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兄の物語[86]偶然じゃない証明
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「自分たちが目指してる場所以外のあれこれを意識しても仕方ねぇ、か。かっちょ良い事言うじゃねぇか」
「そうですかね。ただ、僕が思った事を言っただけというか…………貴族の令息として生きてきた時期、学園の学生として生きてきた時期、冒険者として活動を始めてから……ある程度環境が三回ほど変わりましたが、それで良く解ったことがあります」
「ほぅほぅ。環境が変わったことで気付いた事、か。そいつは超気になるな」
早速酔いが回ってるのか、ベテラン冒険者は身を乗り出しながら、クライレットが環境の変化で気付いた事に耳を傾ける。
それは同じテーブルに居る冒険者たちだけではなく、近くのテーブルに座っている冒険者たちも同じだった。
「どれだけ真面目に振舞っていても、人間的に合わない者、自分の事を因縁など関係無しに嫌ってくる者がいるという事です」
決して……クライレットは棘を指すつもりはなかった。
しかし、因縁など関係無しに嫌ってくる者、という言葉は……どう見ても良いか悪いかで言えば、悪いと思えてしまう。
そんな無意識で自分に絡んできた若手たちに棘を放ちながらも話を進めるクライレット。
「三回も環境が変わった結果、これが解りました。つまり、ただの偶然ではないという証明になります」
「そいつは…………そう、だな。わりと心理ってやつだな」
「でしょう。世の中には例外的な人物も存在するかもしれませんが、関わる人全員と仲良く出来る、もしくは一般的な悪くないと思える関係を築くのは不可能なんですよ」
「だからこそ、目指す場所や目標だけを見て強くなろうとしてる、って訳か」
「基本的には、そんなところですね」
「まだ若いのに悟ってんな~~~~~。ペトラたちも似た様なもんか?」
質問を投げられた三人は数秒ほど考え込み、まずはペトラが一番最初に口を開いた。
「そうですね。私の場合、向けてほしくない好意というのもありましたが、一応クライレットと同じく度々起こる問題に対して、仕方ないと受け入れてます」
「へぇ~~~~。ペトラ、お前あぁいうのを仕方ないって思ってたんだな」
「最初こそ何度もイラついてたわ」
ペトラの場合、女性でエルフ特有の目麗しい見た目ということもあって、彼女に惚れた男性冒険者……に気がある女性冒険者からも負の視線を向けられ、時には絡まれることもあり、それなりに嫌な思いでは積もっていた。
「でも、何度もそういった輩を倒しても、行く先々で似た様な絡まれ方をするでしょう。もう……あれよ。スピード出世した者の定めとして受け入れてるわ。そういうあんたはどうなのよ、バルガス」
「どうって、イキってるバカな連中を叩きのめせるんだろ。超楽しい瞬間じゃねぇか。そりゃあ、CランクとかBランクのモンスターと戦ってる時の方がよっぽどワクワクすっけど、それはそれでスカッとして気持ちいじゃねぇか」
「……そうね。苛立ちとスッキリ感は一体してるわね」
積極的にそういったバカを叩き潰していきたいとは思っていないものの、あの時のスッキリ感は……一種の快感であると認めるペトラ。
「だろ!!! つか、俺はお前らがマジで侮辱された時ぐらいしか怒りの感情ってのが湧かねぇからな」
「ん~~~…………私も、同じ感じかな。自分の事はあまり気にしないけど、皆の事を悪く言われたらカチンと来て、ハンマーでそいつの頭を叩き潰したくなるかな」
「「「「「っ……」」」」」
フローラはハーフドワーフ。
肌の色からそれが解るため、見た目以上の力強さを感じさせる彼女に……もし打たれたらとイメージしてしまった同業者の何名かの体が震えた。
「なっはっは!!!! まっ、残念ながらお前らに絡む連中は……これからも後を絶たねぇだろうな。そうだな……後十年後ぐらいしたら、お前らがAランクでも嘗めた態度で絡んでくる奴はいなくなるか?」
「……そのぐらい掛かりそうですね。ですが、それはなんと言うか…………良い歳になってるので、ただ年齢が解決したってだけに思えますね」
