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少年期[1041]怒髪天

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(おいおい、なんて攻撃をしてくれるんだよこいつ)

糸に毒を混ぜ合わせるという非常に面倒で厄介な攻撃に対し、珍しく引きつらせた表情を浮かべるゼルート。

完全に触れる、状況的に斬るという選択肢もあまりよろしくない。
加えて、現在ゼルートたちは先にブラッドタラテクトと交戦し、食料として捕まっていた探索者たちも助けなければならない。

ということもあり、より毒が染み込んだ糸を適当に処理する訳にはいかなくなった。

(視た感じ……こんだけ大量に毒を染み込ませた糸を吐き出してるのに、大して魔力消費してないし……厄介っていう点に限れば、もしかしてAランクモンスターに匹敵するのか?)

なんて事を考えながらも、ゼルートは的確に毒が染み込んだ糸を燃やしていくが……場所が洞窟ということもあり、あまり長い間この対処法を取り続けるのはよろしくない。

「チッ!! 本当に面倒な事してくれるな!」

地面を溶かすほどの毒が染み込んでいるということもあり、ゼルートの斬るのではなく燃やし尽くして消すという選択は非常に優れた判断である。

だが、あまり燃やし続けると……洞窟内の酸素が徐々に徐々に減ってしまう。

あまり科学に詳しいゼルートではないが、なんとなくそれぐらいは解る。
そのため、変わらず吐き出される紫糸を燃やしながらも、風を吹き出し、なんとか外の空気と洞窟内の空気を入れ替えていた。

「ゼルート! 捕らわれてた者たちは回収したぞ!!」

「っ、流石、仕事が早いな、ルウナ!!」

ルウナが捕らわれていた探索者たちを救出すると、他のメンバーも次々に仕事を終わらせていく。

「ゼルート、こっちも本命の仕事が終わったわ」

「良いね! マジで、サンキュー、アレナ! ゲイル」

元々ゼルートたちが受けた依頼は、ブラッドタラテクトの糸を回収する事。

アレナはゲイルと共に巣を切断していき、ゼルートとブラッドタラテクトの戦いで潰されない内に、なんとか大量の糸を回収することに成功。

「ゼルート様、こちらの仕事も終わりました」

「終わったよ~~~!」

「二人共、ありがとな」

ブラッドタラテクトが生んだ蜘蛛たちも、ラルとラームによって殲滅された。

「さて、残るはこいつだけだなぁ……」

「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」

(ん~~~~~……もう怒髪天、って感じでバチバチに怒ってるな)

アレナに言われた通り、無理にブラッドタラテクトを討伐する必要がない。

今回討伐しなければ、また後日……ブラッドタラテクトが巣を作った時に、糸を回収出来る。
そういったサイクルが出来るのが一番だが、ゼルート対峙しているブラッドタラテクトは、怒りが限界突破していた。

(このまま逃げるのは……無理じゃないけど、そうなったら洞窟の外に出て、村や町を襲い始めるよな~~~)

それなりの実力を有している者たちが数で攻めれば、討伐出来ない魔物ではない。
だが、その実力者をそれなりの数ほど用意する間に……何人もの人間が死んでしまう。

「まっ、仕方ないって奴だよな」

「どうするの、ゼルート」

「今回は俺一人で戦るよ」

「一人で戦るの?」

Sランクの魔物にソロで勝つゼルートが、今更Bランクのモンスターに負けるとは思っていない。

だが、ブラッドタラテクトは物理攻撃だけではなく、絡め手といった類の攻撃も非常に得意。
そのため、本当に……僅かな可能性ではあるが、万が一を感じさせる。

「うん。偶には、リーダーらしく活躍しないとな」

「……はぁ~~~~、分かったわ。でも、うっかり洞窟内を破壊したりしないでな」

「うっかり崩壊したら、それは半分ブラッドタラテクトのせいだな」

減らず口を叩きながらも、ゼルートは良い笑みを浮かべながら改めてミスリルデフォルロッドを剣に変えて構えた。
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