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兄の物語[47]消費削減
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「それじゃ、買い物に行きましょうか」
依頼された水漣華の採集に今のところ期限はない。
四人は特別な効果が付与された衣服を造れる裁縫職人が店主の店へと向かった。
「いらっしゃい。あら、今の噂のスーパールーキーたちじゃないか」
「光栄です。実は、店主にオーダーメイドで作ってもらいたい服があって」
外見は四十代前半頃、人の良さそうな見た目の女性店主はオーダーメイドの注文と聞き、眼の奥がキラリと光る。
「それは良いね。これから強い魔物を倒しに行くのかい?」
「えっと……遭遇するかもしれない魔物よりも、環境の方が少し面倒でして」
クライレットから軽く話を聞いた女性店主は、直ぐにその説明に納得がいった。
「なるほどね~~。それは確かに環境の方が面倒な感じね。安心しな、ちゃんと水着も作れるから。それじゃ、リーダーさんとエルフちゃんは採寸するから、こっちに来な」
二人は同性の従業員に採寸してもらい、要望と許容限度の金額を伝える。
「それじゃ、六日後ぐらいに来てちょうだい」
「分かりました」
六日後。
それなりに時間が空いたからといって、だらだらと過ごす訳がなく、適度に狩りを行いつつ……水漣華が咲いている場所までのルートを確認しつつ……完全に後回しにしていたクライレットの新しい武器を求めてドーウルスの武器屋を周る。
「ペトラ、正直ここまで真剣に探さなくても良いと思うんだけど」
「それはもう聞き飽きたわ。何度言おうとも、あなたに新しい武器は必要よ」
「あれじゃねぇか、クライレット。日頃頑張ってるご褒美って感じで買えばいいんだよ」
ここ最近の活躍、働きぶりを考えれば、バルガスの言う通りご褒美としてそれなりに良い値段がする新しい武器を買うのも悪い選択肢ではない。
「バルガスの言う通りよ、クライレット。それに、これから先戦うかもしれない相手の強さを考えれば、今よりも更に高性能な武器を買っておくべきよ」
現在クライレットが使用している得物はミスリル製の細剣。
主にミスリル鉱石が使用されている武器は、多くの冒険者たちにとってまさに憧れの武器。
それなりに良いお値段がする武器だが……Cランク冒険者の中では借金をしてまでも購入する者がいる。
武器の性能を上げたお陰で収入が増え、直ぐに借金を返せれば良いが……万が一折れて砕けでもした日には、十日は立ち直れなくなるだろう。
「私もペトラに賛成だね~。だって、今その細剣と同レベルの得物は持ってないでしょ」
「同レベルの物は……そうだね。持ってないかな」
冒険者たる者、よっぽど貧乏でなければ予備の武器を持っている。
クライレットも悪くない品質の細剣を数本ほど有しているが、それでも総合的なレベルは現在の愛剣である得物には及ばない。
「ねぇ、クライレット。新しく買う得物は、どんなやつが良いの?」
「……買うとしたら、火か風……そのどちらかの属性を有してる魔剣、かな」
ミスリル製の細剣は属性魔力を纏う攻撃に関して非常に相性が良い。
しかし、同ランクの属性魔剣に比べると、やや火力は劣る。
「それなら、火と風の属性を有した魔剣ね!!!!」
「っ!!!??? ちょ、ちょっと待ってペトラ。僕はそこまでの得物は求めてないって!」
「何言ってんのよ。これから戦うであろう相手のレベルを考えれば、それぐらいの得物が必要でしょ! 現に、クライレットは別の属性魔力を同時に纏う事が出来るじゃない!!!」
「いや、それはそれはそうだけどさ」
魔力を消費する量が多くなってしまうが、属性魔力を二重に纏う事が出来るクライレット。
仮に火と風。
この二つの属性を持つ魔剣を扱えば、同じ火力であっても消費する魔力の量を削減することが出来る。
「……私はこの意見を変えないわ」
「私も変えないかな~~」
「俺も変えねぇぜ!!!!!」
「……分かったよ」
