上 下
986 / 1,049
連載

少年期[1008]興味は、ある

しおりを挟む
「どうだ、報酬を分配するなら、お前も参加するか?」

思わずゼルートたちを誘ってしまったオーラス。

普通に考えれば……色々とあり得ない。
まず、オーラスは大手クラン、銀獅子の皇のトップであり、普段から組織のトップでありながらめんどくさがりやではあるが、それでもAランクに到達した猛者。

そんな猛者が、受けている指名依頼に他の冒険者を誘うという行為は、色々と勘繰られる可能性が高い。

故に、オーラス以外のメンバーはトップに対し、呆れた視線を向けていた。

「Aランクの、双頭の巨狼、か……………………………………………いや、止めとくわ」

「あら、そうか。でも、なんでや? ゼルートなら色々無視して乗ってくるかと思ったんやけどな」

オーラスも自分が何をゼルートに伝えたのかは理解している。
それは理解しているが、それでもあのゼルートなら、何だかんだで「良いね、参加するわ」と答えるかと予想していた。

「ぶっちゃけ、超興味あるよ。スコルティって名前だっけ。Aランクの巨狼タイプのモンスターとはまだ戦った事がなかったし」

「私も興味があるな」

同じ狼として、ルウナもゼルートと同じくAランク魔物のスコルティにかなり興味を持っていた。

「ルウナ~~~」

「なんだ、アレナは興味を感じないのか?」

「そういう問題じゃないのよ~~」

ゼルート側にも常識人がいると解り、アルゼルガたちはほっと一安心した。

「戦ってみるのは面白そうだけど、それは俺たちだけで戦った場合だ。オーラスたちと一緒に戦ったら、あっさり終わってつまらなくなりそうだからな」

「……ぷっ! あっはっは!!! そうかそうか、確かに俺らとゼルートが一緒に倒そうとしたら、討伐じゃなくてリンチになってまうか!」

「そうなるんじゃね? だって、今回参加してるのって……オーラスも含めて、全員Aランクなんだろ」

強大な力を持つモンスターを相手にリンチという言葉を使うことに疑問を持つ者はいるだろう。

しかし、オーラスは自分で口にした通り、ゼルートたちが戦闘に加わってくれたらリスクが軽くなる。
ただ……戦いという戦いになるか、疑問が生じる。

(というか、そういえばゼルートって悪獣を倒したことがあるんやったな……ゼルートが本気を出してもうたら、一人で事足りてまうな)

一応自分たち、銀獅子の皇が受けた指名依頼という自覚はある。

加えて……おちゃらけており、クランのリーダーにあるまじき提案をゼルートに行ったオーラスだが、それでも大手クランのトップという地位に就こうとも、根っこの冒険者という部分は変っていなかった。

「せっかくそんな奴がいるなら、俺らだけで戦りたいし」

「それが本音かいな。オッケーオッケー、変な事聞いて悪かったな」

「別に良いよ。組織のトップの人間だったら、どうすればなるべく被害を出さずに標的を倒せるか考えるのって当たり前だと思うし」

「ほ~~~ん。あんま組織に属したくないって感じやのに、そういう事は考えられるんやな」

「これでも一応男爵家の……じゃなくて、伯爵家の令息だからね~~」

「おぉ~~、そういえばそうやったな」

非常に失礼ではあるが、本人から言われるまでオーラスはすっかりゼルートが貴族の令息であり、本人も貴族になったことを忘れていた。

(……俺まですっかり忘れていた。そうだったな……ゼルートは伯爵家の令息であり、本人も男爵になったのだったな…………はぁ~~~~。この人は今後気を付けてくれと伝えても、三日後には忘れてるのだろうな)

アルゼルガはこれまでの経験から、こういった事に関して注意したところで無意味だと知っているため、一々オーラスに苦言を呈さなかった。

そして、その後もゼルートたちは呑んで食って騒ぎ、腹八分目を越えるまで食事を楽しむのだった。
しおりを挟む
感想 683

あなたにおすすめの小説

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

殿下、恋はデスゲームの後でお願いします

真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた! いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。 自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。 そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!! 王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!? 短編なのでさらっと読んで頂けます! いつか長編にリメイクします!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。