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少年期[1025]威嚇か、準備か
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「…………」
「どうした、もう終わりか」
「…………」
ゲイルとワイズコングの激闘が始まってから既に五分間が経過していた。
周辺の木々はバキバキにへし折れ、消し炭になり、細切れにされている。
いくつものクレーターと切り込みがあり、どれほどの激戦が繰り広げられていたのかを物語っている。
そんな中。先程まで止まることなく攻撃魔法による攻撃やゴリラナックル、頑丈な杖を剣に見立てて斬撃など、様々な攻撃を繰り返し続けたワイズコングだったが、急に攻撃を止めた。
理由は一つ……このままただ闇雲に攻めたとしても、無意味だと悟ってしまったから。
まだワイズコングの魔力は枯渇しておらず、なんなら武器である杖に自身の魔力を貯蔵している。
故にまだまだバンバン攻撃魔法を放てるが……その全ての、目の前の紅いリザードマンに対処されてしまっている。
「ふむ…………何やら考え事をしているようだが、動かないのはつまらないな」
「っ!!!」
考えるのは構わない。
ただ、全く動かない状態が続くのは、非常につまらない。
そう思ったゲイルは、今度は自分が攻めようと思い、斬撃波や刺突を放ち始めた。
当然ながら、ゲイルはワイズコングの攻撃を正確に対処しなければならなかった……つまり、ワイズコングはワイズコングでゲイルの攻撃を雑に対処することは出来ない。
ゲイルの武器もロングソードだけではなく、体術も並の腕ではなく、頑強なワイズコングが食らえば……当たった部分の骨が骨折してしまうということはないが、それでもぐらりと体が揺れ、体勢が崩れてしまう。
そしてゲイルはその他大勢のリザードマンとは違う、ドラゴンたちの様にブレスを放つことが出来る。
拡散するも一点集中するもお手の物であり、隙を見つけてはゼルートから渡されている魔力回復ポーションを飲み、完全に使い切ってしまう前に補充。
ゲイルもまだまだ戦えるだけの魔力量は残っていたが、ここで驕って無様な姿を晒す様な真似はしたくない。
だからこそ、早めの補充を行った。
「ッッッッッ……ゴルルルルルルルアアアアアアアアアアアッ!!!!」
ゲイルの連続で放たれる斬撃波を鬱陶しく思ったのか、ワイズコングは再び攻撃を連発して対処、もしくは防御魔法を連続発動して防ぐ……のではなく、その場でドラミングを行った。
(っ!!?? ゴリラのドラミングって、威嚇したり……自己主張する時とかにやるんじゃなかったっけ?)
目の前で実際に起こった光景を見て驚きを隠せないゼルート。
ふと、前世の薄っすらとした記憶を思い出すも、直ぐにあまり思い出しても意味がない知識だったと切り捨てた。
何故なら……ここはゼルートの前世とは違う世界、異世界である。
故に、前世の常識と異なることが起こっても、特に驚くことではないと自分に言い聞かせる。
「ゲイルの斬撃波をあんな方法で防ぐなんて……あれって、衝撃波? を発生させて防いでるのよね」
「多分そうだと思う。本来の遣い方は違うのかもしれないけど…………って、もうちょっと下がっておいた方が良いかもな」
「? 何故だ、ゼルート」
「…………勘」
全くもって頼りにならない根拠の様に思えて、実は冒険者にとって証明は出来ないが頼りになる根拠である勘。
ルウナたちはとりあえずゼルートに従って更に後方へ下がると、数秒後……何故ゼルートの勘が、もっと後方に下がった方が良いと告げたのか理解した。
(……今鑑定を使ったら、ワイズの文字が消えてたりしないわよね?)
