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兄の物語[76]教育

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「……醜いプライドって事かしら」

「は、ははは。悪い意味で言うと、そういう言葉になるかな」

「だっはっは!!! ペトラは相変わらずバカには辛辣だな~~」

自分もそのバカに入っていると気付かずに笑うバルガス……三人とも面倒なのでツッコまなかった。

「バカというか、あれは厄介なクソバカ……凝り固まった、と言うのは少し違うわね。向上心を履き違えているというべきかしら?」

「そうだね。本当なら、僕たちなんかに構わず、自分たちが強くなってアインツワイバーンを倒すことに集中してれば良い」

「でもあの人達は、そういう考えに至らなかった訳だよね~~……クライレットはなんでだと思う?」

フローラの問いに対して、クライレットは考え込むことはなく、その問いに関して予め答えを既に持っていた。

「教育の有無だろうね」

「教育の有無?」

「個人的な考えではあるけどね。勿論、教育を受けているからといって、貴族の令息や令嬢が全員清く正しいとは言えないけどね」

過去に家族をバカにされ、大勢の前でその子供たちを叩き潰した経験があるクライレット。

教育内容が平民よりも充実してるとはいえ、貴族の子供たちが受ける教育……それそのものが正しいとも言い難い部分はある。

「何か成し遂げたいことがあるなら、誰かを蹴落とそうとするんじゃなくて、自分が前に進まなければ結局は意味がない。本当の意味で、それを教えてもらった人は少ないと思うんだ」

「正しい言葉ね。でも……これまでの経験を振り返ってみると、全員がその心構えを持ってるとは、言い難いわね」

「さっき、ペトラが教育云々について話しただろ。あれに関して……僕は、そこに関しては教えるべきだと思うんだ」

冒険者人生をスタートさせて、まだベテランという域に達してないクライレットだが……ある日、訪れた街で知り合い、ある程度仲良くなった同世代の者が、数日後に魔物との戦闘で亡くなったことがあった。

偉そうな態度で、自分よりも弱い者を虐げていたクソみたいなガキ大将タイプのルーキーが、同じ魔物との戦闘で亡くなったという話も聞いたことがある。

「僕たち冒険者は、活動を続ける限り何度も魔物と、盗賊と戦う。どういった生き方をしていても、結局は自分自身が強くなければ、生き残れないんだ……だから、個人的にそういった心構えを伝えることは、大事だと思う」

「……クライレットは相変わらず難しい事を考えてんな~~~」

「バルガス、あんたはもう少し常日頃から考えて生きるべきなのよ。でも、そうね……教えられなければ、気付けないことはあるものね」

本当に強い奴が、生き残る意志がある者だけが生き残り続ければ、それで良いのではないか?

といった考えも、ペトラの中でゼロではなかった。
それでも、故郷を飛び出して冒険者になったペトラは、事前に知っておかなければピンチになっていたであろう経験が何回もあった。

「でもさ、クライレット。あいつらが私たちの邪魔をしてきたら、どうするの?」

「その時は……どういった内容なのかにもよるけど、そうだね…………全員の両脚を折って、その場に放置するかな」

普段はクールで優しい紳士な男であるが、アインツワイバーンとの戦闘を邪魔されるという事は、仲間たちの危機に繋がってもおかしくない。
仲間の命が危機に晒されるとなれば……鬼にでも悪魔にでもなる。

本音を零すのであれば、邪魔をして来た連中の首を刎ね飛ばしたいところだが、明確に自分たちの命を狙って来てない場合であれば……過剰防衛になるかもしれない。

だが、クライレットは首を斬られて死ぬよりも辛い選択を……臆することなく取れる。

「っ、へっへっへ。良いんじゃねぇの? バカが行った行動が、そのまま返ってくるだけだろ」

「良い選択ね」

「それが一番効きそうだね~~~」

そしてそれは……パーティー内で、クライレットだけではなかった。
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