上 下
911 / 1,043
連載

兄の物語[67]逆じゃない?

しおりを挟む
「お、おい……あの二人、ヤバくないか?」

「ちょっと派手にやり過ぎな気がしなくもないけど……でもさ、二人とも目立った傷とかないよね」

「ってことは、あの二人にとっちゃ、あれが普通だってのか? さすがにそれは……普通じゃ無さ過ぎるだろ」

ある程度クライレットたちの名はドーウルス内でも広まってはいるが、入ってくる冒険者がそれなりに多いため、まだ四人の名前と顔が一致しない冒険者がそれなりにいる。

ただ、そんな冒険者たちに、ドーウルスを拠点に活動している心優しいベテラン冒険者は、あまりバカな絡み方をしてはいけない冒険者として四人を紹介する。

全員が冒険者として活動を始めて数年とは思えない戦闘力を有しており、まず下手に実力があるルーキーが絡んでも、痛い目を見るのは明らか。
加えてパーティーメンバーの中で、特攻隊長であるバルガスはそういった連中を相手にすることを嫌っておらず、嬉々として叩きのめそうとする。

そして普段はクールな態度だが、パーティーメンバーの事を侮辱されるようなことがあれば、冷静にキレ……冷静な言葉と実力で現実を叩きつけてくる。
他二人も女だと思って油断していれば、間違いなく返り討ちにされてしまい……ペトラからは絶対零度の眼を向けられながら罵られ、フローラからは笑顔で毒を吐かれてしまう。

「ふぅ~~~~。クライレット、ちょっと休憩しても、良いかな」

「そうだね。そうしようか」

訓練が始まってから五分以上が経過し、ようやく二人は動きを止めた。

「クライレット、魔力の消費量は大丈夫?」

「あぁ、問題無いよ。もう一回か二回は出来る」

「……何度も思うけど、やっぱりクライレットの魔力総量ってちょっとおかしいよね」

戦闘中、クライレットは身体強化系のスキルを使用するだけではなく、魔力の斬撃刃や風の攻撃魔法なども使用していた。
にもかかわらず、クライレットの表情にはあまり疲れが浮かんでいない。

「子供の頃から頑張ってたから、かな」

「貴族の子供って、強制的に頑張らなきゃいけない時期みたいなのが、あるんじゃないの?」

「そう、だね……学園に居る時は、他の同世代の人たちの話を聞く機会が多かった…………それを考えると、やっぱりゼルートっていう、偉大な弟がいたからかな」

「実際にあの攻撃っぷりを見たから解るけど、クライレットは本当に彼のことを尊敬してるというか、なんと言うか」

ゼルートが特大攻撃魔法を発動するところを見ただけではなく、実際にクライレットの紹介で会ったこともある。

(まぁ、超超超超超詐欺人間、冒険者って感じだから色々と解らなくはないけど~~)

ある程度視る眼を持っているフローラからすれば、ゼルートは超絶詐欺人間といった印象が一番であった。

「ゼルートもゼルートで、俺の事を色々と褒めてくれてたんだ。俺は……子供の頃から、割と考える力があったみたいなんだけど、それでも更に強くなる切っ掛けみたいなアドバイスをくれたのは、いつもゼルートだった」

(このルーキーの中でもトップクラス……もしかしたらトップかもしれないクライレットにアドバイスを送れる歳下の子供、か…………うん、やっぱり大きな声では言えないけど、超詐欺人間だよね)

フローラの中で、ゼルートはあまりにも規格外過ぎる人物なため、ルーキーという枠の中から完全に外れていた。

冷静に、冷静に考えてみると、クライレットが十歳以下の年齢の時……弟であるゼルートは、更に歳下。
普通に考えれば、クライレットがゼルートに何かをアドバイスするのはおかしくないが、逆はおかしい。
おかしくないところがないと断言出来るほど、自然ではない。

(けど、これだけ下に恐ろしい怪物がいるにもかかわらず、幸せそうに弟の事を語ってるんだから……それに関してあれこれ口を出すのは、やぼってものだよね)

数十分間休憩を取った後、フローラは再度クライレットと訓練を始めた。
しおりを挟む
感想 680

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。