん吸収し、フーネスはクランドが自分よりも早く槍技のスキルを習得してしまうのではないかと、強く恐れていた。
当然兄弟ということもあって、多くの部分で比較されてしまう。
焦りを感じてからのフーネスは勤勉に努力を続けたが、クランドが強くなる努力を緩めることはない。
直ぐに追い抜かされ、一生突き放されていくのではないか……そう思っていたが、意外にも自分の方が早く槍技のスキルを習得した。
それでも、まだ安心できないという思いがあった。
ただ……それからもクランドは槍技を習得出来ず、数年の月日が経ち……訳の分からないスキルを習得した。
「なぁ、クランド。久しぶりに模擬戦しようぜ」
「模擬戦ですか。勿論良いですよ」
弟があっさりと承諾したことで、フーネスはあくどい笑みを抑えるのに必死になる。
模擬戦では当然、木製の槍を使う。
槍技習得していない自分とクランドでは、既に勝負が決まったようなもの。
そして二人が久しぶりに模擬戦を行うという話はあっという間に広まり、オルガたちだけではなく、手の空いている従者たちも訓練場に集まった。
「クランド、本当に行うのか」
「はい、ロ二アス兄さん!!!」
「……そ、そうか」
改めて確認したが、弟の眼に絶望の闇は一欠片もない。
それどころか、希望の光で満ち溢れていた。
(どうやら落ち込んではいないようだな……もしや、クランドはカバディ? というスキルが、どのようなスキルなのか、既に理解しているのか?)
勉学にも精を出しているロ二アスだが、カバディというスキルは見たことも聞いたこともない。
だが、弟の表情に負の要素は全くない。
(……まぁ、槍技のスキルを習得出来てないとはいえ、大怪我を負うことはないだろう)
残念ながら、クラウドは母や父には似ず、魔法の才能はあまりなかった。
しかし、兄であるロ二アスは弟が毎日肉体を鍛え続けているのは知っている。
槍技のスキルこそ習得出来ていないが、それでも鍛えぬいた肉体が嘘を付くことはない。
そう思い、弟の元を離れた。
「ロ二アス、クランドは大丈夫かしら」
「槍に武器を限定するのであれば、クランドの不利は否めません」
クランドに対して槍技を習得しているからという理由で下に見ているフーネスだが、それで気を抜いて訓練をサボっている訳ではない。
その努力の甲斐もあって、現在のスキルレベルは二。
オルガやロ二アスの見立てでは、もう少しで三に到達してもおかしくない。
「ですが……そもそも、クラウドは槍を使う気がないようです」
「えっ」
開始線まで歩いてきたクランドの手には、訓練用の木製槍が握られていなかった。
「おい、クランド……どういうつもりだ」
「見ての通りですよ、フーネス兄さん。俺は素手で戦います」
決して反則などではない。
しかし、ライガー家は槍に長けた家系。
クランドの二つ下の弟であるアスクも既に槍技を習得している。
戦いの場で、槍を使うのが当たり前……それは家の中だけではなく、貴族の世界でも一般常識だった。
「ふん、まぁいい。負けた時に言い訳にするなよ」
「えぇ、勿論」
先程まで零れそうなあくどい笑みを堪えるのに必死だったフーネスだが、普段どりの表情を見せるクラウドに苛立ち始めた。
(精々余裕かましてろ)
ここでクランドに勝利し、ようやく今までの劣等感を払拭できる。
そんな思いなどつゆ知らず……クランドはカバディという名のスキルが使える……その事実だけでワクワクが止まらない。
「それでは……始め!!!!」
騎士の一人が審判役を務め、模擬戦開始の合図を行った。
「カバディ」
その瞬間、クランド……大河は、前世でのレイドを思い出しながら、自然にキャントを零した。
(えっ?)
今世でも、もしかしたらという思いを持ちながら、キャントしながらの特訓を行っていたので、何も問題はなかった……ただ、この時クランドは、まだカバディという名のスキルは全く把握できていなかった。
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