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少年期[1022]忘れてた特徴

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「…………」

「そう不貞腐れるなって、ルウナ。この前イレースタイガーと戦っただろ」

ゼルートからそう言われるも、一応納得はしているルウナ。
しかし……視線の先でワイズコングと戦うゲイルの姿を見ると、やはり自分も戦いたかったという思いが湧き上がる。

「解っている、あの虎も強かった。強かったが……どう見ても、あのモンスターとの戦いの方が楽しそうだ」

ワイズコングは奇襲の際に放った攻撃の通り、優れた魔法の腕を有している。

だが、ムキムキボディを無駄にはしておらず、時折杖に岩石を纏ってゲイルの斬撃に抵抗し、ゴリラナックルを放つこともある。

確かにイレースタイガーとの戦闘は非常に緊張感があった。
とはいえ、ルウナにとって心の底から楽しいと思える戦闘かと問われれば、即座に違うと答える。

「まぁ、BランクとAランクという差だけでも当たり前っちゃ当たり前だけど…………本当に強いな、あのゴリラ」

「……どうせ、自分も戦ってみたかったって思ってるんでしょ」

「当然だろ。Bランクの魔物とは遭遇できるだろうと思ってたけど、まさかAランク魔物がいるとは思ってなかったからな」

ゼルートは冒険者ギルドのクエストボードに貼られていた情報なども記憶していたが、ワイズコングの目撃情報に関して記されている洋紙は、一枚もなかった。

(ずっと身を潜めて、人目を避けて行動してたのか、それともここ最近別の地域から移動してきたのか……ワイズって名前を考えると、魔法の……け、研究? をするために、人目を避けて行動してても、おかしくないのかもな)

目の前で並の魔法使いよりも優れた攻撃魔法、防御魔法を発動している光景を見ると、全くもって笑えない光景ではあるのだが、ワイズ……賢者の名を冠するゴリラという事を考えると、どうしても笑いが零れてしまう。

「ふっふっふ……さて、あぁいうのは……亜種じゃなく、希少種に当てはまるのか?」

「どうでしょうね。そもそもゴリラ系の魔物は、ゴブリンやコボルトたちみたいに、上位種に進化する……というよりも、存在そのものが進化する。っていうのが、私の考えね」

「同意見だな。もしかしたらナイトコングとか、ランサーコングとかいるのかもしれないけど、少なくとも俺は父さんたちからもそういった魔物の存在は聞いたことがない」

「そうね。偶に棍棒や、殺した冒険者から奪った斧を持つ個体とかはいるらしいけど、剣や槍を持つ個体がいるって話は聞かないし、棍棒や斧を持ってたとしても名前が変わって進化するって話も聞いたことがない」

「……ゴリラ系の魔物は、強烈な拳、そして半端ではない掴む力がある。それを考えると、基本的にゴリラが武器を持たないというのも納得出来る」

ゴリラを象徴する武器があるからこそ、剣や槍などを基本的に持たない。
そんな当たり前と言えば当たり前の事を口にしたルウナだが……それを聞いて、ゼルートはすっかり頭から抜け落ちていた知識を思い出した。

(そういえば、ゴリラの握力って四百から五百ぐらいあるんだっけ? 前世の話ではあるけど、この世界の魔物の……Aランクの魔物であるゴリラの握力ってなると……いったい幾つになるんだ?)

とりあえず、頭を掴まれたら終わりだという事だけは解る。

(結構前に、アシュラコングってAランク魔物と戦った時は、基本的にパンチしかしてこなかったから、すっかり忘れてたな)

ゴリラとしてのパンチ力に超握力。
そして多数の属性魔法を扱い、当然の様に魔力操作の腕も一流であり、魔力量もAランクに相応しい量を有している。

加えて、ワイズコングは杖に岩石を纏い、時折鈍器の様に扱っている。

「Aランクの魔物という時点で半端じゃない強さを持ってるのは解ってたけど……改めてワイズコングが出来ること、特技とかを考えると……大手のクランが出動してもおかしくない強さね」

「あの強さなら……ワイズコングが何を考えてるのかは知らないけど、ロルパを壊滅できそうではあるよな」

そんな怪物と現在戦闘中のゲイルは……この上なく楽しそうな笑みを浮かべていた。
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