938 / 1,049
連載
兄の物語[94]七光りではないと証明
しおりを挟む
「あら、クライレットにペトラにバルガス、フローラ。やっぱり、あなた達も参加するのね」
十五分前に入室してきた冒険者は、四人の知り合いであり、現役Aランク冒険者を両親に持つミシェラだった。
「ミシェラ! 久しぶりね。元気にしてた?」
「えぇ、勿論。といっても、冒険者らしくそれなりに無茶はしてたけどね」
年齢を考慮すれば、ゼルートと出会った当時……その時点で優秀な魔法がメインの後衛職であることに変わりはなかった。
しかし、ミシェラはややクライレットと似ており、両親が共にAランク冒険者。
ミシェラには冒険者以外の道に進む選択肢もあったのだが、それでも両親と同じ冒険者という職業を選んだ。
となれば、やはり両親であるグレイスとコーネリアとしては、大事に大事に……全てを教え切れるまで、大事に育ててきた。
それは決して悪い事ではなく、子を持つ親であれば寧ろ当然の育て方と言えよう。
だが、どうしてもミシェラ……もう一人の子供であるダンには親の七光りというイメージが付きまとう。
順調に実力を伸ばしていたミシェラだが、それはAランクの両親と共に行動しているから、ソロ……他の冒険者と共に行動するのであれば、思った通りの成果を上げられないのではないか。
そういった他者の評価がどうしても付き纏う。
「僕たちと似た様な理由かな」
「ふふ、そうね。私なりに頑張って頑張って……ようやく、ここまでこれた」
「もしかしなくても、ミシェラもBランクの魔物を殺ってきたのか?」
「えぇ、そうよ。両親とじゃなく、他の歳の近い冒険者たちと一緒にね」
「歳の近い、ね……それ、結構大変じゃなかったの?」
自分たち程強く、若い冒険者はそうそういない。
そんなペトラの考えは……決して驕りではなく、純然たる事実。
クライレットたち四人だからこそ、誰かが重傷を負うことなくアインツワイバーンを討伐することが出来た。
「そうね。これまでも同世代の冒険者たちとは何度も一緒に魔物を倒してきたけど、Bランクの魔物と戦ったのは数えるほど……逃げるのならまだしも、討伐するとなると……本当に頭を酷使したわ」
ミシェラは後衛職。
前衛が、それとも後衛の者が指揮を執るといった明確な決まりはない。
だが、パーティーのリーダーとは別に、戦場で指揮を取るのは全体が見渡せる後衛職の者が取ることが多い。
ミシェラは先日顔見知りのパーティーと組んでBランクの魔物と戦った。
既にそのパーティーには指揮官と呼べる者はいた。
しかし、敵対する相手がBランク魔物という強敵になれば、随時的確な指揮を飛ばせるとは限らない。
その際、ミシェラは指揮補助を行いながら、魔法職としての腕だけではなく、指揮官としての力も発揮し……ギルドから課された依頼をクリアした。
「ペトラたちは……多分だけど、倒すよりも標的を倒すまでに面倒があった……とか?」
「ご明察よ、ミシェラ」
ミシェラから見て、先日共に行動した冒険者たちよりも、クライレットたちの方が一回りも二回りも強く視える。
だが、若く強い存在というのは、非常に面倒に好かれる。
それはミシェラも身を持って体験していた。
「面倒っつ~と…………あぁ~~~、あいつらか。俺たちが倒すから、お前たちは関わるんじゃねぇ!!! 的な事を言ってきた奴らか」
「そう、そいつらよ。あぁいうのって、本当に意味が解らない連中よね。そういう気持ちを持ってるなら、自分たちの方が早く討伐してやるって気持ちで動けば良いのに」
面倒な連中に絡まれることなど、もはや日常茶飯事。
気にしていても仕方ない……というのはペトラも解ってはいるが、やはり思い出すとそれはそれでイライラしてしまう。
その後も互いの近況について話し合っていると、集合時間五分前に最後の二人が入室。
十五分前に入室してきた冒険者は、四人の知り合いであり、現役Aランク冒険者を両親に持つミシェラだった。
「ミシェラ! 久しぶりね。元気にしてた?」
「えぇ、勿論。といっても、冒険者らしくそれなりに無茶はしてたけどね」
年齢を考慮すれば、ゼルートと出会った当時……その時点で優秀な魔法がメインの後衛職であることに変わりはなかった。
しかし、ミシェラはややクライレットと似ており、両親が共にAランク冒険者。
