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兄の物語[19]ミスれば死?

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「はっはっは、なんだよ……俺ら、運が良いじゃねぇか」

「そうね……サイクロプスの素材は高く売れるし、間違ってはいないわね」

夕方前、クライレットたちは標的であるサイクロプスを発見。
しかも……二体セット。

「それじゃ、今日は私が一体を相手するから」

「ちょ、フローラっ!!!」

「んだよ……ははっ!! 気合入ってんじゃねぇか、フローラ!!!」

まだサイクロプスたちは四人に気付いていない。

そんな中、フローラは大斧を担いで走り出し、一人で片方のサイクロプスを相手すると宣言。

ペトラは待ちなさいと口にするが、バルガスもフローラの戦意とやる気を汲み取り、ペトラに「とりあえず今はもう一体のサイクロプスに集中しよう」と伝えた。

「もぅ……仕方ないわね」

普段からバルガスほど我儘な行動を取らない。
比較的自分側の人間であると解っているため、強くは咎めず……リーダーに言われた通り、ひとまずもう片方のサイクロプスに意識を集中させた。

「せぇええええやあああああああああッ!!!!!」

「ッ!!!??? ゴォォォオオオアアアアアアアアッ!!!!!!」

その巨体通り……パワーはあるが、動きは遅い。
動きだけに気を付けていれば、Dランクの冒険者でも躱す事が出来る。

(っ!! 隙を突けたんだし、できれば、ぶった斬りたかったかな!! それに……相変わらず、恐ろしいパワーだね!!!)

Dランクでも攻撃を躱すことは出来る。
しかし……よけ方を間違えれば、その余波にやられて転び、立ち直る前に渾身の一撃を叩き込まれてしまう。

強烈な一撃故に、地面が大きく凹み、抉れる。

そう、Dランクの冒険者でも避けることは出来るが……全て最善と言えるよけ方をしなければ、一撃でゲームオーバーとなる。

「ハッ!!!!!!」

だが、そんな巨人との戦闘は決して初めてではない。

これまでのパーティーでの戦闘ではあるが、前衛としてサイクロプスと戦ったことがある。
その巨人と目の前の巨人が全て同じ、同スペックであるとは限らないが……それでも知識は頭の中に入っている。

(避けるのは、大袈裟ぐらいが丁度良い!!)

跳んでも躱しても良い。
問題はどれだけ上手く着地して直ぐに駆け出す事が出来るか。

「ふんっ!!!!!」

「ッ!?」

(もっと、もっと深く!!!!)

加えて、叩き込むカウンターや渾身の一撃を絶対に外さない。

攻略法を解っていようとも、勘というのはこの巨人……一見でくの坊にしか見えない魔物にも備わっている。

「おわっ!!?? っと」

斬られる痛みを我慢し、敵が動いた方向に激重の一撃を叩き込むことも出来る。

(本当に、心臓に悪いねっ!!!!)

サイクロプスのタフネスとパワーに文句を言いながらも、膝裏を大斧で斬り裂いた。

「ギっ!! ッ!!??」

「そうなるよね!!!!!!!」

単なる痛みだけではなく、立ち上がるのに重要な部分を斬られた。

体の構造が人間と似ているのであれば、そうなるのも無理はなく……直ぐに立ち上がれない状況に意識を取られた瞬間、サイクロプスの視界が半分に割れた。

「ふぅ~~~、良かった良かった。サイクロプスぐらいなら、私も一人で戦えそうだね」

「なに、一人でやり切った感出してるのよ!!!」

「うわっ!!!???」

いきなり大声を出されてひっくり返りそうになるフローラ。

「勝ったから良かったものの、サイクロプスにいきなり一人で挑むなんて、このバカみたいな真似しないでよ!!」

「なぁ、クライレット。俺いきなりぶん殴られたんだけど」

「はは。それは仕方ないよ、バルガス。普段の無茶筆頭はバルガスだからね」

「クライレット!! それはあなたも同じよ!!!!!」

「え、えっと……ご、ごめんね?」

本人は困ったことに自覚はないが、確かにクライレットはパーティーないではバルガスに次いで無茶担当だった。
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