上 下
1,008 / 1,043
連載

少年期[1030]興味を持たれる

しおりを挟む
「それじゃあ、次の目的地はバディスタに決定ね」

「そうだな」

ゲイルがソロでワイズコングを討伐してから二日後、ゼルートたちは次の目的地を決めた。

バディスタという街は……そこまで特徴のある街ではないが、インヴェス山岳という山岳に向かう道中にある中堅都市。

情報を集めるには、悪くない場所であった。

「問題が起こったとしても、今日みたいな問題しか起こらないと思うけど…………他に何か起こるとしたら、魔塔絡みかしら」

「魔塔…………魔法をメインに扱う者たちが集まる、研究機関? みたいなところだっけ」

「そうよ。パルブン王国の中では、王家と同等の権力を持っている、なんて噂もあるわ」

「へぇ~~~~。それは凄いな」

最終的には物理で解決すれば良いという考えを持っているゼルートだが、王家と同等の権力を持っている凄さというのは、ある程度理解出来る……だからこそ、心の底から凄いなと感じた。

(王家と同等の権力を持ってるって事は、互いに睨み合ってる状態が続いてる様なものか……こっちの王家の人たちは、毎日胃がキリキリしてそうだな)

凄いと思いながらも、他人事のように考えるゼルート。
だが、パーティーメンバーのアレナとしては、不安だらけの存在であった。

「のほほんとしてるけど、一番絡まれやすいのはゼルートなのよ」

「あのクソエルフの時と同じで、俺がまだ子供っぽいのにランクが高いからか?」

「違うわ。どちらかと言えば、有効的な絡みって感じかしら」

「有効的な絡み?」

言葉の意味が解らず、首を傾げるゼルート。

「一般的にはね。でも、ゼルートにとっては面倒な絡みだと思うわ」

「やっぱりか……けど、そもそも俺と魔塔って、特に共通点とかないよな」

「それがそうとも言いきれないわ。だって、あなた自分で武器や素手で戦う才能よりも、魔法の才能の方があるって言ってたじゃない」

「…………言ってた、気がしなくもない、な」

過去の記憶を掘り起こしながら、確かにその様な言葉を口にしていたと思い出す。

「実際、ゼルートはあの戦争で開幕早々、魔法合戦で特大魔法を二度連続で放ったでしょう」

「そんな事もあったな」

当初、ゼルートは煉獄の凶弾という複数の地獄の業火を球弾にして放つ魔法しか放たないつもりだったが……ディスタール王国側の魔法使いたちも中々粒が揃っており、凶弾がそれなりに相殺されてしまった。

その結果が、プライドが傷付いたと感じ、ゼルートは二回目の特大魔法、天竜の戯れを発動した。
特大魔法を放つことが出来、しかも連続で放つことが出来るほどの魔力量を有している。

魔塔に所属している人物であれば、是非とも関わりたい人物であるのは間違いなかった。

「あれは凄まじかったな。しかし、あれはゼルートの魔力量あっての攻撃ではないのか?」

「だとしても、ゼルートの歳でそれだけの魔力量を、加えてどの様な鍛錬を積んでスキルレベルを上げたのか、気になるところは盛りだくさんのはずよ」

「…………クソったれだな」

基本的にゼルートと、従魔であるゲイルたちしかやってこなかった秘密の特訓、というのは存在する。

ただ、ゼルートは基本的にその方法を身内以外の誰かに教えるつもりはない。

「それってさ、要は俺があれこれ考えてる方法を聞き出そうとするってことだろ」

「悪く言うと、そうなるわね。勿論、それ相応の対価は用意する筈よ。ゼルートは他国とはいえ、男爵の爵位を持ってるわけだし」

アレナの言う通り、ゼルートは男爵……伯爵家の令息という立場だけではなく、ゼルート自身が男爵という爵位を得ている。

「……それでこっちの言い分を納得してくれれば良いんだけどな」

「何かを心配している感じだな、ゼルート」

「…………パルブン王国の上の連中が何を考えてるのか解らない以上、それ相応の対価を貰えるとはいえ、安易にあれこれ教えたくない」

ゼルートは遠回しに、パルブン王国と戦争になった時に、クソ面倒なことになると口にしていた。

(はぁ~~~。部屋で話してて良かったわ)

幸いにも、宿の部屋で話していたため、ゼルートたちの会話を聞いている者は誰もいなかった。
しおりを挟む
感想 680

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。