上 下
911 / 1,026
連載

兄の物語[67]逆じゃない?

しおりを挟む
「お、おい……あの二人、ヤバくないか?」

「ちょっと派手にやり過ぎな気がしなくもないけど……でもさ、二人とも目立った傷とかないよね」

「ってことは、あの二人にとっちゃ、あれが普通だってのか? さすがにそれは……普通じゃ無さ過ぎるだろ」

ある程度クライレットたちの名はドーウルス内でも広まってはいるが、入ってくる冒険者がそれなりに多いため、まだ四人の名前と顔が一致しない冒険者がそれなりにいる。

ただ、そんな冒険者たちに、ドーウルスを拠点に活動している心優しいベテラン冒険者は、あまりバカな絡み方をしてはいけない冒険者として四人を紹介する。

全員が冒険者として活動を始めて数年とは思えない戦闘力を有しており、まず下手に実力があるルーキーが絡んでも、痛い目を見るのは明らか。
加えてパーティーメンバーの中で、特攻隊長であるバルガスはそういった連中を相手にすることを嫌っておらず、嬉々として叩きのめそうとする。

そして普段はクールな態度だが、パーティーメンバーの事を侮辱されるようなことがあれば、冷静にキレ……冷静な言葉と実力で現実を叩きつけてくる。
他二人も女だと思って油断していれば、間違いなく返り討ちにされてしまい……ペトラからは絶対零度の眼を向けられながら罵られ、フローラからは笑顔で毒を吐かれてしまう。

「ふぅ~~~~。クライレット、ちょっと休憩しても、良いかな」

「そうだね。そうしようか」

訓練が始まってから五分以上が経過し、ようやく二人は動きを止めた。

「クライレット、魔力の消費量は大丈夫?」

「あぁ、問題無いよ。もう一回か二回は出来る」

「……何度も思うけど、やっぱりクライレットの魔力総量ってちょっとおかしいよね」

戦闘中、クライレットは身体強化系のスキルを使用するだけではなく、魔力の斬撃刃や風の攻撃魔法なども使用していた。
にもかかわらず、クライレットの表情にはあまり疲れが浮かんでいない。

「子供の頃から頑張ってたから、かな」

「貴族の子供って、強制的に頑張らなきゃいけない時期みたいなのが、あるんじゃないの?」

「そう、だね……学園に居る時は、他の同世代の人たちの話を聞く機会が多かった…………それを考えると、やっぱりゼルートっていう、偉大な弟がいたからかな」

「実際にあの攻撃っぷりを見たから解るけど、クライレットは本当に彼のことを尊敬してるというか、なんと言うか」

ゼルートが特大攻撃魔法を発動するところを見ただけではなく、実際にクライレットの紹介で会ったこともある。

(まぁ、超超超超超詐欺人間、冒険者って感じだから色々と解らなくはないけど~~)

ある程度視る眼を持っているフローラからすれば、ゼルートは超絶詐欺人間といった印象が一番であった。

「ゼルートもゼルートで、俺の事を色々と褒めてくれてたんだ。俺は……子供の頃から、割と考える力があったみたいなんだけど、それでも更に強くなる切っ掛けみたいなアドバイスをくれたのは、いつもゼルートだった」

(このルーキーの中でもトップクラス……もしかしたらトップかもしれないクライレットにアドバイスを送れる歳下の子供、か…………うん、やっぱり大きな声では言えないけど、超詐欺人間だよね)

フローラの中で、ゼルートはあまりにも規格外過ぎる人物なため、ルーキーという枠の中から完全に外れていた。

冷静に、冷静に考えてみると、クライレットが十歳以下の年齢の時……弟であるゼルートは、更に歳下。
普通に考えれば、クライレットがゼルートに何かをアドバイスするのはおかしくないが、逆はおかしい。
おかしくないところがないと断言出来るほど、自然ではない。

(けど、これだけ下に恐ろしい怪物がいるにもかかわらず、幸せそうに弟の事を語ってるんだから……それに関してあれこれ口を出すのは、やぼってものだよね)

数十分間休憩を取った後、フローラは再度クライレットと訓練を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ

Lunaire
SF
「強くなくても楽しめる、のんびりスローライフ!」 フリーターの陽平が、VRMMO『エターナルガーデンオンライン』で目指すのは、テイマーとしてモンスターと共にスローライフを満喫すること。戦闘や冒険は他のプレイヤーにお任せ!彼がこだわるのは、癒し系モンスターのテイムと、美味しい料理を作ること。 ゲームを始めてすぐに出会った相棒は、かわいい青いスライム「ぷに」。畑仕事に付き合ったり、料理を手伝ったり、のんびりとした毎日が続く……はずだったけれど、テイムしたモンスターが思わぬ成長を見せたり、謎の大型イベントに巻き込まれたりと、少しずつ非日常もやってくる? モンスター牧場でスローライフ!料理とテイムを楽しみながら、異世界VRMMOでのんびり過ごすほのぼのストーリー。 スライムの「ぷに」と一緒に、あなただけのゆったり冒険、始めませんか? 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?

恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢 この婚約破棄はどうなる? ザッ思いつき作品 恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。

憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波
ファンタジー
小さい時から、様々な召喚獣を扱う召喚士というものに、憧れてはいた。 そして、遂になれるかどうかという試験で召喚獣を手に入れたは良い物の‥‥‥なんじゃこりゃ!? 個人的にはドラゴンとか、そう言ったカッコイイ系を望んでいたのにどうしてこうなった!? これは、憧れの召喚士になれたのは良いのだが、呼び出した者たちが色々とやらかし、思わぬことへ巻き添えにされまくる、哀れな者の物語でもある…‥‥ 小説家になろうでも掲載しております。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

激レア種族に転生してみた(笑)

小桃
ファンタジー
平凡な女子高生【下御陵 美里】が異世界へ転生する事になった。  せっかく転生するなら勇者?聖女?大賢者?いやいや職種よりも激レア種族を選んでみたいよね!楽しい異世界転生ライフを楽しむぞ〜 【異世界転生 幼女編】  異世界転生を果たしたアリス.フェリシア 。 「えっと…転生先は森!?」  女神のうっかりミスで、家とか家族的な者に囲まれて裕福な生活を送るなんていうテンプレート的な物なんか全く無かった……  生まれたばかり身一つで森に放置……アリスはそんな過酷な状況で転生生活を開始する事になったのだった……アリスは無事に生き残れるのか?

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

【完結】ごめんなさい?もうしません?はあ?許すわけないでしょう?

kana
恋愛
17歳までにある人物によって何度も殺されては、人生を繰り返しているフィオナ・フォーライト公爵令嬢に憑依した私。 心が壊れてしまったフィオナの魂を自称神様が連れて行くことに。 その代わりに私が自由に動けることになると言われたけれどこのままでは今度は私が殺されるんじゃないの? そんなのイ~ヤ~! じゃあ殺されない為に何をする? そんなの自分が強くなるしかないじゃん! ある人物に出会う学院に入学するまでに強くなって返り討ちにしてやる! ☆設定ゆるゆるのご都合主義です。 ☆誤字脱字の多い作者です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。