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兄の物語[32]何が要因なのか
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「なんか……あれね。以前より、私たちに向けられる視線が減ったわね」
早朝、ギルドでバルガスが依頼を選び終えるまでの間、ペトラはふと思ったことを呟いた。
「そう? 相変わらず視線は向けられてると思うけど」
「確かに視線は向けられるけど、いつもみたいに負の感情が混ざった視線は減った。加えて、ずっと視線が向けられることがなくなったわ」
「そういえば……それはそうかも。クライレット、もしかして私たちが知らない間に、裏でこっそり動いてた?」
パーティー内でそういったことが出来るペトラが知らないのであれば、もう一人のそういったことが出来そうな人物、クライレットが裏で動いているのではと思ったフローラ。
「いや、僕は特に何もしてないよ」
しかし、その推理をあっさりと違うと断言したクライレット。
「特に何もしてないよ。親しい同世代が増えた訳でもないし……不思議だね」
「ふ~~~ん? でも、クライレットじゃないなら、誰が何をしたんだろうね」
それなりに付き合いがあるため、嘘を付いていないのは解った。
だが、クライレットの言う通りここ最近、ドーウルスで活動している冒険者たちの中で……同世代の者と親しくなった記憶はない。
「……もしかして、ミシェルかしら? 彼女なら、何かしら動いてくれる可能性がありそうだと思うけど」
「そうかも。他の人達とは本当に付き合いがないからね」
二人の中に、絡んで来た五人を含めて、同世代の冒険者たちが自己完結したという考えは一切なかった。
「ん~~~……僕も、彼女以外に思い当たる人物はいないね。グレイスさんたちが動いてくれたのかもしれないけど、素直に大人の言う事を聞いてくれなさそうだし……」
一応、まだバルガスがクエストを選んでいる最中であり、周囲にはベテランだけではなくルーキーたちが……まだケツに殻が付いているルーキーたちもいる。
三人の遠慮ない会話にベテランたちは苦笑いを浮かべ、ルーキーたちは過去の自分たちを思い出し、古傷が抉られて苦い顔になるも……三人に負の感情が籠った視線を向けることはなかった。
「何はともあれ、鬱陶しさが消えるのは言いことね」
「視線を向けられるのは仕方ない時もあるけど、そういう視線をたくさん向けられるのはあれだもんね~」
「そうだね……僕としても、遠慮してほしいという気持ちはあるかな」
「お~~~い!!! 良い依頼持ってきたぞ~~」
そこまでそういった類の視線を気にしないバルガスが討伐依頼の洋紙を持って戻って来た。
「ん? なんか話してたか?」
「私たちに喧嘩を売る様な視線が減ったわねって話してたの」
「そういえば……減った様な気がしなくもねぇな。ギルドの職員たちが説教でもしたんじゃねぇか? そんなくだらない事してる暇があったら、模擬戦でもしてなさいって」
「…………それはそれであり得そうね」
一般的な受付嬢であれば、あまりしなさそうなアドバイスだが……元冒険者といった珍しいタイプの受付嬢であれば、そういったアドバイス……もとい、雑な処理をしてもおかしくない。
「まっ、良い環境になったんだから、何が理由でそうなったとか、どうでも良いじゃねぇか」
「僕としては、誰かが動いてくれたなら礼を伝えたいけど……そうだね。とりあえず、仕事に行こうか」
この日、四人は木の魔物、トレントの討伐とサーベルスタイガーの討伐を行い、バルガスの戦闘欲は非常に満たされ、パーティーの収入もほくほく状態。
「あっ、ミシェル!!!!」
仕事から帰還し、依頼達成報告と素材の買取が終わったタイミングで、四人はミシェルを発見。
フローラが真っ先に声をかけると、周りには見覚えがない同世代の同業者たちがいた。
「フローラ、お疲れ様。そっちも仕事終わり?」
「うん、そうだよ! そっちは……ミシェルの友達?」
