冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

連載

少年期［１０３２］内装の違い？

「良い宿だな」

道中、盗賊に一回、モンスターに三回襲撃されながらも、ゼルートたちは無事にバディスタに到着。

門兵に良い宿はないかと尋ねると、ゼルートの見た目に偏見を持つことはなく、本当に良い宿が揃っている辺りを教えてくれた。

「そうね」

良い宿なだけあり、それなりに値段がするものの、アレナはもうそこに関して一切ツッコまない。

「そういえば、宿を見つけるまでそれなりに通行人とすれ違ったけど、結構魔法使いの恰好……後、それっぽい雰囲気をしてる人たちが何人かいたな」

魔法使いといえど、全員が全員毎日毎日そういった服装をしている訳ではなく、特に街の外に出たりしない日は、普段着を着ている者もいる。

ただ、ゼルートも冒険者として活動する中で、それなりに多くの者たちと出会う中で、魔法使いが持つ独特の雰囲気というものが、なんとなくではあるが解るようになっていた。

「魔塔から距離が近い場所……魔塔の支部があったかしら？　それもあって、魔法使いたちが多いのでしょう」

「そういう事か…………なぁ、単純な疑問なんだけど、魔法使いたちがメインになってる？　風潮がある中だと、前衛で戦う冒険者たちの肩身が狭くなってたりするのかな」

「どうでしょうね。そういう考えを持っている人はいるかもしれないけど、前衛の戦士やタンクなど必要ない！　なんて言える人たちなんて、本当に一部の人間に限られると思うわよ」

戦士と魔法使いがタイマンで戦った場合、どちらが有利なのか。

両者が有する武器やスキル、レベル差などが同等する場合……一定のレベルまでは、どう足掻いても戦士たちの方が有利であるという現実を変えることは出来ない。

スピードに優れた剣士、双剣士などが相手であれば、尚更相性が悪い。

「それに、そういう考え方をしてたら、いざという時に裏切られるって考えられる筈……なのだけどね～～」

先程自分で言った通り、そういう馬鹿……傲慢な存在が容易に思い浮かべられてしまうアレナ。

「選民意識……ではないか。特権思考？　魔法使いこそ至高の存在！！！！　って思ってるんかな」

「ふふ……ふっふっふ。ゼルート、もしそういった輩たちと出会ったら、私が戦いたい。是非、私の牙とそいつらの魔法、どちらが強いのか試したい」

「ん～～～～……一応、何人もそういう輩が現れたら、俺も数人ぐらい潰した方が良いんだけど、それが終わったら基本的にルウナに譲るよ」

「ありがとう」

非常に好戦的で獣の様な笑みを浮かべるルウナ。
そんなルウナを見て、アレナは未来の惨敗者たちのことをほんの少しだけ憐れんだ。

「でも、あれね。ゼルートが物理で壊し続ければ、多くのプライドが高い者が崩れそうね」

「……俺としては、魔法使いっていう賢い？　タイプの戦闘職として活動してるんだから、もう少し視野を広く持ったらどうなんだって思うけどな」

辛口な言葉ではあるが、非常にその通りであり、アレナもルウナも反論することなく、苦笑いを浮かべるだけだった。

その後、ほんの少し休憩した後、ゼルートたちはいつも通り情報を集める為に、冒険者ギルドへと向かった。

（ん？　……………………道が同じだけ、か？）

ギルドへ向かう道中、後方から自分に向けられている視線を感じたゼルート。
その視線は最初こそバラバラに向けられていたが、最終的にはゼルートだけを捉え、ずっと付いてくる。

「ギルドは……ロルパより、少し大きいかしら」

「だな」

ゲイルたちは外で待機してもらい。
ゼルートたちは中に入る……すると、三人ともほんの少し、内装がこれまで入ってきた冒険者ギルドとは異なることに気付いた。

（……王都の冒険者ギルドとかは、割と内装がちゃんと……綺麗に？　してた気がする。でも、こう……冒険者ギルドって雰囲気というか匂い？　があった。でも、ここは……ちょっと違うな）

相変わらず多くの視線が向けられる中、ゼルートは背中からくる視線だけ気を付けながら、クエストボードの前へと向かう。