897 / 1,049
連載
兄の物語[54]あいつならどうする?
しおりを挟む
(ふぅ~~~~……解ってはいたけど、緊張するね)
(……多分私たち以外の冒険者はここにいない。それが解っていても、恥ずかしさを感じるものね)
水漣華が確認されている池に入水したクライレットとペトラ。
一定の位置までは息継ぎしながら泳ぎ、途中から完全に水中へイン。
(意外と汚過ぎることはないから、視界は良好ではないけど、最悪でもない。ただ……何体か、いるね)
(普段の探索でも油断は出来ないけど……水中では、より気配探知の使用し続けなければならないわね)
いったいどこから来たのか、そうツッコみたくなる魔物が潜んでおり、水漣華を探している二人を狙う魔物が既に数体程いた。
(……来るっ!!!)
水漣華の探索に集中した二人だが、襲い掛かってくる魔物にも注意しなければ、あっという間にやられてしまう。
「っ!!??」
(よし、やっぱりこういうやり方の方が、倒しやすいね)
最初の襲撃者は魚の魔物。
ランクはEではあるが、二人からすればその動きは悪態を突きたくなるほど優雅。
そこで二人は事前に用意した水中用の武器よりも、指先から風の魔力を弾丸に変えて放つ。
それをメイン武器にしようと話していた。
今回、その武器が上手く決まり、一撃で襲撃者の撃退に成功。
二人は直ぐに魔物の死体を回収し、その場から一旦離れる。
ただの魚であればともかく、魚の魔物であれば、血の匂いに対する反応は陸上の魔物と大して変わらない。
その場での離脱が遅れれば、あっという間に二対多数という戦況が出来上がってしまう。
(上手くいった。でも、今のは正直……勘が当たっただけ)
(水中での魚たちの軌道…………もっと考えて攻撃した方が良さそうね)
体は大きい、だが、真正面にいると、攻撃が当たる面積が小さい。
個体にもよるが、二人が探索している場所が海ではなく池である事を考えると、そういった環境の差を考えると……この先も遭遇する魔物は、攻撃を当てるのが難しい個体が多い。
(……ゼルートなら、どうやって攻略するのかな)
自分が水中をある程度泳げるのであれば、弟は出来ないかもしれないという考えは、クライレットの中に一切ない。
(あの戦争の開始直後に見せた攻撃魔法の規模を考えると……火の特大魔法を叩き込んで、池の水を蒸発させてしまう?)
まず、普通の魔法使いが行わない、そもそも考え付かない方法である。
考え付いたとしても、実行出来るかはまた別問題。
だが、ゼルートなら出来るという確信があるクライレットは、その光景をイメージして思わず笑ってしまった。
(っと、危ない危ない。空気を漏らしてしまうところだった)
不用意に口を開いてしまうと、遊泳スキルのお陰で水中での肺活量が一時的に増えているとはいえ、重要な酸素を零してしまう。
(…………クライレット、もしや既に集中力が薄れてきてる?)
環境の差……というのは確かに存在する。
だが、今のところエルフのペトラは全く集中力が切れていない。
にもかかわらず、クライレットは……何故か笑みを浮かべていた。
状況的に全く笑える要素はなく、寧ろ緊張感でずっと表情が強張っていてもおかしくない。
(先程、確かに上手く魚の魔物を仕留めた。ランクはおそらくE……それ以上だったとしても、せいぜいD。油断は出来ないけど強敵ではないといったレベル…………水中戦が意外と楽しく感じ始めた? バルガス程ではないにしろ、確かにクライレットにもそういった部分があるのを考えると、否定は出来ない)
頼もしいと思うべきか、もっと水漣華の探索に集中してほしいと注意するべきか……非常に迷う。
しかし、どちらを選ぶべきか迷っている間に、二回目の襲撃。
数は二体と先程よりも一体多く、魔物たちはペトラをロックオンしていた。
(……多分私たち以外の冒険者はここにいない。それが解っていても、恥ずかしさを感じるものね)
水漣華が確認されている池に入水したクライレットとペトラ。
一定の位置までは息継ぎしながら泳ぎ、途中から完全に水中へイン。
(意外と汚過ぎることはないから、視界は良好ではないけど、最悪でもない。ただ……何体か、いるね)
(普段の探索でも油断は出来ないけど……水中では、より気配探知の使用し続けなければならないわね)
いったいどこから来たのか、そうツッコみたくなる魔物が潜んでおり、水漣華を探している二人を狙う魔物が既に数体程いた。
(……来るっ!!!)
水漣華の探索に集中した二人だが、襲い掛かってくる魔物にも注意しなければ、あっという間にやられてしまう。
「っ!!??」
(よし、やっぱりこういうやり方の方が、倒しやすいね)
最初の襲撃者は魚の魔物。
ランクはEではあるが、二人からすればその動きは悪態を突きたくなるほど優雅。
そこで二人は事前に用意した水中用の武器よりも、指先から風の魔力を弾丸に変えて放つ。
それをメイン武器にしようと話していた。
今回、その武器が上手く決まり、一撃で襲撃者の撃退に成功。
二人は直ぐに魔物の死体を回収し、その場から一旦離れる。
ただの魚であればともかく、魚の魔物であれば、血の匂いに対する反応は陸上の魔物と大して変わらない。
その場での離脱が遅れれば、あっという間に二対多数という戦況が出来上がってしまう。
(上手くいった。でも、今のは正直……勘が当たっただけ)
(水中での魚たちの軌道…………もっと考えて攻撃した方が良さそうね)
体は大きい、だが、真正面にいると、攻撃が当たる面積が小さい。
個体にもよるが、二人が探索している場所が海ではなく池である事を考えると、そういった環境の差を考えると……この先も遭遇する魔物は、攻撃を当てるのが難しい個体が多い。
(……ゼルートなら、どうやって攻略するのかな)
自分が水中をある程度泳げるのであれば、弟は出来ないかもしれないという考えは、クライレットの中に一切ない。
(あの戦争の開始直後に見せた攻撃魔法の規模を考えると……火の特大魔法を叩き込んで、池の水を蒸発させてしまう?)
まず、普通の魔法使いが行わない、そもそも考え付かない方法である。
考え付いたとしても、実行出来るかはまた別問題。
だが、ゼルートなら出来るという確信があるクライレットは、その光景をイメージして思わず笑ってしまった。
(っと、危ない危ない。空気を漏らしてしまうところだった)
不用意に口を開いてしまうと、遊泳スキルのお陰で水中での肺活量が一時的に増えているとはいえ、重要な酸素を零してしまう。
(…………クライレット、もしや既に集中力が薄れてきてる?)
環境の差……というのは確かに存在する。
だが、今のところエルフのペトラは全く集中力が切れていない。
にもかかわらず、クライレットは……何故か笑みを浮かべていた。
状況的に全く笑える要素はなく、寧ろ緊張感でずっと表情が強張っていてもおかしくない。
(先程、確かに上手く魚の魔物を仕留めた。ランクはおそらくE……それ以上だったとしても、せいぜいD。油断は出来ないけど強敵ではないといったレベル…………水中戦が意外と楽しく感じ始めた? バルガス程ではないにしろ、確かにクライレットにもそういった部分があるのを考えると、否定は出来ない)
頼もしいと思うべきか、もっと水漣華の探索に集中してほしいと注意するべきか……非常に迷う。
しかし、どちらを選ぶべきか迷っている間に、二回目の襲撃。
数は二体と先程よりも一体多く、魔物たちはペトラをロックオンしていた。
6
お気に入りに追加
9,024
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。