ミシェルたちと一緒に行動していたヒルナとシェリンが答えるよりも先に、テックが一歩前に出た。
早朝、ギルドでバルガスが依頼を選び終えるまでの間、ペトラはふと思ったことを呟いた。
「そう? 相変わらず視線は向けられてると思うけど」
「確かに視線は向けられるけど、いつもみたいに負の感情が混ざった視線は減った。加えて、ずっと視線が向けられることがなくなったわ」
「そういえば……それはそうかも。クライレット、もしかして私たちが知らない間に、裏でこっそり動いてた?」
パーティー内でそういったことが出来るペトラが知らないのであれば、もう一人のそういったことが出来そうな人物、クライレットが裏で動いているのではと思ったフローラ。
「いや、僕は特に何もしてないよ」
しかし、その推理をあっさりと違うと断言したクライレット。
「特に何もしてないよ。親しい同世代が増えた訳でもないし……不思議だね」
「ふ~~~ん? でも、クライレットじゃないなら、誰が何をしたんだろうね」
それなりに付き合いがあるため、嘘を付いていないのは解った。
だが、クライレットの言う通りここ最近、ドーウルスで活動している冒険者たちの中で……同世代の者と親しくなった記憶はない。
「……もしかして、ミシェルかしら? 彼女なら、何かしら動いてくれる可能性がありそうだと思うけど」
「そうかも。他の人達とは本当に付き合いがないからね」
二人の中に、絡んで来た五人を含めて、同世代の冒険者たちが自己完結したという考えは一切なかった。
「ん~~~……僕も、彼女以外に思い当たる人物はいないね。グレイスさんたちが動いてくれたのかもしれないけど、素直に大人の言う事を聞いてくれなさそうだし……」
一応、まだバルガスがクエストを選んでいる最中であり、周囲にはベテランだけではなくルーキーたちが……まだケツに殻が付いているルーキーたちもいる。
三人の遠慮ない会話にベテランたちは苦笑いを浮かべ、ルーキーたちは過去の自分たちを思い出し、古傷が抉られて苦い顔になるも……三人に負の感情が籠った視線を向けることはなかった。
「何はともあれ、鬱陶しさが消えるのは言いことね」
「視線を向けられるのは仕方ない時もあるけど、そういう視線をたくさん向けられるのはあれだもんね~」
「そうだね……僕としても、遠慮してほしいという気持ちはあるかな」
「お~~~い!!! 良い依頼持ってきたぞ~~」
そこまでそういった類の視線を気にしないバルガスが討伐依頼の洋紙を持って戻って来た。
「ん? なんか話してたか?」
「私たちに喧嘩を売る様な視線が減ったわねって話してたの」
「そういえば……減った様な気がしなくもねぇな。ギルドの職員たちが説教でもしたんじゃねぇか? そんなくだらない事してる暇があったら、模擬戦でもしてなさいって」
「…………それはそれであり得そうね」
一般的な受付嬢であれば、あまりしなさそうなアドバイスだが……元冒険者といった珍しいタイプの受付嬢であれば、そういったアドバイス……もとい、雑な処理をしてもおかしくない。
「まっ、良い環境になったんだから、何が理由でそうなったとか、どうでも良いじゃねぇか」
「僕としては、誰かが動いてくれたなら礼を伝えたいけど……そうだね。とりあえず、仕事に行こうか」
この日、四人は木の魔物、トレントの討伐とサーベルスタイガーの討伐を行い、バルガスの戦闘欲は非常に満たされ、パーティーの収入もほくほく状態。
「あっ、ミシェル!!!!」
仕事から帰還し、依頼達成報告と素材の買取が終わったタイミングで、四人はミシェルを発見。
フローラが真っ先に声をかけると、周りには見覚えがない同世代の同業者たちがいた。
「フローラ、お疲れ様。そっちも仕事終わり?」
「うん、そうだよ! そっちは……ミシェルの友達?」
ミシェルたちと一緒に行動していたヒルナとシェリンが答えるよりも先に、テックが一歩前に出た。
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