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兄の物語[74]繰り返す……だけども
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「…………っ、す、好き勝手言いやがって」
「そりゃあ俺ら、別にお前らとはただの同業者だしな!」
普段通り、良い笑顔を浮かべながら正論パンチをぶちかますバルガス。
当然のことながら、彼には全く悪気はなく、煽るつもりなど一ミリもない。
「受付嬢さん、今日私たちはアインツワイバーンの討伐の為に訪れた、それを知らせる為だけに来ました」
「あ、はい!! ほ、本当にありがとうございます!!!」
ペトラたちからすれば、冒険者ギルドに訪れたのは、本当にそのためだけ。
ギルドで、わざわざ同世代の同業者たちと喧嘩するつもりなど、一ミリもなかった。
ただ……ペトラたちにも、冒険者としてのプライドはあるため、嘗められたままで終われないという気持ちはあり……結果こうなってしまっただけである。
「それでは」
「ま、待ちやがれ!!!!」
「待つ必要はありません。あなた、もう少し冷静になりなさい。もし……その態度が素なのであれば、先輩たちから指導を受けた方が良いわ。世の中……自分を中心に回っている訳ではないのだから」
それだけ最後に言い残すと、ペトラたちはギルドから出て行った。
「まっ、ぐっ……」
「そこら辺で止めとけっての」
不意に食らったバルガスの蹴りによるダメージはまだ癒えておらず、現在の状態ではベストパフォーマンスを発揮するのは不可能であるのは間違いない。
「あんたらは……悔しくねぇのかよ!!!!」
アインツワイバーンによる被害は……この街で活動する冒険者たちに被害を及ぼしていた。
「悔しいっちゃ悔しいかもな。けどよ、折角ドーウルスで活動してくれてる冒険者がわざわざ来てくれたんだ。任せりゃ良いじゃねぇか」
「悔しさをあるけど、その通りだな。ワイバーンと言えど、Bランクの進化した個体だ。万全を期して挑んだとしても、仮に倒せてもほぼ全滅するだろう」
「冒険者が! 負けんのに、死ぬのにビビッてどうすんだよ!!!!」
青年の……心からの叫びに、ベテラン達は自分たちの若い頃を思い出し、苦笑いを浮かべずにはいられなかった。
今と同じ状況ではないにしろ、恐怖に……死にビビるなんて冒険者じゃない!!! みたいな考えは違うと先輩から諭された経験があった。
だが、そう諭された頃には当然納得出来ず、一定の時期になるまではずっと変わらず……ふと、ベテランと言われる域に足を踏み入れてきたタイミングで、先輩の言葉を身に染みるようになった。
あの頃自分たちを諭してくれた先輩たちの言葉は、全く間違ってなかった。
何故あの頃の自分たちは、こんな簡単な事を理解出来なかったんだ……そう思った。
そして今、目の前にあの頃の自分たちがいる。
歴史は繰り返す。
そんなどこかで聞いた言葉が脳内に思い浮かび、もう一度苦笑いが零れてしまう。
歴史は繰り返すされる……それを、身を持って体験した。
であれば……わざわざ諭さなくても、伝えなくても良いのでは?