困った時は多数決……で毎回決めるわけではないが、今回は良い逃げ道がなく、クライレットの新しい得物……正確には火と風の魔剣を購入することが確定した。
依頼された水漣華の採集に今のところ期限はない。
四人は特別な効果が付与された衣服を造れる裁縫職人が店主の店へと向かった。
「いらっしゃい。あら、今の噂のスーパールーキーたちじゃないか」
「光栄です。実は、店主にオーダーメイドで作ってもらいたい服があって」
外見は四十代前半頃、人の良さそうな見た目の女性店主はオーダーメイドの注文と聞き、眼の奥がキラリと光る。
「それは良いね。これから強い魔物を倒しに行くのかい?」
「えっと……遭遇するかもしれない魔物よりも、環境の方が少し面倒でして」
クライレットから軽く話を聞いた女性店主は、直ぐにその説明に納得がいった。
「なるほどね~~。それは確かに環境の方が面倒な感じね。安心しな、ちゃんと水着も作れるから。それじゃ、リーダーさんとエルフちゃんは採寸するから、こっちに来な」
二人は同性の従業員に採寸してもらい、要望と許容限度の金額を伝える。
「それじゃ、六日後ぐらいに来てちょうだい」
「分かりました」
六日後。
それなりに時間が空いたからといって、だらだらと過ごす訳がなく、適度に狩りを行いつつ……水漣華が咲いている場所までのルートを確認しつつ……完全に後回しにしていたクライレットの新しい武器を求めてドーウルスの武器屋を周る。
「ペトラ、正直ここまで真剣に探さなくても良いと思うんだけど」
「それはもう聞き飽きたわ。何度言おうとも、あなたに新しい武器は必要よ」
「あれじゃねぇか、クライレット。日頃頑張ってるご褒美って感じで買えばいいんだよ」
ここ最近の活躍、働きぶりを考えれば、バルガスの言う通りご褒美としてそれなりに良い値段がする新しい武器を買うのも悪い選択肢ではない。
「バルガスの言う通りよ、クライレット。それに、これから先戦うかもしれない相手の強さを考えれば、今よりも更に高性能な武器を買っておくべきよ」
現在クライレットが使用している得物はミスリル製の細剣。
主にミスリル鉱石が使用されている武器は、多くの冒険者たちにとってまさに憧れの武器。
それなりに良いお値段がする武器だが……Cランク冒険者の中では借金をしてまでも購入する者がいる。
武器の性能を上げたお陰で収入が増え、直ぐに借金を返せれば良いが……万が一折れて砕けでもした日には、十日は立ち直れなくなるだろう。
「私もペトラに賛成だね~。だって、今その細剣と同レベルの得物は持ってないでしょ」
「同レベルの物は……そうだね。持ってないかな」
冒険者たる者、よっぽど貧乏でなければ予備の武器を持っている。
クライレットも悪くない品質の細剣を数本ほど有しているが、それでも総合的なレベルは現在の愛剣である得物には及ばない。
「ねぇ、クライレット。新しく買う得物は、どんなやつが良いの?」
「……買うとしたら、火か風……そのどちらかの属性を有してる魔剣、かな」
ミスリル製の細剣は属性魔力を纏う攻撃に関して非常に相性が良い。
しかし、同ランクの属性魔剣に比べると、やや火力は劣る。
「それなら、火と風の属性を有した魔剣ね!!!!」
「っ!!!??? ちょ、ちょっと待ってペトラ。僕はそこまでの得物は求めてないって!」
「何言ってんのよ。これから戦うであろう相手のレベルを考えれば、それぐらいの得物が必要でしょ! 現に、クライレットは別の属性魔力を同時に纏う事が出来るじゃない!!!」
「いや、それはそれはそうだけどさ」
魔力を消費する量が多くなってしまうが、属性魔力を二重に纏う事が出来るクライレット。
仮に火と風。
この二つの属性を持つ魔剣を扱えば、同じ火力であっても消費する魔力の量を削減することが出来る。
「……私はこの意見を変えないわ」
「私も変えないかな~~」
「俺も変えねぇぜ!!!!!」
「……分かったよ」
困った時は多数決……で毎回決めるわけではないが、今回は良い逃げ道がなく、クライレットの新しい得物……正確には火と風の魔剣を購入することが確定した。
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