ドラミングの衝撃波でゲイルが放った多数の斬撃波を掻き消した後、ワイズコングは先程までの様に遠距離と近距離攻撃を上手く組み合わせ攻撃ではなく……ザ・ゴリラの様に接近戦のみで攻め始めた。
拳を多用するようになったその姿は、ゴリラのイメージそのもの。
そして……一見雑な戦いになったように見えるにもかかわらず、決してゲイルは戦い易いと感じないのが恐ろしいところであった。
「どうした、もう終わりか」
「…………」
ゲイルとワイズコングの激闘が始まってから既に五分間が経過していた。
周辺の木々はバキバキにへし折れ、消し炭になり、細切れにされている。
いくつものクレーターと切り込みがあり、どれほどの激戦が繰り広げられていたのかを物語っている。
そんな中。先程まで止まることなく攻撃魔法による攻撃やゴリラナックル、頑丈な杖を剣に見立てて斬撃など、様々な攻撃を繰り返し続けたワイズコングだったが、急に攻撃を止めた。
理由は一つ……このままただ闇雲に攻めたとしても、無意味だと悟ってしまったから。
まだワイズコングの魔力は枯渇しておらず、なんなら武器である杖に自身の魔力を貯蔵している。
故にまだまだバンバン攻撃魔法を放てるが……その全ての、目の前の紅いリザードマンに対処されてしまっている。
「ふむ…………何やら考え事をしているようだが、動かないのはつまらないな」
「っ!!!」
考えるのは構わない。
ただ、全く動かない状態が続くのは、非常につまらない。
そう思ったゲイルは、今度は自分が攻めようと思い、斬撃波や刺突を放ち始めた。
当然ながら、ゲイルはワイズコングの攻撃を正確に対処しなければならなかった……つまり、ワイズコングはワイズコングでゲイルの攻撃を雑に対処することは出来ない。
ゲイルの武器もロングソードだけではなく、体術も並の腕ではなく、頑強なワイズコングが食らえば……当たった部分の骨が骨折してしまうということはないが、それでもぐらりと体が揺れ、体勢が崩れてしまう。
そしてゲイルはその他大勢のリザードマンとは違う、ドラゴンたちの様にブレスを放つことが出来る。
拡散するも一点集中するもお手の物であり、隙を見つけてはゼルートから渡されている魔力回復ポーションを飲み、完全に使い切ってしまう前に補充。
ゲイルもまだまだ戦えるだけの魔力量は残っていたが、ここで驕って無様な姿を晒す様な真似はしたくない。
だからこそ、早めの補充を行った。
「ッッッッッ……ゴルルルルルルルアアアアアアアアアアアッ!!!!」
ゲイルの連続で放たれる斬撃波を鬱陶しく思ったのか、ワイズコングは再び攻撃を連発して対処、もしくは防御魔法を連続発動して防ぐ……のではなく、その場でドラミングを行った。
(っ!!?? ゴリラのドラミングって、威嚇したり……自己主張する時とかにやるんじゃなかったっけ?)
目の前で実際に起こった光景を見て驚きを隠せないゼルート。
ふと、前世の薄っすらとした記憶を思い出すも、直ぐにあまり思い出しても意味がない知識だったと切り捨てた。
何故なら……ここはゼルートの前世とは違う世界、異世界である。
故に、前世の常識と異なることが起こっても、特に驚くことではないと自分に言い聞かせる。
「ゲイルの斬撃波をあんな方法で防ぐなんて……あれって、衝撃波? を発生させて防いでるのよね」
「多分そうだと思う。本来の遣い方は違うのかもしれないけど…………って、もうちょっと下がっておいた方が良いかもな」
「? 何故だ、ゼルート」
「…………勘」
全くもって頼りにならない根拠の様に思えて、実は冒険者にとって証明は出来ないが頼りになる根拠である勘。
ルウナたちはとりあえずゼルートに従って更に後方へ下がると、数秒後……何故ゼルートの勘が、もっと後方に下がった方が良いと告げたのか理解した。
(……今鑑定を使ったら、ワイズの文字が消えてたりしないわよね?)
ドラミングの衝撃波でゲイルが放った多数の斬撃波を掻き消した後、ワイズコングは先程までの様に遠距離と近距離攻撃を上手く組み合わせ攻撃ではなく……ザ・ゴリラの様に接近戦のみで攻め始めた。
拳を多用するようになったその姿は、ゴリラのイメージそのもの。
そして……一見雑な戦いになったように見えるにもかかわらず、決してゲイルは戦い易いと感じないのが恐ろしいところであった。
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