といった考え一瞬、ベテラン達の頭の中に浮かぶ。
冒険者とは、超自己責任な職業。
目の前のルーキーたちが意を決してBランクの亜竜、アインツワイバーンに挑んで死のうとも、それは彼等の自由であり、自己責任である。
(いや……駄目だな。無駄かもしれねぇって解ってても、それを伝えなきゃならねぇのが、俺ら大人の役目なんだろうな)
(はぁ~~~、嫌だ嫌だ。私も歳を取ったね~~、こんな事を考えるなんてさぁ……でも、誰かが伝えないと頭の片隅に残らないものね)
(多分…………というか、絶対にあいつらは嫌な顔をするだろうけど……そういう顔や感情を向けられるのも含めて、俺たちの仕事なんだろうな)
怒りに満ちたルーキーたちがギルドから出ていく前に、ベテラン達はとりあえず一杯奢ってやるからと誘い、ルーキーたちを併設されている酒場に留め……嫌な顔をされようとも、自分たちが若い頃に伝えられたことを同じように伝え始めた。
「そりゃあ俺ら、別にお前らとはただの同業者だしな!」
普段通り、良い笑顔を浮かべながら正論パンチをぶちかますバルガス。
当然のことながら、彼には全く悪気はなく、煽るつもりなど一ミリもない。
「受付嬢さん、今日私たちはアインツワイバーンの討伐の為に訪れた、それを知らせる為だけに来ました」
「あ、はい!! ほ、本当にありがとうございます!!!」
ペトラたちからすれば、冒険者ギルドに訪れたのは、本当にそのためだけ。
ギルドで、わざわざ同世代の同業者たちと喧嘩するつもりなど、一ミリもなかった。
ただ……ペトラたちにも、冒険者としてのプライドはあるため、嘗められたままで終われないという気持ちはあり……結果こうなってしまっただけである。
「それでは」
「ま、待ちやがれ!!!!」
「待つ必要はありません。あなた、もう少し冷静になりなさい。もし……その態度が素なのであれば、先輩たちから指導を受けた方が良いわ。世の中……自分を中心に回っている訳ではないのだから」
それだけ最後に言い残すと、ペトラたちはギルドから出て行った。
「まっ、ぐっ……」
「そこら辺で止めとけっての」
不意に食らったバルガスの蹴りによるダメージはまだ癒えておらず、現在の状態ではベストパフォーマンスを発揮するのは不可能であるのは間違いない。
「あんたらは……悔しくねぇのかよ!!!!」
アインツワイバーンによる被害は……この街で活動する冒険者たちに被害を及ぼしていた。
「悔しいっちゃ悔しいかもな。けどよ、折角ドーウルスで活動してくれてる冒険者がわざわざ来てくれたんだ。任せりゃ良いじゃねぇか」
「悔しさをあるけど、その通りだな。ワイバーンと言えど、Bランクの進化した個体だ。万全を期して挑んだとしても、仮に倒せてもほぼ全滅するだろう」
「冒険者が! 負けんのに、死ぬのにビビッてどうすんだよ!!!!」
青年の……心からの叫びに、ベテラン達は自分たちの若い頃を思い出し、苦笑いを浮かべずにはいられなかった。
今と同じ状況ではないにしろ、恐怖に……死にビビるなんて冒険者じゃない!!! みたいな考えは違うと先輩から諭された経験があった。
だが、そう諭された頃には当然納得出来ず、一定の時期になるまではずっと変わらず……ふと、ベテランと言われる域に足を踏み入れてきたタイミングで、先輩の言葉を身に染みるようになった。
あの頃自分たちを諭してくれた先輩たちの言葉は、全く間違ってなかった。
何故あの頃の自分たちは、こんな簡単な事を理解出来なかったんだ……そう思った。
そして今、目の前にあの頃の自分たちがいる。
歴史は繰り返す。
そんなどこかで聞いた言葉が脳内に思い浮かび、もう一度苦笑いが零れてしまう。
歴史は繰り返すされる……それを、身を持って体験した。
であれば……わざわざ諭さなくても、伝えなくても良いのでは?
といった考え一瞬、ベテラン達の頭の中に浮かぶ。
冒険者とは、超自己責任な職業。
目の前のルーキーたちが意を決してBランクの亜竜、アインツワイバーンに挑んで死のうとも、それは彼等の自由であり、自己責任である。
(いや……駄目だな。無駄かもしれねぇって解ってても、それを伝えなきゃならねぇのが、俺ら大人の役目なんだろうな)
(はぁ~~~、嫌だ嫌だ。私も歳を取ったね~~、こんな事を考えるなんてさぁ……でも、誰かが伝えないと頭の片隅に残らないものね)
(多分…………というか、絶対にあいつらは嫌な顔をするだろうけど……そういう顔や感情を向けられるのも含めて、俺たちの仕事なんだろうな)
怒りに満ちたルーキーたちがギルドから出ていく前に、ベテラン達はとりあえず一杯奢ってやるからと誘い、ルーキーたちを併設されている酒場に留め……嫌な顔をされようとも、自分たちが若い頃に伝えられたことを同じように伝え始めた。
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