ミシェラには冒険者以外の道に進む選択肢もあったのだが、それでも両親と同じ冒険者という職業を選んだ。
となれば、やはり両親であるグレイスとコーネリアとしては、大事に大事に……全てを教え切れるまで、大事に育ててきた。
それは決して悪い事ではなく、子を持つ親であれば寧ろ当然の育て方と言えよう。
だが、どうしてもミシェラ……もう一人の子供であるダンには親の七光りというイメージが付きまとう。
順調に実力を伸ばしていたミシェラだが、それはAランクの両親と共に行動しているから、ソロ……他の冒険者と共に行動するのであれば、思った通りの成果を上げられないのではないか。
そういった他者の評価がどうしても付き纏う。
「僕たちと似た様な理由かな」
「ふふ、そうね。私なりに頑張って頑張って……ようやく、ここまでこれた」
「もしかしなくても、ミシェラもBランクの魔物を殺ってきたのか?」
「えぇ、そうよ。両親とじゃなく、他の歳の近い冒険者たちと一緒にね」
「歳の近い、ね……それ、結構大変じゃなかったの?」
自分たち程強く、若い冒険者はそうそういない。
そんなペトラの考えは……決して驕りではなく、純然たる事実。
クライレットたち四人だからこそ、誰かが重傷を負うことなくアインツワイバーンを討伐することが出来た。
「そうね。これまでも同世代の冒険者たちとは何度も一緒に魔物を倒してきたけど、Bランクの魔物と戦ったのは数えるほど……逃げるのならまだしも、討伐するとなると……本当に頭を酷使したわ」
ミシェラは後衛職。
前衛が、それとも後衛の者が指揮を執るといった明確な決まりはない。
だが、パーティーのリーダーとは別に、戦場で指揮を取るのは全体が見渡せる後衛職の者が取ることが多い。
ミシェラは先日顔見知りのパーティーと組んでBランクの魔物と戦った。
既にそのパーティーには指揮官と呼べる者はいた。
しかし、敵対する相手がBランク魔物という強敵になれば、随時的確な指揮を飛ばせるとは限らない。
その際、ミシェラは指揮補助を行いながら、魔法職としての腕だけではなく、指揮官としての力も発揮し……ギルドから課された依頼をクリアした。
「ペトラたちは……多分だけど、倒すよりも標的を倒すまでに面倒があった……とか?」
「ご明察よ、ミシェラ」
ミシェラから見て、先日共に行動した冒険者たちよりも、クライレットたちの方が一回りも二回りも強く視える。
だが、若く強い存在というのは、非常に面倒に好かれる。
それはミシェラも身を持って体験していた。
「面倒っつ~と…………あぁ~~~、あいつらか。俺たちが倒すから、お前たちは関わるんじゃねぇ!!! 的な事を言ってきた奴らか」
「そう、そいつらよ。あぁいうのって、本当に意味が解らない連中よね。そういう気持ちを持ってるなら、自分たちの方が早く討伐してやるって気持ちで動けば良いのに」
面倒な連中に絡まれることなど、もはや日常茶飯事。
気にしていても仕方ない……というのはペトラも解ってはいるが、やはり思い出すとそれはそれでイライラしてしまう。
その後も互いの近況について話し合っていると、集合時間五分前に最後の二人が入室。
389
お気に入りに追加
9,024
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
殿下、恋はデスゲームの後でお願いします
真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた!
いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。
自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。
そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!!
王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!?
短編なのでさらっと読んで頂けます!
いつか長編にリメイクします!
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。