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兄の物語[134]締め直し、また一歩前に

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「いやぁ~~、悪いな。わざわざ息子の我儘に付き合ってもらってよ」

ダンとの試合を終えた翌日、クライレットたちはグレイスとコーネリアの二人と夕食を食べていた。

「いえ。ミシェルの事を大事に想ってるからこそ、直接確かめたかったのでしょう。僕も妹がいるので、ダンの気持ちは多少なりとも解ります」

「そうか……そう言ってくれっと嬉しいぜ」

ミシェルの親であるグレイスとしても、今回のダンの行動は解らなくもなかった。
なので、後から話を聞いても特に説教などもしなかった。

「ところで、クライレットたちはこれからどうするんだ? まだドーウルスで活動するのか?」

「そうですね。僕としては、まだドーウルスで活動しようかと思っています。ただ、半年ぐらい経てば……以前、ゼルートたちが挑んだダンジョンに挑もうかと考えています」

「ゼルートが挑んだダンジョンってと…………もしかして、ホーリーパレスの方か」

「はい」

以前ゼルートと再会した時、これまでの冒険について語りに語り合った。

その際、ホーリーパレスの話も耳にしており、その時から色々と気になっていた。

「ミシェルも加わって、パーティーの人数が五人になりました。連携を整えたら、そういった場所にも挑戦しても良いかと思って」

「そうだなぁ……中途半端なダンジョンに潜ったとしても、お前らにとっちゃ攻略するまでの難所は探索するところにありそうだからな……コーネリアもそう思わないか?」

「そうですね。クライレット君たちが強いのは元から解っていたけど、ミシェルも加われば……属性持ちのドラゴンが相手でも、Bランクのドラゴンならなんとか出来るでしょう」

コーネリアから視て、贔屓目なしでクライレットたち五人であれば、最悪過ぎるイレギュラーでも起きない限り、まずBランクのドラゴンであれば勝てると判断。

「ミシェルが加入したんなら、Bランクが二体相手でも戦れるんじゃないか? まっ、油断は禁物だと思うがな」

さすがに過剰評価が過ぎるのではないか。
そう思える評価を口にするグレイスだが……実際のところ、全員が本気で戦い……クライレットが最初から鳳竜を抜剣すれば、無理ではなかった。

クライレットたちは鳳竜に関してはグレイスたちに伝えていなかったが、ベテラン……一流の勘なのか、なんとなく大きな大きな奥の手を持ってることに気付いていた。

「そうね。ホーリーパレスのようなダンジョンを攻略するとなれば、リスクを考慮しながら探索していても、そういった戦況に巻き込まれる可能性があるものね~~~」

「あれっすよね。ゼルートからも話は聞いてるんすけど、エボルサーペントっていうヤバい蛇? もいるんすよね」

バルガスの言う通り、ホーリーパレスにはエボルサーペントという場合によっては、Aランククラスの実力を有する怪物に化けるボス魔物がいる。

「バルガス、気が早過ぎるわよ。エボルサーペントは、確か五十階層のボス部屋に出現する魔物でしょう。まずはそこに辿り着くまでが大きな冒険になるわ」

「そういえば、ゼルート君がコロシアムタイプの転移トラップに引っ掛かったって言ってたよね~。あれにはぜった引っ掛からない様に注意したいね~~」

「あぁ~~~~~……そう、だな」

戦闘大好きなバルガスも、ゼルートが体験したコロシアムタイプの転移トラップで遭遇するモンスターたちには勝てる気がしないため、さすがにフローラの考えに同意だった。

「はっはっは!!! ちょろっと聞いたけど、ありゃ普通は速攻で帰還石を使うパターンだな」

「皆さん、勇気と無謀を履き違えてはいけませんよ」

「「「「「はい!」」」」」

ゼルートはコロシアムを全てクリアした報酬として、ランク八の武器を二つとランク七の武器一つ、ランク七のアイテムという豪華すぎる報酬を手に入れたが、それを手に入れるには……少なくとも、地獄を二回ほど越えなければならない。

(勇気と無謀は履き違えない……それでも、越えなければならない覚悟はしとかないとね)

楽しい夕食を終えた翌日、クライレットは覚悟というふんどしを締め直し、また一歩……前に進み始めた。
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