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少年期[1029]高まる信憑性

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「ん?」

ワイズコングに関する情報を全て伝え終え、受付嬢から内臓や骨などの換金分を受け取り、ロビーに戻って来たゼルートたち。

すると、戻って来たゼルートたちに向かって多くの視線が向けられた。
ただ……それは先日、セパーティルという若僧エルフが向けてきたような類の視線ではなく、焦りや怯え、戸惑いといった類の視線だった。

(? なんかいつもと違う感じだな……あっ、そういえば前にギルドから出る時、絡んでくる奴がいたら……腕か脚を引き千切ってやるって感じの会話をアレナたちとしたからか?)

違う。

そういった理由もあるが、ロビーにいる同業者たちがゼルートたちに対して焦り、戸惑いを感じていたのはそれが主な理由ではなかった。

まず、Cランクまで上り詰め、そこからBランク……Aランクへと上がれずとも、数年もそこで経験を積んでいれば、色々と解かることが増える。

容量の大きいマジックバッグ、リングを有していれば、倉庫で査定を行ってもらうことは珍しくない。
そのバッグやリングを手に入れられるだけの財力や探索力、そして倉庫での査定が必要なほど多くの魔物を討伐出来た戦闘力が窺える。

それだけでも、ゼルートたちは十分に警戒すべきだと……バカな絡み方をすれば、返り討ちに合う可能性が高いと解る。

(この感じ……どうやら、解る人がいたみたいね)

アレナはロビーにいる数人の冒険者を見つけ、何故同業者たちが焦りや戸惑いの視線を自分たちに向けているのか、なんとなく察しがついた。

それなりに経験を積み重ねてきた冒険者たちであれば、人によって自分の功績を大っぴらに晒したくない者もいると……そういうタイプの人間もいると知るようになる。

つまり、先程倉庫で査定を行う様に頼んだゼルートたちが多くの魔物を倒した……というだけではなく、あまり大袈裟にしたくない魔物を討伐したという可能性も考えられる。

(そういえば、ゲイルは派手にワイズコングと戦ったものね……もしかしたら、遠目からあの戦いを観た人がいるのかもしれない。おそらく、派手な戦闘音は聞こえてたでしょうね)

アレナの推察通り、当然と言えば当然だが、木々を吹き飛ばし、地面を抉り、斬り裂くような戦闘に気付かない者は殆どいなかった。

派手な戦闘音というのは、パフォーマンスと捉えられることはない。
それだけ強力な攻撃が何度も何度も放たれている証拠となる。

ゼルートたちが複数のBランク魔物と戦っていたのか、それとも……Aランク魔物と戦っていたのか。
それが本当だとすれば、チラッとだけ耳に入っていたゼルートの戦争での噂も信憑性が増す。

(まぁ、ゼルートの噂に関しては、初対面であの噂は本当だったんだと信用するのは難しいでしょうね)

冒険者になってから数か月以内にBランク魔物を討伐し、数年以内にはSランク魔物を討伐。
まだ最下層まで探索が進んでいないダンジョンの五十階層まで最短期間で潜ってしまった……どう考えても、二十歳を越えていない冒険者が成し遂げる功績ではない。

「なんか……あれだったな。ロビーにいた冒険者たち、前までと比べてこう……面倒な感情を向けられなかったな」

「そうね。それなりに頭が回る人がいたのか、それとも実力のある人がゼルートの噂は本当だって話し始めたんじゃないかしら」

「解る者は解る事を考えれば、その通りかもしれないな」

ルウナも出会った頃は、ゼルートの実力を一目で完全に見抜くことは出来なかった。

だからこそ、まだ青年になり切れていないゼルートの実力を、初見では見抜けないのは仕方ないという部分は多少あった。

「数日後には移動するけど、動きやすくなるのは良い事だな」

あれだけ戦争で派手に暴れた手前、今更目立たない様に冒険者ライフを、などというつもりは欠片もなかった
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