長寿であるエルフのペトラは別だが、少なくとも二十代後半という年齢は、クライレットにとって良い歳であった。
「そうですかね。ただ、僕が思った事を言っただけというか…………貴族の令息として生きてきた時期、学園の学生として生きてきた時期、冒険者として活動を始めてから……ある程度環境が三回ほど変わりましたが、それで良く解ったことがあります」
「ほぅほぅ。環境が変わったことで気付いた事、か。そいつは超気になるな」
早速酔いが回ってるのか、ベテラン冒険者は身を乗り出しながら、クライレットが環境の変化で気付いた事に耳を傾ける。
それは同じテーブルに居る冒険者たちだけではなく、近くのテーブルに座っている冒険者たちも同じだった。
「どれだけ真面目に振舞っていても、人間的に合わない者、自分の事を因縁など関係無しに嫌ってくる者がいるという事です」
決して……クライレットは棘を指すつもりはなかった。
しかし、因縁など関係無しに嫌ってくる者、という言葉は……どう見ても良いか悪いかで言えば、悪いと思えてしまう。
そんな無意識で自分に絡んできた若手たちに棘を放ちながらも話を進めるクライレット。
「三回も環境が変わった結果、これが解りました。つまり、ただの偶然ではないという証明になります」
「そいつは…………そう、だな。わりと心理ってやつだな」
「でしょう。世の中には例外的な人物も存在するかもしれませんが、関わる人全員と仲良く出来る、もしくは一般的な悪くないと思える関係を築くのは不可能なんですよ」
「だからこそ、目指す場所や目標だけを見て強くなろうとしてる、って訳か」
「基本的には、そんなところですね」
「まだ若いのに悟ってんな~~~~~。ペトラたちも似た様なもんか?」
質問を投げられた三人は数秒ほど考え込み、まずはペトラが一番最初に口を開いた。
「そうですね。私の場合、向けてほしくない好意というのもありましたが、一応クライレットと同じく度々起こる問題に対して、仕方ないと受け入れてます」
「へぇ~~~~。ペトラ、お前あぁいうのを仕方ないって思ってたんだな」
「最初こそ何度もイラついてたわ」
ペトラの場合、女性でエルフ特有の目麗しい見た目ということもあって、彼女に惚れた男性冒険者……に気がある女性冒険者からも負の視線を向けられ、時には絡まれることもあり、それなりに嫌な思いでは積もっていた。
「でも、何度もそういった輩を倒しても、行く先々で似た様な絡まれ方をするでしょう。もう……あれよ。スピード出世した者の定めとして受け入れてるわ。そういうあんたはどうなのよ、バルガス」
「どうって、イキってるバカな連中を叩きのめせるんだろ。超楽しい瞬間じゃねぇか。そりゃあ、CランクとかBランクのモンスターと戦ってる時の方がよっぽどワクワクすっけど、それはそれでスカッとして気持ちいじゃねぇか」
「……そうね。苛立ちとスッキリ感は一体してるわね」
積極的にそういったバカを叩き潰していきたいとは思っていないものの、あの時のスッキリ感は……一種の快感であると認めるペトラ。
「だろ!!! つか、俺はお前らがマジで侮辱された時ぐらいしか怒りの感情ってのが湧かねぇからな」
「ん~~~…………私も、同じ感じかな。自分の事はあまり気にしないけど、皆の事を悪く言われたらカチンと来て、ハンマーでそいつの頭を叩き潰したくなるかな」
「「「「「っ……」」」」」
フローラはハーフドワーフ。
肌の色からそれが解るため、見た目以上の力強さを感じさせる彼女に……もし打たれたらとイメージしてしまった同業者の何名かの体が震えた。
「なっはっは!!!! まっ、残念ながらお前らに絡む連中は……これからも後を絶たねぇだろうな。そうだな……後十年後ぐらいしたら、お前らがAランクでも嘗めた態度で絡んでくる奴はいなくなるか?」
「……そのぐらい掛かりそうですね。ですが、それはなんと言うか…………良い歳になってるので、ただ年齢が解決したってだけに思えますね」
長寿であるエルフのペトラは別だが、少なくとも二十代後半という年齢は、クライレットにとって良い歳であった。
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