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少年期[1018]致し方なかった

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「ふぅーーーーー」

「お疲れさん、ルウナ。どうよ、結構楽しめた感じ?」

「そうだな………………非常に緊張感はあった」

「でしょうね」

アレナはルウナの言葉に同意しながら、イレースタイガーの血抜きを始めた。

「緊張感、スリル……いや、スリルという言葉の方が正しいのか?」

「それじゃあ、私には解らない感覚ね。でも……その割には、あまり楽しかったって感じの顔じゃないわね」

「うむ。非常にスリルのある戦いではあったが、それでも私の求める戦いとは、少し違った」

決して悪くなかった。
スリルのある戦いは、寧ろの望むところである。

ただ、イレースタイガーは自身の力を活かし、ルウナと真正面からは戦わず、基本的にルウナの死角から攻撃を放っていた。
気配を消して移動し、死角から攻撃を放ち、仕留める。
標的を殺すという目的を考えれば、ベストな手段とも言える。

「ルウナ殿が求めていたのは心が熱くなる戦いであり、この……イレースタイガーはただ、狙った標的を効率的に殺そうとした。故に、ルウナ殿はどこかモヤモヤとした気持ちが残ったのでしょう」

「そう、その通りだゲイル。あいつの爪撃の攻撃力、素早さ……普通に真正面から挑んできてもいいものを」

「ルウナ。今しがたゲイルが言ってくれたじゃない。イレースタイガーは、元々熱い戦いを求めていなかったって」

「むぐっ…………はぁ~~~~、致し方ないということか」

ルウナの個人的な感覚だと、Bランク以上の魔物は自分の強さに対し、それなりのプライドを持っている。

(イレースタイガーにはプライドがなかったのか……それはそれで、最後まで効率的な戦い方を実行し続けるのは凄いことなのだろうが…………あっ、そういえば、挑発していなかったな)

自分とイレースタイガーとの戦闘を振り返るルウナ。
すると、戦闘の最中に、一度も戦闘相手であるイレースタイガーを挑発していなかったことに気付いた。

「そうか……忘れてたな」

「? 何を忘れてたんだ、ルウナ」

「イレースタイガーとの戦闘中に、挑発していなかったと思ってな」

「あぁ~~、なるほど? 挑発してたら、真正面から襲ってきたかもしれないってことか…………解らなくもないけどさ、あれだけ緊張感が高まる状況で戦ってたら、ワンチャンそれが命取りになってたんじゃないか?」

「むぅ~~……」

ゼルートの冷静なツッコミに、ルウナは自分なら挑発しながらでも戦えた! とは思わなかった。

リーダーに言われた通り、イレースタイガーとの戦闘は挑発すれば真正面から……なんて、戦闘時には思い浮かばないほど余裕がなく、スリルのある戦いだった。

「……やはり、致し方なかった、ということになるな」

「だな。にしても、ルウナはよくあいつが仕掛けてくる位置が解ったな。俺らは戦いを外から見てたからある程度把握出来たけど」

「奴の戦い方は直ぐに解った。後は鼻と勘に頼った」

「ぷっ、あっはっは!! そうだな、確かに勘は頼りになる武器だ」

二人が笑い合っている間に血抜きが終了。
ゼルートも参加し、イレースタイガーの死体を解体。

その後、無事に受けた採集依頼を達成するのに必要な薬草を最終成功。
日が暮れる前まで適当に散策を続けるも、ルウナが戦ったイレースタイガーほどの強敵と遭遇することはなかった。


「そういえば、イレースタイガーの素材はどうするの?」

「ん~~~……どうしたい、ルウナ」

ゼルートがパーティーのリーダーではあるが、今回のイレースタイガー戦、戦ったのはルウナ一人だけ。
そのため、ゼルートはまず功労者であるルウナにどうしたいか尋ねた。

「売って良いんじゃないか? 好きなようにしてくれて構わないぞ」

サラッと売ってしまっても構わないと口にしたルウナ。

(……イレースタイガーの毛皮とか使えば、隠密性が高い外套とか作れそうなのだけど……)

売ってしまうのは勿体ないのでは? と思うも、アレナはパーティーメンバーであるゼルート、ルウナ……ゲイル、ラル、ラームに視線を向け、最後は自分に意識を向け……パーティー内にそういった装備を身に付けるのに適した人物がいないと解り、素材に関してあれこれ言おうとはしなかった。

結果、魔石と爪と牙と肉以外は売却することに決まった。
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